2009年04月14日(火) 23:00
例年、日高の4月初旬は天候がやや不順でまだまだ寒いのが相場だが、今年はどうしたことか今月に入ってからほとんど雨らしい雨が降っておらず連日好天が続いている。
空気はカラカラに乾燥し、うっかり煙草の吸殻など道端に落としたりするとすぐに枯れ草に引火して瞬く間に燃え広がってしまいそうな気候である。そろそろ一雨欲しいところだ。
さて、去る4月13日(月)、浦河にあるJRA日高育成牧場にて「育成馬展示会」が開催された。晴天に加えて気温も高く、春らしい陽気の中、多くの生産者や調教師などが訪れた。
午前10時より日高育成牧場にて調教を積まれてきた56頭が4つのグループ(牡2班、牝2班)に分かれて登場し、まず展示からスタート。各馬の生産者は、昨年の1歳市場にてJRAに購買された生産馬がすっかり見違えるようになった姿と対面した。
JRA育成馬は、4月27日(月)に中山競馬場にて開催される「ブリーズアップセール」へ上場されることになっている。宮崎と日高を合わせ、79頭が上場予定である。
さて日高育成牧場56頭の中で最も注目を集めていたのは、17番「セイウンクノイチの07」(新ひだか町・筒井征文牧場生産)で、周知の通り、昨年新潟2歳Sと朝日杯FSを制してJRA最優秀2歳牡馬となったセイウンワンダーの全妹である。兄は昨年のブリーズアップセールで2730万円という最高値で落札され、期待通りの成績を収めた。この馬の活躍によって、JRA育成馬とブリーズアップセールへの注目度が急上昇したのは間違いなく、今年のセールにまたとない“追い風”となった。
その他、昨年のJRA育成馬としては、ナイキハイグレード(父アグネスタキオン、母ダイアモンドコア)が、ハイセイコー記念と京浜盃(いずれも大井)を制しており、またハイローラー(父グランデラ、母エクセレンス)がもちの木賞を、ツーデイズノーチス(父ヘクタープロテクター、母ユニバース)がアネモネSをそれぞれ勝っている。
ナイキハイグレードは、ブリーズアップセールの本番で売れ残った後、千葉サラブレッドセールにて1218万円で取引された馬である。またハイローラーは746万円、ツーデイズノーチスに至っては420万円と“お買い得商品”であった。必ずしも価格と競走成績が結びつかないのがサラブレッドであり、こうした様々な価格帯から活躍馬が出てくるのは、ブリーズアップセールにとってもむしろ好都合のはずなのだ。
なお、昨年のブリーズアップセールで売却された59頭のうち、中央競馬に登録されたのは58頭。4月5日現在で53頭が出走し、15頭が20勝を挙げている。
展示の後、敷地内にある1600mダートコースに場所を移動し、騎乗供覧が行われた。2頭ずつの併せ馬で1F14秒前後のタイムでゆったりと走る。2歳馬トレーニングセールのようにガンガン追うようなことはなく、あくまで余裕を残したままである。セール出身馬の競走成績が上がっていることを考えると、2歳のこの時期としてはこの程度の仕上げで十分なのだろうと思う。
騎乗供覧には、BTC騎乗者養成課程を今春卒業する研修生たちも参加し、それぞれ担当馬に騎乗した。1年間の訓練の成果をこうした場面で披露するのは何よりの実地教育になるわけで、普段乗りなれている訓練馬とはまた違った緊張感があるはず。
ともあれ、今年のサラブレッド市況を占う上でも、4月27日のブリーズアップセールは重要な意味を持つ。
ここで躓くか、昨年を上回る売れ行きを示すか、注目したい。因みに昨年は71頭が上場され、59頭の落札で、売却率は83.1%。売り上げ総額は5億4805万8000円。平均価格928万9118円であった。最高価格は前述のようにセイウンクノイチの06(セイウンワンダー)の2730万円。最低価格は210万円である。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。