2008年10月04日(土) 23:50
5日(日)、日本では秋のGIシリーズ第1弾・スプリンターズS、フランスでは欧州競馬の総決算・凱旋門賞、そして、ばんえい帯広競馬では伝統の古馬重賞・岩見沢記念が行われます。楽しみなレースがてんこ盛りの日曜日、めいっぱい楽しみたいですね。
今回の凱旋門賞は、今年の芝のレースでは世界最高の賞金(総額400万ユーロ、優勝賞金228万5600ユーロ)をかけて争われます。今年から新たにカタール・レーシング(競馬)&イクイストリアン(馬術)クラブがスポンサーになって、去年の倍に増額されました。メイショウサムソンは、去年、馬インフルエンザ禍に巻き込まれて凱旋門賞挑戦を断念したわけですが、賞金だけを見れば、今年まで待ってよかったのかもしれません。それとも、賞金が倍額になったからこそ、再挑戦の意欲をかき立てられたのでしょうか?
とは言うものの、サブプライムローン問題に端を発した世界的な金融不安の影響で、このところ円高傾向が一気に加速しています。例えばユーロ。今年7月には一時1ユーロ=170円を越えるかといったところまでユーロ高が進んだんですが、今月3日には同=約145円と、大幅に円が戻しています。もしもメイショウサムソンが凱旋門賞に勝って、7月当時のレートで優勝賞金を獲得した場合、日本円では約3億8855万2000円を手にすることができました。それが、今月3日時点のレートで計算すると約3億3141万2000円。なんと5714万円も“目減り”しちゃうことになります。5700万円もあれば、セレクトセールでそこそこの馬を1頭買えるじゃないですか。日本競馬にとって、これは一大事です!
イギリスのポンドも、一時はメチャクチャ高かった時期がありました。去年7月、1ポンド=250円を突破したんです。ロンドンの地下鉄の最低運賃が4ポンド(多客時間帯の大人運賃)なので、「1駅乗って1000円かよ!」と話題になりました。その後、徐々に円が戻しましたが、去年7月28日にキングジョージVI世&クイーンエリザベスSが行われた頃でも1ポンド=約240円というポンド高。その時点では、同レースに優勝したディラントーマスの獲得賞金42万5850ポンドは、日本円で約1億220万4000円に及びました。ところが、このところの円高で、今月3日現在のレートは同=約187円。去年のキングジョージの時にこのレートだったら、ディラントーマスの獲得賞金は約7963万4000円と、1億円をはるかに下回る金額にとどまっていたことになるわけです。まぁこれはあくまでも日本から見た時の話で、ディラントーマスの獲得賞金が目減りしたことにはならないのですが。
そこで、もうちょっとこの話を進めてみましょう。今年のジャパンCの優勝賞金は2億5000万円。イギリスからの遠征馬が1ポンド=250円の時にジャパンCに優勝したら、ポンドにすると100万ポンドしか獲得できませんが、同=187円のレートになれば、約133万6900ポンドをゲットできます。その差約33万6900ポンド。ロンドンの地下鉄の最低運賃区間を8万4225回余計に乗れる計算、ってことです。これも、日本の競馬にとっては一大事ですよ!
つまり今は、賞金だけを考えたら、日本馬が海外遠征するにはちょっと損で、海外の馬が日本に来るには絶好の時期になりつつあるということです。もちろん、凱旋門賞のように、去年に比べて大幅に賞金が増額されたレースは例外です。となると、今年のジャパンCやジャパンCダートには、海外から“高額賞金”を狙って、超のつくような大物が遠征してくるかもしれないですね。
それより何より、心配なのは世界経済の行方。今後、さらなる状況の悪化があれば、余暇産業の競馬は大きな打撃を受けるはずですから。その危機を救えるのは、凱旋門賞に去年の倍の賞金を出せる中東の国々、なんでしょうか?
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。