コールダーセール、日本人購買馬に好素材多し

2009年03月10日(火) 23:59

 ファシグティプトン社主催の「コールダー2歳トレーニングセール」が、3月3日(火曜日)にフロリダ州のコールダー競馬場で行われた。

 総売り上げが前年比25.5%ダウンの2,615万ドル、平均価格が前年比31.5%ダウンの235,595ドル、中間価格前年比34.8%ダウンの15万ドルという数字を並べると、目も当てられない窮状が展開されたようにも見えるが、コンサイナーをはじめとした販売者側やセールを司った主催者側からは、それほど悲観的な様子が感じ取れなかったというのが現場における正直な感想で、恐らくは全ての関係者がもっと深刻なシナリオを想定していたのであろう。今年の市況は、この市場がステディーに推移していた00年から03年にかけての市況と近しいものがあり、世の中がこれだけ悪い中、2000年代前半の水準を維持出来たのであれば“御の字”と言うことなのであろう。

 マーケットを支えたのはここでもやっぱりシェイク・モハメドで、市場最高価格の160万ドルで購買された上場番号94番の父メダグリアドローの牡馬をはじめ、高額取り引き馬の上位3頭はいずれもシェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソン氏の購買であった。

 そんな中、日本人によると見られる購買は、1頭平均180,555ドルで9頭であった。前年が平均235,833ドルで6頭だったから、市場全体の価格下落を鑑みれば、昨年とほぼ同じマーケット・ヴァリューを持つ馬が、昨年よりも3頭多く日本にやってくると見てよいだろう。実際に、日本人購買馬の中でも価格的には下の馬たちにも、これは面白いと思える好素材が揃っており、今年のコールダー組は久々の大爆発があっておかしくはない、魅力的なラインナップが揃ったと言えそうだ。

 別の見方をするなら、「高かった時代のコールダーセールなら、絶対にこんな値段では落ちなかった」という素材が、驚くほどの廉価で購買されており、つまりは市場の低迷によって2歳トレーニングセールが、「即戦力となる好素材を、お手頃価格で」という、本来の存在意義を取り戻しつつあると分析することも出来そうだ。

 もちろん、低価格帯における購買馬だけが良い馬だったわけではなく、日本人購買馬としては最高価格の425,000ドルで購買された父トリッピの牡馬が、公開調教で21.4秒という、2Fにおける最速時計を出した、掛け値なしの怪物候補であることは、ここにぜひ付記しておきたいと思う。さて、コールダーセールの主催者ファシグティプトン社が、昨年4月、ドバイ資本に買収されたことはこのコラムでもお伝えした通りである。すなわち、新生ファシグティプトン社となって初めてのコールダーセールだったわけだが、ホスピタリティーのレベルが格段に向上していたことに、目を見張る思いがした。

 厩舎地区に「ホスピタリティー・テント」が設営され、購買者には朝7時半から温かな朝食が振る舞われたほか、豊富なメニューのランチも連日用意され、大好評を博していた。また、テントの一角にある、公開調教のVTRが見られるビデオルームの環境も、飛躍的に向上。更に、国外から参加した購買者が宿泊したホテルにも、購買者用のラウンジが設営され、飲み物や軽食が用意された。

 公開調教翌日、せり会場近くのガルフストリームパーク競馬場で行われたG2フォンテンオヴユースSは、ファシグティプトン社が冠スポンサーになっており、購買者はVIPルームに招待された他、全レース終了後にはパドックを会場に生バンドを入れたパーティーが催され、大盛り上がりとなった。そして、購買者にとって非常にありがたかったのが、公開調教終了後に主催者が費用を負担して上場全馬のレントゲン写真を撮影したことで、「お客様本位」の姿勢が随所に表れていたと言えよう。

 購買者に「来年もここで馬を買おう」と思わせるに充分な歓待ぶりであった。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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