サラトガセール、すべての指標が前年を上回る

2009年08月18日(火) 23:59

 8月10日(月曜日)と11日(火曜日)の両日、アメリカのニューヨーク州で開催された「ファシグティプトン・サラトガ・セレクテッド・イヤリングセール」は、誰もが予想だにしていなかった好結果に終わった。

 昨今の経済情勢を鑑み、市場関係者の多くが大きな落ち込みを覚悟していたにもかかわらず、総売り上げは前年比45%アップの5255万ドル、平均価格が前年比11%アップの328,434ドル、中間価格が前年比10%アップの250,000ドル、前年が25.6%だったバイバックレートが今年は22.0%と、すべての指標が前年対比で大幅に良化したのである。

 セールが成功に終わった裏には、複数の要因があったと見られている。

 まず挙げられるのは、上場馬の質が大変高かった点であろう。3週前のこのコラムでも記したように、血統的レベルにおいて近年最高との評価を得ていた上場馬たちが、セリ会場に集結してみれば、実馬の出来も血統同様に素晴らしかったのだ。

 ここは多少無理をしてでも手に入れたいと考えた購買者が多く、彼らの財布の紐がおおいに緩んだ結果の好況であった。

 購買者の購買意欲を高めたもう1つの要因が、ファシグティプトン社が購買者のために用意をしたポスピタリティーの充実ぶりだった。

 昨年春にドバイの投資会社にM&Aされ、資金が潤沢になったことを受けて、ファシグティプトン社はサラトガのセリ会場を大改修。屋根付きの立派なパレードリングや、購買者にシャンパンを振る舞うためのバルコニーなどが新設された他、広範囲にわたって施設の大幅な改善がみられた。

 さらに、セール直前の週末(8日・土曜日、9日・日曜日)にサラトガで行われた競馬開催をスポンサーとし、「ファシグティプトン・サラトガ・レーシングフェスティヴァル」と銘打って施行。場内には臨時のテントが設けられ、購買者にランチが振る舞われるなど、至れり尽くせりのサービスを展開した。これだけ手厚くもてなされれば、購買者の財布のひもも緩もうというものである。

 そして、カタログの良さに惹かれたか、ヨーロッパから遥々やってきた顔触れを含めて、ブラッドストック・マーケットにおける主だったプレイヤーたちがこぞってセリ会場に集結。これだけの数のトップバイヤーが参戦すれば、市場がヒートアップして当然であった。

 ことに、ドバイの国王であるシェイク・モハメドが、このセールとしては20数年ぶりに、御自ら御出馬。2日間を通じて1185万ドルを投資して12頭の1歳馬を購入し、セリ結果を向上される原動力となった。

 セールにおける最高価格馬を購買したのも、そのシェイク・モハメドだった。

 そうでなくても熱かった市場が、最高にヒートアップしたのが、開催2日目に上場番号204番の牡馬が登場した時だった。父が、今年の1歳世代が実質的な最終クロップとなるストームキャットで、兄に、BCマイル勝ち馬アラゴーンがいる本馬。開始前から「今回のセールの目玉商品」と言われていただけに、複数のバイヤーによるビッドの応酬が展開された末、最終的には280万ドルでシェイク・モハメドの代理人であるジョン・ファーガソン氏が購買者となった。

 そんな中、日本人によると見られる購買は、1頭のみ。これだけマーケットが高騰しては、この結果も致し方のないところであろう。

 日本にやってくるのは、21万ドルで購買された上場番号90番の牡馬。父がアンブライドルズソングで、母セルティックメロディーがG1ヒューマナディスタフの勝ち馬という良血馬である。牝馬にしては立派な馬格で、かつパワフルな馬体を保持しており、主戦場はダートになりそうだが、相当のところまで出世しそうな好素材であった。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す