2日連続の2歳トレーニングセール その2

2009年05月19日(火) 23:00

 先週に続いて今週は5月12日(火)に開催された「ひだかトレーニングセール」について触れる。

 昨年、このセールは上場頭数にして前年比−34頭の116頭、落札頭数も前年より21頭少ない45頭、売り上げ総額もまた前年比約1億8千万円もの大幅減少となる3億587万5500円に終わり、惨憺たる結果であった。

 その影響からか、今年は上場申し込みがかなり減るだろうと懸念されていたが、案の定、蓋を開けてみると上場頭数は53頭となり、一気に前年の半分以下となってしまった。

 とはいえ、昨年暮れには、開催そのものさえ危ぶまれていた事情もあったことから考えると、よくぞこれだけの頭数を揃えたと逆に評価しなければならないのかも知れない。

セリ会場風景

 さて、12日。前日の札幌競馬場は突風の吹く肌寒い1日だったが、天候こそ曇っているものの、気温はほぼ平年並み。当初懸念されていた空模様も、午前の公開調教が終わるまでは何とか降らずに済んだ。

仮設スタンド

 午前10時。上場頭数が少ないのでかなりゆったりとした流れの公開調教がスタートした。会場のJRA日高育成牧場内1600mダートコースには仮設スタンドが設置され、前日に続いて多くの関係者や購買者がここにも詰めかけた。53頭を3グループに分け、1つのグループが終わるごとにたっぷり15分間もハローがけの時間を取るスケジュールで前日の札幌と比較するといかにものんびりとした流れである。

エイシングレシャス07公開調教

 ただし、調教タイムは大半の馬が上がり1Fを11秒台以上でまとめ、10秒台をマークする馬も続出した。最高タイムは6番「エイシングレシャス07」の10.0秒、また2Fの最高は43番「マーメイドゴールド2007」の21.2秒である。

比較展示風景

 12時の少し前あたりで公開調教が終わり、その後、場所を移動しての比較展示が行われた。53頭しかいないため万事余裕があり、購買者はその分だけ丹念に各馬をチェックできる。人の数だけを見るならば例年以上とも思えるほどの賑わいにも思え、これならばいくら何でも昨年のような結果には終わるまいとの期待すら抱かせた。

 展示が行われている最中より、セリ会場横に設置されたテント内では飲食ブースが設けられ、来場者にお弁当や蕎麦などが振舞われた。

ひだかTS谷口組合長と大谷正嗣氏

 セリ開始は午後1時。主催者を代表して谷口貢・ひだか東農協組合長の挨拶に始まり、その後、昨年シンガポールゴールドCを制した当セール出身馬エルドラド(現5歳、父ステイゴールド、母ホワイトリープ、牡鹿毛、浦河・高野牧場生産)の馬主・大谷正嗣氏に谷口組合長より賞状と記念品が贈呈された。

 1時を少し回った時刻からセリがスタート。始まってみると、かなり頭数が少ないにも拘わらず、この市場でも目あての馬以外には見向きもしない傾向が顕著で、取引は総じて低調ムードに推移した。最も会場が沸いたのは、前記6番「エイシングレシャス07」が登場した時で、もともと前評判の高い馬だったが、公開調教でも余裕を残しての10.0秒をマークしたことから活発な競り合いが展開された。

エイシングレシャス07セリ風景

エイシングレシャス07立ち写真

 結局、2800万円(税抜き)で(有)ビッグレッドファームが落札。馬体もまだ“伸びしろ”がありそうで、ギリギリまで仕上げての10.0秒ではないことが高く評価されたようだ。父エイシンサンディ、母エイシングレシャスの牡鹿毛。生産は新ひだか町・川端英幸氏。販売者は(有)山口ステーブル。代表の山口裕介氏によれば、“総帥”岡田繁幸氏がこの馬にほれ込み「第二のコスモバルクになって欲しいと思っている」と言った由。母の父もトウショウボーイと、ひじょうに日高色の強い配合で、楽しみな1頭である。

 終わってみれば53頭中29頭が落札され、売却率は54.72%と3年ぶりに50%を回復した。

 だが、売り上げは1億9414万5千円で、前年より1億1173万円下落した。平均は669万4655円で前年比−約10万円。この結果をどう分析すれば良いものか。谷口組合長は売却率が54%に達したことについて「この厳しい時代を考えたら健闘したと言える」とホッとした表情を浮かべ、市場を総括した。

 即戦力を求める一定の購買層は確かに存在するが、価格の低迷はいかんともし難く、2004年に1216万円だった取引馬の平均価格は徐々に下落し続け、5年間でほぼ半減している。HBA日高軽種馬農協主催の「北海道トレーニングセール」も同様だが、結局最大のアピールポイントは当該セール出身馬の活躍以外にない。それだけの要因ではないにしても、セイウンワンダーのGI制覇で「JRAブリーズアップセール」が息を吹き返したように、看板馬ともいうべきセール出身馬が欲しいところだ。エルドラドがシンガポールではなく、日本国内のGIを勝っていたならばもっと違った結果が出ていたのかも知れない。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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