ダーレー・ジャパン・スタリオンパレード2009

2009年02月10日(火) 23:00

 絶好の晴天に恵まれた2月9日(月)、日高町のダーレー・ジャパン・スタリオンにて北海道の生産地では最初の種牡馬展示会が開催された。

 午前10時開場と同時に胆振日高の生産者や取材陣が続々と詰めかけ種牡馬の展示が予定されていた11時には、飲食ブースの用意された大型テント内が満員になるほど。主催者発表によれば約1000人が来場とのことだったが、実感としてもそれくらいは集まっていただろうと思われる。とにかく人波をかきわけて中に進むのが容易ではないくらいの混雑であった。

 展示会に先立ち、テント内で合田直弘氏と武豊騎手によるトークショーが10分間行なわれた。競馬界随一の人気騎手を見ようと、立錐の余地もないくらいの人垣ができ、改めてこの人の存在の大きさを思い知らされた。簡潔に要領良く会話をまとめる術を心得ているこの人は、場慣れしており、こうした場でも華がある。一流の役者にも見えてくる。

 さて、11時10分。気温は0度を少し上回った程度だが、風がないので寒さはそれほど感じない。展示会場にはチップが敷かれ、コの字型にズラリと見学者が囲む。正面は白い壁になっており、そこに総合司会の合田直弘氏とスタリオンオペレーション・ディレクターのシェーン・ホーラン氏が並び、左側にスタッフを一列に立たせて紹介するところから始まった。順番は、アルカセット、ザール、ルールオブロー、ディクタット、ストーミングホーム、ファンタスティックライト、そして最後にアドマイヤムーンで締めくくった。

アルカセット

ザール

ルールオブロー

ディクタット

ストーミングホーム

ファンタスティックライト

アドマイヤムーン

 昨年は7頭の陣容で、しかもアドマイヤムーンという「目玉商品」もいたが、今年は昨年と同じ顔ぶれの種牡馬で目新しさはない。だが、繋養種牡馬の交配条件がアルカセットを除く他の6頭についてはいずれも受胎条件から出生条件へと変わり、のみならず大幅な値下げも断行した。

 アルカセットは今年も受胎条件の支払いで250万円と変わらないものの、ザールは200万円→100万円、ルールオブローが150万円→100万円、ディクタットが250万円→150万円、ストーミングホームが250万円→150万円、ファンタスティックライトが350万円→250万円、そしてアドマイヤムーンが500万円→400万円という内訳である。しかも産駒誕生後30日以内の支払いに条件が緩和されたため、とりわけ日高の中小生産者には朗報となった。

ダーレー記者会見

 スタリオンディレクターのシェーン・ホーラン氏は、「日本の生産界に貢献したいというのが我々の基本的な考え方です」と強調する。昨年のサラブレッド市況や生産地の現在の状況などに配慮した結果、この度の大幅値下げと支払い条件の緩和に踏み切ったものと思われるが、2006年に開場した時に1頭だけ繋養されていたアルカセットが、いよいよ今年、初産駒のデビューを迎える。ロージズインメイなどとともに、日高ではかなりの人気を博した新種牡馬だったため、産駒数も多い。このアルカセットを筆頭に、すべては今年以降続々とデビューしてくる予定の“ダーレースタリオン種牡馬の産駒たち”の競走成績で決まる。

ダーレー仮設テント内部の賑わい

 昨年の展示会でもその豪華さに目を奪われたが、今年もまたその圧倒的な“演出”に驚かされた。飲食ブースを備えた巨大テント。音と映像を駆使した展示会風景。スタッフ全員が会場各所で接待に走り回り、この種牡馬展示会にかける意気込みが十二分に伝わってきたのも事実である。

 ストーミングホームやザール、ファンタスティックライト、ディクタットなどはいずれもすでに海外では産駒が活躍中である。そうした動向に注意を払いながらも、生産者は「日本の競馬でどんな実績を残すかを見極めたい」という思いが強くある。繰り返しになるが、閑古鳥が鳴くか、それとも繁殖牝馬が大挙して押し寄せてくるようになるか、いずれここで繋養されている種牡馬たちの産駒が答を出してくれるだろう。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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