6月最後の土日、ビッグレッドファームにてラフィアンターフマンクラブ1歳募集馬の展示会が行われた。この時期、生産地では各クラブが週末ごとにこうした展示会が開催される。これまでなかなかラフィアンの展示会を見学する機会がないままになっていたのだが、会員向けに配布された募集馬パンフレットによれば、すでに今年の1歳世代が第24期生だという。クラブ発足は1986年。15頭の2歳馬募集からスタートした、と記載されている。

　今年の募集馬は72頭。27日(土)午後1時。新冠町明和のビッグレッドファーム明和に会員の乗った貸切バス5台が到着したのを見計らって、今年度の展示会が始まった。

　この日は好天ながらこの時期としては異例とも思えるほどの気温となったものの、木陰に入ると爽やかな風が吹き抜ける絶好のコンディション。パンフレットの順番通り、1番「アラームコールの08」(父マイネルラヴ/牡、青鹿毛)から展示が開始された。

　会場内には左右と奥に仮設スタンドが設置され、会員は思い思いの場所で熱心に馬を観察する。入口の近くでマイクを持つのはクラブ代表の岡田紘和氏。1頭ずつ丁寧に長所も欠点もまとめて解説する。時々、その場で「パンフレットには載せましたが、この馬はやや問題があるので募集停止とさせていただきます」などと変更される場面もあった。

　また、奥のスタンド中段でじっと展示の様子を見ていた“総帥”が降りてきて、“補足説明”を加えたりもした。もともと繁幸氏はトークが得意で、かつては(今もか)“岡田節”とも評されたほど。あたかも漫才コンビのごとく、この親子のやりとりは、なかなか絶妙だった。

　注目を集めたのは24番「タカラカンナの08」。周知の通り、マイネルキッツ(天皇賞・春)を兄に持つロージズインメイ産駒で、募集価格は4200万円。因みにこの馬が72頭中、最も高額である。また、募集馬のおおよそ半分は、ビッグレッドファームとコスモビューファームのいわば自家生産馬だが、残りの半分は、市場や庭先などで購入した馬たち。日高に限らず、小規模生産者にとってビッグレッドファームは大切な「お客様」でもある。

　なお、この展示会にはバス5台の他、個別にレンタカーなどでかけつけた会員も含め約300人が参加したとか。流石に経済情勢や競馬人気の低迷などもあって全盛期と比較するといくぶん数は減っているというが、それでもラフィアンに限らず、こうしたクラブ法人の存在は宿泊や飲食などで日高に多くの“外貨”をもたらしている。

　さて、翌28日(日)。今度は会場を真歌トレーニングパークに移し、「公開調教」が行なわれた。

　午前8時半。1500mある坂路コースの中腹あたりの見学場所にパイプ椅子が並べられており、この日も前日同様の好天。バスが到着し見学者が集まったところで、さっそく1組目がスタートした。

　公開調教には前半と後半に分かれて60頭の古馬が2頭～4頭併せで坂路を駆け上がってくる。配布された「調教予定表」を見ると、1組目は「イグゼキュティヴ、フォーグ、チャールズ」となっている。ラフィアン会員ではない私でもよく名前を知っている3頭だ。イグゼキュティヴは道営から中央入りし札幌2歳S・2着の実績がある3歳馬。皐月賞にも出走した。またフォーグは2勝馬ながら、朝日杯、NHKマイルC、ダービーにも出た5歳馬。そしてチャールズは重賞2勝の4歳馬である。いきなりこの3頭での調教は迫力満点だった。

　その他にも、マイネルアワグラス、スケルツィ、シーガルなどがいた。調教は前半が14組、後半が9組だが、数分間隔で出発し、あっという間に眼前を通り過ぎる。10mほどの至近距離にあるコース上を駆け抜けるのだから見応え十分で、見ていて飽きない。

　カメラ片手に熱心に調教を見守る会員が多く、それぞれの“持ち馬”がやってくると盛んにシャッターを切る姿が目立った。昨年の公開調教は濃霧でまともに馬が見られないほどだったそうだが、今年は2日間ともこれ以上ないというほどの絶好のコンディションに恵まれ、約1時間で公開調教は終了した。

　ところで、パンフレットにはラフィアン所属馬のデビュー率の高さ(例年90％を超える)について記載されている。しかし、当然のことながらどのクラブであっても勝ち上がり率や回収率はもちろんデビュー率よりは落ちる。そのあたりの事情について代表の岡田紘和氏はさり気なく「競走馬への出資には高いリスクが伴いますので、金銭的な見返りだけをお求めになる方にはお勧めできません」と断っている。厩舎やレース選択、騎乗する騎手などに関するクレームや不満をぶつけてくる会員もいるのがクラブの常とはいえ、冒頭の「ごあいさつ」で敢えてこう書かなければならないのだから、クラブ法人も大変である。