2009年03月17日(火) 23:59
昨年のこの市場で08年の2歳ダートチャンピオン・スーニが発掘された「バレッツ・マーチ2歳トレーニングセール」が、3月10日(火曜日)にカリフォルニア州ポモーナのフェアプレックスパークで行われた。
1990年に創設されたバレッツ・マーチセールにとって、今年は記念すべき20回目の開催だったが、残念ながら結果は節目の年を祝うものにはならなかった。市況を記すと、総売り上げが前年比51.6%ダウンの626万ドル、平均価格が前年比30.8%ダウンの123,245ドル、中間価格が前年比27.3%ダウンの80,000ドル、前年が44.7%だったバイバックレートが今年は37.0%だった。
今年の平均価格は、バレッツを牽引役として2歳トレーニング市場が大きくに発展した90年代半ば以降では最低水準。総売り上げにいたっては、創設以来最も低いものとなった。
ただし今年のバレッツセールは、カタログ記載が122頭(前年が190頭)、実際にセールスリングに登場したのが81頭(前年が132頭)という、セール史上でも断トツの小さなカタログで行われており、総売り上げの大幅下落は当初より折込済み。むしろ、1週間前に行われたファシグティプトン・コールダーに比べて、平均価格・中間価格とも前年対比の下げ幅が小さかったことを鑑みると、まずは御の字という結果ではないかと現地では受け止められている。
上場頭数が少なかったことについて主催者は、景気の影響を第一に上げ、フロリダに本拠地を置くコンサイナーたちがコストをかけてカリフォルニアまで馬を運ぶことを厭うたこと。更には、今年の開催日程にも触れ、前週にファシグティプトン・コールダー、翌週にOBSマーチと、フロリダで開催される大きな2歳セールにサンドイッチされる形になり、スタッフ繰りなどの困難を強いられるコンサイナーがバレッツへの上場を敬遠したことなど、その理由について説明している。
一方、頭数に限りはあったものの、集まった馬たちの質は高いというのが購買側に共通した評価で、90年代のブーム期以来久し振りにこのセールを訪れたという日本の某調教師も、当時よりは今年の方が「馬は良い」との見解を述べておられた。有力コンサイナーを含めて、カリフォルニア随一のこの市場を廃れさせてはならないと考える関係者は多く、品揃えという点では2歳セールの大看板として頑張ってきたバレッツの矜持を損なわないものであったと思う。
主催者サイドの意気込みは、施設面の改善にも表れていた。20周年を期して、せり会場のインテリアが大幅に改装されたのだ。まず目を引いたのは、購買者用の座席がすべてテーブル付きとなったこと。それぞれの座席に電源とLANケーブルの出口が設置された他、場内には無線LANも飛んでおり、購買者はそれぞれのパソコンを開きつつ、血統的データなどを参照しながらセリに参加できる態勢が整えられた。また、場内に20近い液晶モニターが設置された他、バックヤードにも多数のモニターが配置され、追い切りの模様などが放映された。聞けば、現在はフェアプレックスパーク競馬場のスタンド2階に位置しているサイマルキャスト用の機能を、ここに移す計画があるそうで、やたらにたくさんあるモニターは、全米各地の競馬場から送られてくる映像情報を提供するためのものだそうだ。いずれにせよ、セール会場内の環境が格段に快適になったことは、喜ばしい限りである。
さて、そんな中で行われた今年のバレッツ・マーチセール。最高価格は、上場番号121番の父ティズナウの牡馬で、カリフォルニアの大馬主ジェス・ジャクソン氏が65万ドルで購入。また、日本人によると見られる購買は、平均168,000ドルで5頭であった。前年が平均150,714ドルで7頭だったから、頭数的には減ったものの、市場全体の価格低迷を鑑みると、昨年よりは遥かにマーケット・ヴァリューの高い馬たちが日本へやってくるわけだ。もともと馬の品揃えが良かった上に、水準の高い馬たちがやってくるのだから、おおいに楽しみである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。