2008年10月14日(火) 19:50
世界恐慌の懸念さえある株価下落のあおりを受けて、世の中の景気が一段と厳しさを増しつつある中、今週初めより「オータムセール」が新ひだか町静内の北海道市場にて開催されている。
13日(月)に当歳市場、そして今日14日(火)より17日(金)までの4日間にわたって1歳市場が行なわれる。
13日の当歳市場は、所用のため行けなかったが、結果は予想通りかなり厳しいものだったようだ。140頭が上場されて落札が24頭(牡17頭、牝7頭)。売却率は17.14%。売り上げ総額は1億3608万円で、落札馬1頭あたりの平均価格は567万円。
いくら「馬肥ゆる秋」を迎えてもさすがに日高の当歳市場に関してはこのところ苦戦続きで、昨年も今年も落札がわずか24頭に止まった。ただ、今年は上場頭数が昨年よりも27頭減少した分だけ、売却率はわずかに上昇した。とはいえ平均価格の567万円は、前年に比べると約80万円の減少になる。
当歳市場がピークだった2004年には、開催が2日間にわたり、計246頭が上場され、65頭が落札。5億5670万円を売り上げた。以後、上場頭数は急激に減少し続けており、今年は100頭も少なくなってしまった。
その当歳市場に関する限り、今年の結果を見ると購買者が著しく限られてしまっている現実がある。岡田総帥率いる(有)ビッグレッドファームと(有)コスモヴューファームが合わせて24頭中13頭を落札しており、ダントツのトップバイヤーである。次に「テイエム」の冠名で知られる竹園正継氏の3頭が続く。ここまでで実に16頭に及ぶ。落札馬の三分の二を占めるのである。
なお、当歳市場は名簿上の上場予定馬が173頭いたが、当日33頭が欠場していた。率にして約19%である。それぞれに理由はあるだろうが、全体のほぼ2割もの頭数が欠場する市場では、購買者への信頼感も揺らいでしまう。その結果ますます「売れない市場」になって行く。
さて、当歳市場の翌日14日より、いよいよ1歳市場がスタートした。朝晩はめっきり冷え込むようになったものの、まだこの時期は日中好天に恵まれると割にしのぎやすい。
1歳初日となる14日は、計179頭が上場され、55頭が落札。売却率にして30.72%。売り上げ合計は1億7661万円。1頭平均では約321万円。「おそらくかなり厳しい結果になるだろう」と予想する関係者が少なくなかったが、初日としてはまずまずの滑り出しだったように思う。
昨年の1歳市場初日は201頭が上場され71頭が落札された。売却率は35.32%。売り上げは2億3594万円。平均価格は332万3176円。売却率は前年比5ポイント近いマイナスだが、平均価格はほぼ前年並みの水準を守った。
残りの3日間でどのような結果が出るか。昨年は1歳市場だけで12億円近くを売り上げ、終わってみれば764頭中333頭が落札され、売却率は43.6%に達した。明らかにサマーセールよりもオータムセールの方が「売れた」ことになるのだが、それだけ購買層が1歳馬を以前よりも買い控えている傾向が出てきているのだろう。以前ならば、まず秋市場では見かけなかったような素材も最近は増えていると言われる。庭先取引が相対的に減りつつあるため、結果的に良質馬がより多く上場されるようになっている、との声もある。
後は、価格であろう。今年のオータムセールが最終的にどの程度の数字を残せるか、残り3日間の市場動向を見守りたい。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。