2009年04月07日(火) 23:00
1月以来、日高を中心に議論百出し、すったもんだの挙句今年度の導入が見送られた「主取り手数料1%」だが、市場振興策の一環として計画された「市場取引賞」に関しては2歳トレーニングセールに限り交付されることが正式に決まった。
それも、「九州トレーニングセール」「千葉サラブレッドセール」「北海道トレーニングセール」「ひだかトレーニングセール」の4市場が歩調を合わせての交付だという。
すでに「九州トレーニングセール」(5月8日、JRA宮崎育成牧場)の主催者である鹿児島県軽種馬協会よりその旨正式に関係者向けの案内書に明記されており、それによれば、かねてより当欄で紹介していたように、中央40万円、地方20万円という奨励金が、2歳戦の勝馬に一回限りで交付される、というものだ。
ただし、地方競馬に関しては、1着賞金が20万円を下回る場合、上限がその金額を超えない範囲に限られる。すなわち、15万円の1着賞金のレースだとするならば、奨励金交付金額もまた15万円ということである。
さて、この40万円&20万円の奨励金制度が果たしてどれほどの効果をもたらすだろうか。急速に冷えつつあるサラブレッド市場において、この金額で顧客の購買意欲をどの程度“喚起”できるだろうか。
「JBBA NEWS」2009・2月号に「トレーニングセール取引馬の2歳競走成績」と題する一覧表が掲載されている。
それによれば、2008年度における2歳トレーニングセール出身馬で、重賞勝馬はナイキハイグレード(父アグネスタキオン)の「ハイセイコー記念」(大井)、カラテチョップ(父スキャン)の「兵庫若駒賞」(園田)、アグリヤング(父リンドシェーバー)の「ヤングチャンピオン」「福山2歳優駿」(福山)の3頭である。
また、収得賞金トップは千葉サラブレッドセールにて1218万円で落札されたナイキハイグレードの3146万円という。なお、2008年度の場合、2歳市場出身馬としてはセイウンワンダー(新潟2歳S、朝日杯FS優勝馬)がダントツの成績だが、ブリーズアップセール出身馬はこのデータに加えられていない。
各市場ごとに見ると、2歳戦における成績は概ね以下の通りである。 1.九州トレーニングセール 落札6頭(牡3、牝3) 中央(登録1、出走1、勝馬1) 地方(登録5、出走5、勝馬1) 2.千葉サラブレッドセール 落札30頭(牡16、牝14) 中央(登録21、出走19、勝馬3) 地方(登録9、出走7、勝馬3) 3.北海道トレーニングセール 落札82頭(牡46、牝36) 中央(登録34、出走32、勝馬5) 地方(登録39、出走35、勝馬18) 4.ひだかトレーニングセール 落札45頭(牡26、牝19) 中央(登録25、出走15、勝馬6) 地方(登録11、出走11、勝馬3)
これら4市場をトータルすると、中央競馬には、81頭が登録し、67頭が出走、そのうち2歳時に勝馬となったのは15頭である。また地方競馬では、64頭が登録され、58頭が出走、勝馬25頭となる。「市場取引賞」の規模は、昨年を例に取った場合、合わせて最大で1100万円。(中央600万円、地方500万円)
因みに一昨年(2007年)の場合には、5市場(群馬境TCサラブレッドセールも開催されていた)で、中央12頭、地方29頭が2歳時に勝馬となっていた。今回の市場取引賞をあてはめると480万円+580万円で最大1060万円。ほぼ1000万円台が予算規模として想定できそうだ。
ともあれ、今年は4月27日(月)の「JRAブリーズアップセール」から5月18日(月)「千葉サラブレッドセール」まで、3週間の間に全ての2歳市場の日程が集中している。
日高では本番を1か月後に控え、ビデオ撮りのためのスクーリングが始まっており、上場予定馬を抱える各育成牧場にとってはもっとも多忙なシーズンに突入した。これから1か月間は、最も気の抜けない期間となる。「これだけやっているんだから何とか1頭でも多く売りたい」のが関係者に共通する思いだ。しかし、景気低迷の影響からか、4市場合わせて昨年は359頭が上場されたものの、今年は上場予定馬の段階で計281頭に過ぎず、おそらく本番ではここからさらに頭数が減ることが予想されるので前年比100頭減くらいの数字になりそうだ。北海道でのセールは5月11日が札幌競馬場で「北海道トレーニングセール」(日高軽種馬農協主催)、翌12日が浦河のJRA日高育成牧場にて「ひだかトレーニングセール」(ひだか東農協主催)が開催予定である。
果たして40万円&20万円の奨励金がどれほどの効果をもたらすのか注目して行きたいと思う。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。