グランシャリオナイター、開幕

2009年05月27日(水) 09:40

 いよいよ道営ホッカイドウ競馬・門別開催が5月20日より始まった。昨秋より今春にかけて12億3900万円を投じ門別競馬場がリニューアルしたことについては何度かここで触れた。これから11月中旬まで、全てナイター開催で道営ホッカイドウ競馬がこの門別で行われる。「待ちに待った」というよりは、「ついに始まってしまった」と表現すべきかも知れない。なぜなら門別競馬場のナイター化は事実上道営ホッカイドウ競馬の“浮沈”がかかっているからである。

ナイター風景

 ここでコケたら、おそらく廃止へと事態が大きく動き出すことになるであろうことが予想される。2010年度中に単年度赤字決算からの脱却が課せられているホッカイドウ競馬は、文字通り「背水の陣」で、何としてでもこの門別で踏み止まらなければならない。門別の「グランシャリオナイター」の成否は生産地にとっておそらく今年最大級の大きな関心事となるはずだ。

ポラリス☆ドーム

 20日夕刻。ぜひ門別初日の照明下で行われるレースを見ようと思い、自宅を午後4時半に出発した。やや飛ばし気味に車を走らせ、私宅からおおよそ100km離れた門別競馬場に到着したのはちょうど午後6時。

パドック風景

 カメラを担いで急ぎゴール前まで走って行くと、間もなく第8レース(中央交流競走)「アルキバ特別」の発走時刻を迎えた。5月下旬ともなると日照時間が長く、まだまだ空は十分に明るい。あたりが徐々に暗くなって照明塔のライトにコースが照らし出され、雰囲気が盛り上がってくるのは午後7時を回ってからなのだろうか。

武豊騎手返し馬 引き上げてくる武豊騎手

 場内はかなり多くの入場者が入っている様子だった。しかし、新スタンド(ポラリス☆ドームと称する)を併設したことにより、一気に観客の滞留スペースが増えた。そして旧スタンドとコースの間に設置されていたパドックも新スタンドの裏手に移されたことにより、観戦場所も十分に確保されている。ナイター初日ということと、交流競走に騎乗するために武豊騎手も来場していたことなどから、カメラ片手に観戦する来場者の姿が目立った。

武豊騎手とドスライス 武豊騎手とピンクバンサー

 第8レースは、中央から参戦した武騎手騎乗のドスライス(栗東・森厩舎)が2着リニアラピートに7馬身差をつけ圧勝。武騎手はその後第10レースの「ミランダ特別」でも、同じ森厩舎のピンクバンサーに騎乗し見事に連勝。場内から盛んに声援が飛んでいた。

森厩舎関係者 ミランダ特別口取り

 この日のメーンは「第9回エトワール賞」(サラ3歳上OP)。1着賞金150万円。14頭が出走し、五十嵐冬樹騎手騎乗のクラフィンライデンが好位から抜け出してアドミラルサンダーにアタマ差で優勝した。

エトワール賞直線 エトワール賞ゴール前

 夕闇が濃くなるにつれて、徐々にカクテル光線に照らし出されたコース全体が浮き出てくる。そこに出走各馬が登場しそれぞれ出走地点までキャンターで駈けて行く。門別競馬場の周囲には、高い建物もなければ繁華街があるわけでもない。競馬場だけが真っ暗な中にそこだけがまるで異空間のように強烈な光を放って存在している。これはなかなか幻想的な光景にも見えてくる。向こう正面には太平洋が広がり、スタンドから左右どちらを見ても、コースの外側は漆黒の闇だが、周辺に“何もない”ところがむしろ逆に大きな「売り」なのかも知れない。少なくとも大井や川崎など都市部のナイターを見慣れている人にとって、門別競馬場のナイター風景はまた別種の趣が感じられることと思う。

五十嵐騎手とクラフィンライデン エトワール賞表彰式

 それはともかくも、記念すべきナイター初日の最終的な入場人員は1698人(本場)、売り上げは1億3188万6500円という成績であった。興味深いのは翌21日(木)の数字で、入場人員は初日の半分以下の807人まで激減したこと。にも拘わらず、売り上げは初日とほとんど変わらない1億2544万4100円を記録していることである。

 これは言うまでもなく、ホッカイドウ競馬がいかに場外発売に依存しているのかを示す数字として注目に値する。本場の売り上げや入場人員はもちろん気になるが、それ以上にとりわけ道外でどれだけホッカイドウ競馬の馬券を買って頂けるかが鍵を握っている。

旧スタンド

 なお、最後になったが、ホッカイドウ競馬の誘導馬に関するニュースに触れておく。今年、門別で誘導馬に騎乗するのは地元・日高町にある「優駿学園」(厩務員養成の専修学校)の生徒たちであるそうな。いかにも初々しさの残る若者が白い誘導馬に跨っている姿は見ていて微笑ましいものがあった。

誘導馬

 いずれまた近いうちにもう一度、ここを訪れる予定でいる。次回は飲食コーナーなども紹介したいと思う(撮り慣れていないせいか、思った以上にナイターの撮影が難しいことを痛感させられた夜であった、と記しておく)。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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