ダービーウイーク~北海優駿

2009年06月03日(水) 09:50 0

 5月20日に開幕した道営ホッカイドウ競馬の「グランシャリオナイター」が早くも3週目に入った。

 6月2日(火)は地方競馬の「ダービーウイーク」第3ステージとなる「第37回北海優駿」がここ門別で行なわれた。日本ダービーが行われた5月31日(日)に九州・佐賀でスタートした「ダービーウイーク」は、翌日は岩手(盛岡)に舞台を移し、さらにその翌日がここ門別である。以降、大井、姫路、名古屋と巡回する。

「北海優駿」には9頭が出走してきた。中央との決定的な違いは、出走馬の多彩なサイアーラインである。

北海優駿パドック1

 ゴールドヘイロー、ロサード、サニングデール、ブラックホーク、ワイルドラッシュ、メイショウドトウ、カコイーシーズ、トレジャーアイランド、モルフェデスペクタ。これが9頭の父馬として名前を連ねている。

 中央競馬ではあまりお目にかかれないような種牡馬が大半で、しかも道営の場合は冬季間の長いブランクがあるために、その間“出稼ぎ”に出ていた馬も多い。

 遠征先で成績を残せば、そのまま残留することにもなるだろうし、途中で転売されてまた違う競馬場に移籍することもあり得る。もちろん中央転厩という可能性も出てくる。

 道営の場合、そもそもが2歳の時点で頭角を顕した素材は、他場(主として南関東や中央)に移籍することが多く、そのために毎年開幕シーズンには古馬の出走馬確保に苦労するのが通例で、能力の高い3歳馬がそれほど残っていないのも事実だ。

 2日の門別は、夕刻より雲ってきたものの、天候の崩れもなくコンディションは上々。ただし、まだこの時期の日高は日が落ちると涼しいというよりも寒いくらいで、気温は10度を少し超えた程度。東京から取材にやってきた人々は「旭川とはまるで違う気温」に驚いていた。

 門別は海岸沿いの競馬場である。

 これから夏本番を迎えても、おそらく夜間は半袖ではちょっと辛いくらいの気温で推移するはず。霧も発生するし、軽装は禁物だ。本州方面からの遠征を計画されてる方にもうしあげておくが、間違っても「蒸し暑い」ような気候にはほとんどならないことを知っておいて頂きたい。

 さて「北海優駿」。第9レース「アンドロメダ特別」が終わり、出走各馬がパドックに入って来た。人気はメイショウドトウ産駒の6番「フーガ」に集まり、続いて7番カコイーシーズ産駒の「アラベスクシーズ」、さらに3番「サンサンヒカリ」という順である。

北海優駿パドック2

 パドックの人垣は開幕日には及ばないものの、それでもかなり入っているように見える。スタンドを増設したことにより、格段に居住性は向上した。昨年までならばとても収容し切れなかったほどの入場者数でも、十分に対処できている。地元の牧場関係者も多数つめかけており、ここかしこで挨拶を交わしたり談笑したりする光景が見られる。

スタンド風景

 やがて騎手が騎乗し、出走各馬がコースに入って来た。「北海優駿」の距離は2000m。4コーナー奥のポケットからの発走である。

アラベスクシーズ

 午後8時。いよいよゲートが開き、レースが始まった。先行する8番ムサシを3番サンサンヒカリが追う展開で、アラベスクシーズ、モエレアウトラン、フーガが続く。4コーナーまでムサシがレースを引っ張ったが、直線に入ると脱落。好位につけていたアラベスクシーズと1番人気フーガの一騎打ちとなり、後続馬を大きく引き離してゴール板まで叩き合いを演じた。結果は宮崎光行騎手騎乗のアラベスクシーズがフーガをアタマ差抑えて優勝した。

北海優駿ゴール

 勝ったアラベスクシーズは父カコイーシーズ、母アリエルスキー(その父マルゼンスキー)、牡3歳、堂山芳則厩舎所属。馬主は木谷ツヤ氏、新冠町の安達洋生牧場生産。これで6戦3勝、重賞初制覇となった。

口取り

 かなり入っている印象のあった門別競馬場だが、終わってみれば入場人員は943人。この日の売り上げはそれでも1億7426万5800円と、ナイター開幕以来の最高を記録した。必ずしも本場の入場人員と売り上げが比例しないのは前回この欄で触れた通りだが、果たしてこの日も、場外での健闘が目立った。「北海優駿」1レースの売り上げは総額6292万円余だが、そのうち場外で5734万円を売り上げて(もらって)いる。極端な場外依存度の高さと言う他ない状況で、ここ門別の立地条件や交通アクセスなど考えると、この傾向は今後も変わることはなさそうだ。

表彰後の記念撮影

 ともあれ、まだ始まったばかり。これからずっと晩秋まで「グランシャリオナイター」は続く。今後も折々でこの競馬場の様子を伝えることになると思われるが、まだ現地に足を運んでいない方はぜひどうぞ、とお誘いしておく。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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