香港に次世代のスター誕生

2009年03月24日(火) 23:59

 香港ダービー(香港G1、芝2000m)が、3月22日(日曜日)にシャティン競馬場で行われ、単勝1.4倍の圧倒的1番人気に推されたコレクション(セン4歳)が優勝した。

 父が凱旋門賞や仏ダービーを制したパントレセレブルで、母が北米のG3ブリティッシュコロンビア・オークス勝ち馬ラスティングチャンスという血統の愛国産馬コレクション。父が仏国での活躍馬であるからか、06年8月にドーヴィルで開催されたアルカナ・イヤリングセールに上場され、英国人エージェントのジョン・ウォーレンが13万ユーロで購買。英ダービー馬シャーミットらを手掛けたウィリアム・ハガス調教師の管理馬として、2歳10月にデビューを飾った。

 3歳秋まで過ごした英国時代の成績は、7戦3勝。ロイヤルアスコットの距離10fの準重賞ハンプトンコートSを制している他、仏国に遠征してメゾンラフィットの距離2000mのG2ユージンアダム賞でも5着となっているから、まずまずの活躍を見せた馬であった。

 この馬を香港に引っ張ったのは、香港のリーディングトレーナ―、ジョン・ムーア師。ユージンアダム賞のレース振りを現場で見て、これは香港向きとの強い感触を得た師が、この馬を香港で所有するためのパートナーシップを募る一方、英国でコレクションを所有していた共同馬主組織ハイクレア・サラブレッズと交渉を重ね、遂に自厩舎のラインアップに加えることに成功した。

 香港デビューは、2月15日。クラス1の距離1400mのハンデ戦に出て、ここが2着。続いて3月7日に行われた、同じクラス1の距離1800mのハンデ戦に駒を進め、ここを4.1/4馬身差で快勝して、香港初勝利を挙げていた。

 強烈な末脚を武器にするコレクションだが、香港ダービーは半マイル通過が51.08秒、1200m通過が1分16秒85という超スロー。前半は後方に控えていたコレクションだが、ペースを読んだ鞍上のダレン・ビードマンが早めに進出し、2番手の位置取りで直線ヘ。そこから危なげなく抜け出して、優勝を飾った。

 この勝利によって、香港の次世代を背負うスター候補として認識されることになったコレクションの次走は、4月26日にシャンティンで行われる1マイルのG1チャンピオンズマイルになる模様だ。1マイルの距離はこの馬には短すぎる懸念があり、本来なら同日同競馬場で行われる2000mのG1クイーンエリザベス2世Cが適鞍なのだが、ここには同じジョン・ムーア厩舎からG1・6勝の王者ヴィヴァパタカが出走予定で、現時点での直接対決は避けたいというのが陣営の思惑のようだ。

 だが、いつまでも対戦を避けているわけにはいかず、恐らくは5月31日に行われる2400mのG1チャンピオンズ&チェイターCで2頭は激突することになるはずだ。つまり、早ければ2か月後には、香港における中距離王者の交代劇が見られるかもしれないわけで、今後しばらくは、ヴィヴァパタカとコレクションの動向に注目する必要がありそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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