POG取材の季節到来

2009年03月17日(火) 23:00

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 いささか私事だが先週後半あたりから体調を崩してしまい、現在もやや熱っぽい状態が続いている。ピークは金曜日夜から土曜日にかけてで、久々に39.5度という発熱を経験した。これは絶対にインフルエンザに罹ってしまったものと覚悟したが、検査結果は(−)で、単なる風邪との診断。しかし、悪寒、鼻水、頭痛、関節痛と、散々な目に遭った。周囲でも風邪を引いている人間がかなり多く、家族が次々にインフルエンザに罹患している例もある。皆様もどうぞお気をつけ下さい。

 そんなわけで、今週は予定していた取材に行けずじまいに終わった。さて、何を書こうかと悩んでいた矢先、また今年も某媒体からPOG取材の仕事が舞い込んできた。そういう季節になったのだなあ、と一年の経つのが年々早くなっていることを改めて実感している。これも年のせいか。

 実はPOG関連本に関しては、先月に新たな媒体の参入の噂を聞いていた。現在は「赤本」(光文社)、「青本」(KKベストセラーズ)、「黒本」(流星社)、「競馬王」(白夜書房)等に加え、雑誌系の媒体が独自に誌面を構成してPOG特集を組んでいる。「優駿」「サラブレ」「Gallop」などである。新たな媒体というのは、これら既存のものとは違うまったく別個のPOG関連本らしく、実は監修者も日高での取材者も名前を聞いているのだが今ここでは伏せておく。何より驚かされるのは、POG関連本の世界がすでに飽和状態とも思えるほどに様々な媒体が林立しているにも拘わらず、新たに参入しようという会社があることだ。まだPOGの世界は新たな需要が見込めるという判断なのだろうか。

 ともあれ、これだけの数になると、いかに独自の誌面作りができるかが勝負を決める。具体的に言うと、他社に覚られぬように、いかに有望2歳馬をこっそりと発掘するか、ということだ。

 だがそれは現実問題としてかなり困難なことである。まず、取材対象となる各育成牧場から“推奨馬”を予めピックアップしてもらう形式が一般的なので、どうしたってラインナップは各社いずれも似たような顔ぶれとなってしまうことがまずある。

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 そして、この時期には、まだデビュー前の2歳馬の将来を占うには時期が早過ぎて、結局のところ「血統」と「馬体」に偏った評価をせざるを得ないこともある。地味な血統の牝馬だが、実は調教でかなり良い動きをしているらしい、などという素材を拾い切れないのである。

 だからといって、各育成牧場にそれぞれ取材陣を派遣し、じっくりと時間をかけて在厩馬すべてを丹念にチェックできるような手間のかけ方はまず不可能で、だいいち牧場側の理解が得られない。相手の負担や迷惑を最小限に止めるには、牧場側の都合に合わせる以外にないのである。理想的には合同取材が最も望ましい。

 従来、この辺がかなりアバウトに行なわれてきたのも事実で、甚だしい場合には、その牧場の評判馬を目当てに各媒体が入れ替わり立ち代り訪れて取材するような例が少なくなかったという。取材する側は一度限りでも、される側にとっては毎度毎度同じような対応を余儀なくされるわけで、これではやはりたまらないだろうと思う。「一度に済ませてくれ」というのが本音なのだ。

 そんな事情からか、以前はPOG取材に協力的だった育成牧場が今はまったく取材を受けてもらえなくなっている例もあるらしい。また、大小さまざまな育成牧場が点在するために、どうしても規模がある程度大きな有名牧場優先になってしまう傾向も否定できない。

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 POG取材は今後4月前半に集中して行なわれ、4月21日〜24日にかけて3か所(浦河・静内・早来)で実施されるJRA産地馬体検査で締めくくられる。ただし、将来的には、個体識別のためのマイクロチップの精度が信頼できる水準まで到達した段階でこの産地馬体検査もなくなるであろうと言われており、そうなればますます各牧場への個別取材の重要度が高まることになる。

 さて今年はどんな展開が待っていることやら。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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