2009年05月12日(火) 23:59 0
日本からタスカータソルテが参戦するG1インターナショナルC(芝2000m)が、今週の日曜日(5月17日)にシンガポールのクランジ競馬場で行われる。
今季のシーズンまだ浅い時期には、欧州の大物がここを目指すというニュースもなく、地元勢の有力馬にも出走態勢が整わない馬が出て、近年になく「手薄」になるのではないかとの憶測が流れたこのレースだが、主催者による招致活動が巧みだったのだろうか、開催が近づくにつれてメンバーが充実。気が付けば、出走馬の質の高さと多彩さの両面において特筆すべき国際競走となった。
ここが引退レースとなるのが、昨年に続く連覇を目指すジェイペグ(牡5歳)だ。南アフリカで生まれ、3歳時には地元でG1ケイプダービーやG1ケイプギニーズに勝利した同馬。4歳時にはG1ドバイデューティフリーとG1インターナショナルCを連勝し、ワールドサーキットの主役となった。
引退後は、ウェスタンケイプのボニーヴェイルにあるクラワーヴレイ・スタッドで供用されることが決まっているだけに、ここは有終の美を飾りたいところだが、問題は調子だ。5歳の今季はここまで3戦して勝ち星なし。前走G1ドバイデューティフリーは11着という大敗だっただけに、どこまで去年の出来を取り戻しているかがカギだ。
逆に、目下絶好調なのが英国から参戦のプレスヴィス(セン5歳)である。前々走のG1ドバイデューティフリーこそ、グラディアトラスの逃げを捕らえきれずに2着に敗れたが、前走のG1クイーンエリザベス2世Cでは、1頭だけ異次元の末脚を発揮して快勝。破竹の勢いの同馬を、英国のブックメーカー各社も1番人気に支持している。
ジェイペグ同様に、G1ドバイデューティフリー大敗からの巻き返しを図るのが、バリウス(牡6歳)だ。5歳時の昨年は、G1クイーンエリザベス2世C・2着、G1香港C・2着、G1インターナショナルCが3着という善戦マンだった同馬。今季初戦のG2ジェベルハッタを鮮やかに制してキャラ転換に成功したかと思ったら、前走G1ドバイデューティフリーでは13着とズッこけ、堅実というキャラまで捨てることになった。プレスヴィスと同タイプの差し馬だけに、現状ではプレスヴィスに一歩譲ると見るのが妥当か。
前走G1ドバイデューティフリーでは5着とまずまずの競馬をしたのが、南アフリカの魔術師マイク・デコックが送り込むバンカブル(牡5歳)だ。キャラとしてはこの馬も2着の多い善戦マンで、ここで一気に突き抜けるとは考えづらい。
ドバイからの転戦組でも、前走はダートのG1ドバイワールドCを使われ、勝ち馬から大きく離されたとはいえ2着を確保したのが、グロリアデカンペオン(牡5歳)。ブラジル産馬で、地元で走っていた時代には芝のG2とG3に優勝。共和国大統領賞という芝1600mのG1で2度3着になっており、芝がダメな馬ではない。
豪州から遠征したのが、4月25日にランドウィックで行われた2000mのG1クイーンエリザベスSの1、2着馬、ポンペイルーラー(セン6歳)とサリーラ(セン8歳)の2頭だ。故障を乗り越えて前走で2年ぶりのG1制覇を果たしたポンペイルーラーは、豪州にシャトルされた日本産種牡馬ジェニュインの産駒だけに、肩入れしたい気持ちが強い。サリーラは前年のG1クイーンエリザベスS勝ち馬で、この距離を最も得意としている。
地元勢で最もレイティングが高いのが、シンガポールダービーやクランジマイルといったシンガポールG1を制して08年のシンガポール年度代表馬に輝いたトップスピン(セン5歳)だ。今季はここまで1200mの重賞を2戦し、いずれも8着と「死んだ振り」をしているが、早くからここが照準と言われており不気味。
恐らくは逃げることになるのが、4月19日に行われたシンガポ-ルのクイーンエリザベス2世Cで2着となったリココ(牡4歳)。ジェイペグの出方次第だが、後方の有力馬に気をとられて楽に逃がしてくれた場合、この馬が穴候補とならないだろうか?
近走の成績は冴えないものの、日本産のステイゴールド産駒で、昨年11月にシンガポールG1シンガポールGCを制しているエルドラド(セン5歳)にも期待したい。
このメンバーに挑むタスカータソルテ。2000m路線のGII・2勝、GIII・1勝という実績は、この路線のGIII・1勝で遠征した07年の優勝馬シャドウゲイトよりも明らかに上。2年前よりも相手は揃っているが、コース適性があって、暑さへの対応が上手に出来れば、好勝負しておかしくないはずだ。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。