2009年04月29日(水) 11:50
4月27日(月)、今シーズンの開幕を2日後に控えたこの日、門別競馬場で関係者が集まり盛大に竣工祝賀会が行われた。官民の関係者が多数参加して、新設された「ポラリスドーム」にて祝賀会が始まったのは午後6時半。敢えてこの時間に設定されたのは、照明設備の下、集まった関係者に模擬レースを披露するためでもある。
昨秋より冬季間の突貫工事を行い完成したこの新スタンドは、小さなことで知られる旧来のスタンドと比較してもさらに狭く、ちょうどその半分の面積しかない。内部は310インチ(縦3.8m、横7m)の大型ビジョンが設置されており、発売窓口6、払戻窓口2、モニターTV14台、収容人員は戸外の観戦エリアを含め800人である。壁面はコンクリート構造だが、屋根部分はテント式。積雪の少ない日高だからこそ実現した簡易式スタンドだ。
従来、狭隘だった旧スタンドは、交流重賞などの日の混雑たるや大変なものだった。とりわけ10月後半から11月にかけての気温がぐんと下がる時期などは、スタンド内部に陣取った人々で立錐の余地もないことがあった。
そうした悩みはこれでかなり解消することになるだろう。旧スタンドと合わせ、これで収容人員は1300人となる。これまでの動員数からすればほとんど間に合うことになる。
祝賀会は地元日高町の三輪町長による主催者挨拶に始まり、来賓祝辞、感謝状贈呈と続いた。会場内は紅白幕で馬場が見えないように遮断されており、午後7時10分の模擬レース実施前にナイター照明点灯式が行われる趣向である。しかし、42基の照明塔が完全に点灯するまでは20分かかるらしく、実は点灯式のかなり前からすでにスイッチが入っていた。紅白幕を取り除いたところで、照明に浮かんだ馬場が眼前に広がる様子を来賓に見ていただくという演出なのだ。
6時50分。内馬場に移動する報道陣が招集された。迷ったが、新スタンドをバックにした模擬レースを撮影したいと思いそれに参加することにした。
あたりはもう完全に日が落ちて真っ暗になっている中、馬場だけが煌々と照明に照らし出されている。やがて、会場に張られていた紅白幕が開き、背広姿の参加者が続々と外に出てくる。そこに模擬レースに出走する5頭が馬場内に入ってきて、新スタンドの前をキャンターで駆け抜けた。
距離は1200m。向こう正面左側にあるポケットからのスタートだ。やや肌寒い気温だが、晴れている。場内に実況が流れ、ほどなくゲートが開き、模擬レースがスタートした。
5頭がほぼ一団となってコーナーを回る。直線にさしかかったあたりから望遠で追いかけたが、内馬場方向からだと埒が邪魔になって馬にピントを合わせるのが容易ではなく、写真の出来栄えはほぼ最悪であった。
模擬レースはこれで終了。開幕間際のこの時期に古馬を集めるのは苦労したようで、結局1レースのみのお披露目に終わった。
レース後、五十嵐冬樹騎手にお話をうかがった。「照明の輝度は大井競馬場並みと言われていますが、比較してどうですか」と質問すると「競馬場の周囲が何もないところなので、大井よりはやや暗く感じる」とのこと。ただし「乗りやすい。旭川競馬場よりは断然明るく、問題ない」と及第点の評価であった。
道営ホッカイドウ競馬は29日の今日、札幌より開幕するが、来月20日にはここ門別競馬場に場所を移し、秋までナイター競馬を行う予定である。未曾有とも言われる不況の中、新たな船出に踏み切ったホッカイドウ競馬の浮沈は、門別競馬「グランシャリオナイター」の成否に委ねられることになる。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。