2008年11月01日(土) 23:50
先週、イギリスへ行ってきました。今回の主目的は、イギリスで最も新しいグレートリーズ(Great Leighs)競馬場での競馬観戦。22日のレースを見てきました。
同競馬場は今年4月にオープン。イギリスで新しい競馬場が開場したのは、1927年のトーントン(Taunton)以来、81年ぶりのことだそうです。ただ、コース整備やその使用認可を得るのに手間取り、当初の予定から3年ほど遅れて、ようやくオープンにこぎ着けました。私もずいぶん待たされた末の訪問です。
ロンドン・リヴァプールストリート駅から電車で約40分、チェルムスフォード(Chelmsford)駅まで行ってタクシーに乗り換え、15分(タクシー代約20ポンド)ほどで競馬場に到着。1コーナーの外側に駐車場とプレハブづくりの入場券売り場があります。そこから入場ゲートへ。と言っても、1コーナーのラチの一部を取り外したところがスタンドへの入り口で、観客は馬場を横切って内馬場へ向かいます。この競馬場、内馬場にしか観戦スペースがないんです。競馬場のオフィスや検量室、パドックもすべて内馬場に設けられていて、馬場の外側にあるのはゴール正面の着順判定と実況放送のためのブース、それにレース観戦用の大型カラービジョンだけ。とてもユニークな構造になっていました。
スタンドは2階建て。これもプレハブづくりで、建物の中にはレストランとカフェテリア、バーがあります。プレハブの中のバーはロフトのような趣。これはこれで、なかなかいい雰囲気でした。スタンドの外にはハンバーガーやフィッシュアンドチップス、シーフード、コーヒーなどの売店が並び、天気がよければパドックを眺めながら軽い食事を楽しめます。また、スタンドの1コーナー寄りのスペースには「uma」という名前のバーもありました。競馬場の関係者に“日本びいき”の人がいるのかもしれません。でも残念ながら、ここはまだオープンに向けて準備中とのことでした。
ふつうの競馬場のスタンドにあってグレートリーズ競馬場にないものが2つ。まず、階段状の観覧席がありません。なにしろスタンドが内馬場に建っているんですから、ナマでレースを見られるのはゴール前の2Fくらい。むしろ、馬場の外側に設けられた大型ビジョンか場内テレビで観戦したうほうがレースをしっかり見られます。階段状の観覧席を作る必要はなかったんですね。
もう1つの“ないもの”はトイレ。トレーラーに載せられた仮設のトイレがスタンドの入口脇にあります。安物のキャンピングカーからトイレだけを持って来ちゃったような感じ。プレハブのスタンドの中にトイレを設置するのが難しかったんでしょうか。
さて、肝心のレース。グレートリーズ競馬場は、リングフィールド(Lingfield)、ケンプトンパーク(Kempton Park)、サウスウェル(Southwell)、ウォルバーハンプトン(Wolverhampton)に次いで、イギリスで5番目のオールウェザートラック(ポリトラック)の競馬場としてオープンしました。芝のレースが中心のイギリスにあって、オールウェザーのレースはまだまだ脇役。この日も、全6レースのうち2歳未勝利戦が1クラ、あとの5クラはJRAで言えば3歳以上500万円以下というプログラムでした。馬場状態はスタンダード(良)。6f(約1200m)で1分12秒20という勝ち時計が出たレースがありましたが、1マイル2f(約2000m)で行われた2クラは2分09秒台と2分07秒台の決着。ハッキリ言ってローカル競馬のレベルでした。まぁ、競馬の本場イギリスだって、芝のレースを含めて、大半のレースはこんなもんです。
でも、このコースで“強い馬”が走ったら、結構いいタイムが出ると思います。競馬場の行き帰りに馬場を横切ったとき、ポリトラックの感触を確かめてみました。ほどよくクッションが効いて走りやすそうです。日本のダートのように、馬場の中に足がめり込むことはありません。これなら、スピードは出せるでしょう。さらに、後ろから行く馬でもイヤな思いをすることなく追走できるはず。砂の粒や泥の塊が跳ね上がって、顔にぶつかることもないわけですから。
と思っていたら、先週、サンタアニタ競馬場で行われたブリーダーズCのオールウェザートラック(プロライドトラック)のレースで、差し、追い込み馬の活躍による速いタイムの決着が数多く見られました。オールウェザートラックは、芝でもダートでもない、第3の馬場と考えていいでしょう。
ではまた来週。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。