2009年01月06日(火) 23:50
出遅れ気味ではございますが、明けましておめでとうございます。本年も当コラムにて、日本国外の様々な競馬情報を、独自の視点でお伝えする所存です。何卒、変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
さて、2009年になったばかりだと言うのに、今回は2010年の話題に触れさせていただきたい。
昨年12月に設けられていた、2010年の英国ダービーへ向けた最初のエントリーステージで、2007年に生まれた388頭のサラブレッドが登録を完了。その中に、日本産馬が3頭含まれていることが確認された。
2010年6月5日にエプソム競馬場で行われる英国ダービーを目指す1頭目のサラブレッドは、岡田紘和氏が代表を務めるサラブレッド・クラブ・ラフィアンからエントリーされた、父ロージズインメイ・母ホクトスプライトの牡馬だ。2005年のドバイワールドCを3馬身差で制したロージズインメイは、ビッグレッドファームが大きな期待とともに導入した若手種牡馬で、2007年生まれが初年度産駒となる。
本馬は、そのビッグレッドファームの生産馬。母ホクトスプライト(その父トニービン)は3勝馬で、その母ホクトビーナスは桜花賞2着馬。GIII函館スプリントS勝ち馬ビーナスライン、GII報知杯4歳牝馬特別2着馬ホクトペンダント、GIIフィリーズレビュー2着馬ユメノオーラらが出ている牝系である。
数あるビッグレッド生産馬の中からただ1頭選抜されて登録されたのだから、現段階で既に相当な素質を見せているのであろう。
ビッグレッドファーム関連では、昨年秋のゴフス・ミリオンセールで仕入れた父アザムール・母パティメックの牡馬(購買価格7万ユーロ)が岡田繁幸氏の名義で。同じく昨年秋のゴフス・ミリオンセールで仕入れた父キングズベスト・母エンジェルオヴザグォーン(購買価格5万ユーロ)がビッグレッドファームの名義で、それぞれ登録を完了している。前者が、母の兄弟にメルボルンC勝ち馬アトタラク、後者が、母の兄弟に英セントレジャー勝ち馬ミレナリーがいるという牝系だから、血統背景としてはまさに英国ダービーに相応しい馬たちである。
来年の英国ダービーを目指す残る2頭の日本産馬は、ともにフランスの代表的なオーナーブリーダー・ニアルコス家からのエントリーである。ニアルコス家が生産・所有して凱旋門賞を制したバゴが、現役引退後は北海道のJBBAスタリオンで繋養されているのだが、そのバゴを配合するために日本へ送った牝馬が、無事受胎して翌年の春に日本で産んだ父バゴの牡馬が2頭、2010年のダービーヘ向けた登録を完了したのである。
1頭は、母セカンドハピネス(その父ストームキャット)の牡馬。祖母が、BCマイル連覇を含めてG1・10勝という近代競馬の名牝ミエスクで、母の兄弟に、フランスの2冠牝馬イーストオヴザムーンや、名馬にして名種牡馬のキングマンボらがいるという、ニアルコス家秘蔵の名門血脈を背景に持った馬である。ちなみに本馬には、既にZEN(ゼン)という馬名がつけられており、父バゴも手掛けたジョナサン・ピース調教師が管理することになっている。
もう1頭は、母テイジェート(その父ミスワキ)の牡馬だ。母はフランスとアメリカで走り4勝。祖母ブレイヴミーとミエスクが全姉妹だから、母セカンドハピネスの牡馬と同じ牝系の出身になる。本馬は、イギリスのヘンリー・セシル厩舎への入厩が決まっており、PLATO(プラトン)という競走名が与えられている。
2008年は、ディヴァインライト産駒のナタゴラが英1000ギニーを制し、日本生まれの父を持つ初めての英国クラシック優勝馬となった。時代の流れはそういう方向に進みつつあり、日本産馬による英国クラシック制覇が実現しても、決して不思議ではないだけの背景が出来上がっていると言えそうだ。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。