2009年02月04日(水) 11:50
去る1月28日(水)、新ひだか町の北海道市場にて(株)ジェイエス主催の「冬季・繁殖馬セール」が開催された。厳冬期でもある1月に開催されるのは昨年に続いて2回目。
46頭が上場され29頭が落札。売り上げ総額は1億276万3500円(税込み)。売却率63.04%。1頭あたりの平均落札価格は354万3569円。
昨年との比較では、上場頭数が+2頭、落札頭数で+5頭、売り上げ総額では-1440万6000円。しかし売却率は8.49ポイント上昇した。なお平均価格は133万8494円下落した。
市場開場は午後0時、せり開始が午後1時半と、やや変則的な日程となったが、開場と同時に多くの関係者がそれぞれ目当ての上場馬の待機する馬房まで出向き、熱心に下見する光景が見られた。
写真提供・齋藤宗信氏(馬市ドットコム管理人)
今回の市場では、予め配布されていた名簿に記載された42頭に加え、追加名簿として101番〜105番の5頭を含め全部で47頭が上場予定だったが、当日1頭が欠場したため最終的には46頭の上場となった。
日高で開催される当歳馬や1歳馬の市場と比べると上場率が極めて高く、改めて市場の信頼性について考えさせられる。これが本来の姿であって、上場申し込みをした馬は原則として全馬が出場してこそ市場の信頼性に繋がるはずだ。
さて、この市場の上場馬は、受胎馬、不受胎馬(経産馬で前年種付けせずというケースも含む)、未供用馬と明確に区分されており、購買希望者にとってもせりに参加しやすい配慮がなされていた。
全市場を通じて、もっとも高かったのは、15番「ラヴァリーフリッグ」の1585万5000円。新冠産10歳になるこの馬は、3産目となるジャングルポケットの仔を受胎しており、出産予定日は3月27日。父マーベラスサンデー、母ユウワプリティー(その父Naevus)という血統で、地方競馬ながら28戦9勝(他に中央2戦0勝)を挙げ、マリーンC(交流GIII・船橋)、桜花賞(浦和)、ロジータ記念(川崎)などを制し合計2億円を稼ぎ出した女傑でもある。販売申込者は新ひだか町の目名共同トレーニングセンター、落札は新冠町のコスモヴューファーム。
2番目は41番「ラドランファーマ」。7歳鹿毛。父ホワイトマズル、母ヒデアスタイアー(その父マルゼンスキー)という「未供用馬」。落札価格は1312万5000円。こちらも販売申し込み者は目名共同トレーニングセンターで、落札は大城敬三氏。この馬は38戦3勝、2歳9月にデビュー戦を飾り、クイーンC・3着、フラワーC・4着(いずれもGIII)の実績を持つ。昨年11月一杯まで現役を続けていたタフな馬でもある。
他には7番「カリアナ」(ダイワメジャーを受胎、予定5月3日)が630万円。落札は大城敬三氏。11番「エイシンスイレン」(ファルブラヴを受胎、予定日3月18日)が682万5000円。落札は武牧場。
12番「フローレンスガール」(キングカメハメハを受胎、3月7日予定)が892万5000円。メイプルファイブアライアンスが落札。13番「クリントンガール」(シンボリクリスエスを受胎、3月8日予定)が535万5000円。落札は(株)レーシングホースジャパン。16番「リスティアエーデル」(フサイチコンコルドを受胎、4月2日予定)が661万5000円。落札は岡田スタッド。37番「ベビーキール」(未供用、父タニノギムレット)が577万5000円。島川隆哉氏が落札。42番「カンタループ」(未供用、父シンボリクリスエス)が840万円で同じく島川隆哉氏が落札。
500万円以上の取引馬は以上の通りである。
全体を通して感じたのは、受胎馬であれ未供用馬であれ、セールスポイントのある素材は注目度が高く、セリが始まっても活発なやりとりが展開したことと、逆に、売りの材料に乏しい繁殖牝馬は苦戦を強いられたことである。また未供用馬の健闘が目立った点も挙げられる。すでに答えの出てしまっている経産馬よりも、今後どのように大化けするか分からぬ魅力が買われたものか、未供用馬は13頭中11頭が落札された。
そして、もう一点。販売申込者が誰であるか(どこの牧場か)も、かなり重要なファクターであった。オーナーブリーダー系の大手牧場や社台系は相変わらず人気が高く、日高の中小牧場から売りに出されている馬は総じて不振であった。ここでもブランド力は無視できない要素になっている。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。