2008年10月18日(土) 23:50
14日、旭川のナイター競馬を観戦してきました。道営競馬が来年度以降の開催場所を門別と札幌に集約するため、旭川での開催は16日で終了、競馬場は廃止されてしまいます。私にとっては、1986年(昭和61年)に初めて訪れて以来、毎年必ず足を運んできた思い出深い競馬場です。今回はその見納め。道営競馬が廃止されるわけではないので、涙が出るほど悲しい、ということはありませんでしたが、もう2度と来ることはないと思うと、やっぱり寂しくなりましたね。
私が中央&地方全競馬場踏破を果たしたのは1984年(昭和59年)から88年(同63年)にかけて。当時は全国に37(中央10、地方27)の競馬場がありました。その後、盛岡が新競馬場に移転、北海道で門別競馬場がオープンし、私が訪れた国内の競馬場の数は39に達します。ところが、和歌山・紀三井寺、大分・中津、島根・益田、新潟・三条、群馬・高崎、山形・上山、栃木・足利&宇都宮、北海道・岩見沢&北見と地方競馬場の廃止(または休止)が相次ぎ、今回旭川が廃止されて、日本の競馬場の数は27(中央10、地方17)になってしまいました。
旭川競馬場は、故・山口瞳さんが、名著「草競馬流浪記」の中で、地方競馬場ナンバーワンに推したところです。ロケーション、食べ物、場内の雰囲気がいい、というのがその理由。確かにその通り、いかにも北海道らしい、雄大な景色が見られる競馬場でした。こういう競馬場が廃止されると、地方競馬巡りの楽しみは半減してしまいます。
上山もよかったんですけどねぇ。蔵王の山並みを眺められるスタンドのロケーションはもちろん、温泉あり、うまいものありの、いわゆる3拍子揃った“競馬場のある町”だったんです。與那覇アナウンサーの場内実況を聴くのも楽しみの1つで、“上山通い”は毎年の恒例行事でした。最後の開催日にも観戦に行きましたが、今でもあの日のことを思い出すと目頭が熱くなります。
他では、何と言っても益田。スタンドとコースの間に一般道路が通っている、日本で唯一、世界でも珍しい構造の競馬場でした。ですから、道路を挟んでのレース観戦という、ここでしか味わえないユニークな風景を楽しめたわけです。
紀三井寺も益田も、競馬場がなくなって以来、訪れたことはありません。北見もそう。中津や三条、岩見沢、宇都宮は素通りしているだけです。上山には温泉(與那覇さんが働いている旅館も!)、高崎には競馬場廃止後に見つけたソースカツ丼の名店、旭川にはわりと好きなラーメンの店、足利には妻の“実家の実家”がありますから、もう2度と行かない、ということはないと思います。でも、訪れる回数は競馬場があるとないとでは大違い。競馬場が廃止された町には、滅多に行かなくなっちゃうでしょう。
苦境が続く地方競馬。廃止は旭川が最後になってほしいものですが、よほどの状況の変化がない限り、そうもいかないかもしれません。とにもかくにも、今ある競馬場と“競馬場のある町”を大切にしたいですね。みなさんもぜひ、どこかの地方競馬場の常連、とまではいかなくても、“準常連”くらいになってください。よろしくお願いします!
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。