2009年09月16日(水) 00:30
日本軽種馬協会発行「JBBA NEWS」9月号に、先月開催された「サマーセール」(主催・HBA日高軽種馬農協)の結果について、様々な角度からの分析結果が掲載されている。
改めてここで簡単におさらいしておくと、今年の「サマーセール」は8月24日〜28日の5日間の日程で開催され、1077頭が上場、396頭が落札された。売却率は36.8%。前年比5.3%の上昇となり、2000年以降の過去10年間で最も高い数字となった。
売り上げ総額は17億2998万円。こちらもまた1億3000万円ほど増え、前年よりも8.1%の増加である。
ただし、平均価格だけは、今年もまた前年比で3.3%低下し、436万8636円。過去10年間で最も高かった2001年の637万6407円からほぼ確実に年々下落し続けており、「売れてはいたが価格は安い」状況と言えるだろう。
さて、ここで注目すべきデータは、「種付け料と売却価格との関係」である。
国外供用種牡馬及び、種付け料未公表(未調査)の一部の種牡馬を除き、ここで集約されている種牡馬は計89頭。それぞれ2007年度の種付け料を基に価格別で分類されており、上は500万円以上750万円未満3頭を筆頭に、以下、400万円〜500万円(4頭)、300万円〜400万円(5頭)、250万円〜300万円(3頭)、200万円〜250万円(8頭)、150万円〜200万円(12頭)、100万円〜150万円(13頭)、50万円〜100万円(21頭)、50万円未満(20頭)という内訳だ。
当然のことだが、この市場になると、種付け料の高額な馬は少なく、廉価な種牡馬ほど上場馬頭数が多くなる傾向にある。これら89頭の種牡馬の産駒は、計328頭が落札され、500万円〜750万円(9頭)、400〜500(17頭)、300〜400(22頭)、250〜300(14頭)、200〜250(48頭)、150〜200(42頭)、100〜150(76頭)、50〜100(71頭)、50未満(29頭)となっている。
問題は、これらの売却された上場馬の落札価格と種付け料との関係である。
この一覧表では、(1)種付け料未満、(2)1〜2倍、(3)2〜3倍、(4)3〜4倍、(5)4倍以上、の5段階に分類されており、ひじょうに興味深い結果が公表されている。
種付け料50万円未満のクラスでは、流石に(1)(2)に該当する馬はいない。(3)が1頭、(4)が3頭、(5)が25頭となっている。種付け料そのものが廉価なので、大半の落札馬が種付け料の4倍以上の落札価格である。
次に50万円以上100万円未満のクラスもまた(1)はいない。(2)が4頭、(3)8頭、(4)12頭、そして(5)が47頭である。
続いて100万円以上150万円未満のクラスでは、(1)3頭、(2)15頭、(3)20頭、(4)14頭、(5)24頭。注目すべきは、早くもここに種付け料未満の落札馬が3頭出現していることである。また、(2)から(5)まで各層に満遍なく落札馬が散らばっているが、50万円〜100万円のクラスと比較すると、(5)の種付け料の4倍以上の落札価格馬はやはり少なくなる。(2)(3)(4)あたりが主流のようだ。
さらに150万円以上200万円未満となると、(1)2頭、(2)12頭、(3)21頭、(4)5頭、(5)2頭である。種付け料が徐々に高額になるにつれて(2)(3)(1倍〜3倍)の占める割合が多くなる。
200万円以上250万円未満では、(1)は6頭に増え、(2)18頭、(3)19頭、(4)3頭、(5)2頭と、より一層価格帯に偏りが見られる。(2)(3)に大半の落札馬が集中してくる。
250万円以上300万円未満では(1)2頭、(2)6頭、(3)4頭、(4)はなく(5)2頭。やはり種付け料のせいぜい2倍〜3倍くらいの馬の割合が増えている。(5)になるともはや例外的な存在になってきている。
300万円以上400万円未満では(1)3頭、(2)15頭、(3)3頭、(4)がなく(5)は1頭のみ。1倍〜2倍に集中していることがはっきりと分かる。
400万円以上500万円未満。(1)1頭、(2)9頭、(3)6頭、(4)がなく(5)1頭。
このレベルの種牡馬になると、それぞれの牧場のエース級を配合している場合が多く、市場にとっても目玉商品と表現して差し支えない。ただし、元々の種付け料が高額のために(2)が最も多く、全17頭中9頭がここに分類されている。
500万円以上750万円未満ともなると、(1)こそ2頭いるが、(2)が7頭のみ。種付け料の2倍以上の価格の落札馬は皆無である。このクラスの種付け料の種牡馬の産駒のうち、著しい高額取引が予想されるような素材は、まず「セレクト」「セレクション」といった市場に上場されるケースが大半で、ここには上場されないのが通例でもある。
税込み1000万円以上の落札馬は計23頭と前年よりも4頭増えたが、逆に、100万円以上200万円未満もまた35頭から59頭に、そして200万円以上300万円未満もまた72頭から83頭にそれぞれ増えている。
前年比で落札馬は合計42頭増加しているものの、300万円未満の層がその内35頭を占める。高額馬も4頭前年より多かったが、明らかに低価格馬の方がより増えており、その分だけ平均価格を下げてしまったのである。
なお、今年の「サマーセール」では、最終日28日に、落札平均価格を前年比でいきなり77万3467円も下落させてしまった。天候に恵まれなかっただけではなく、1200番台に登場した「セレクションセール」からの転身組の成績が不振だったこともあり、結果的に市場5日間を通じて落札馬の平均価格が15万円ほど下落してしまったのだ。
いずれにしても、もっと様々な観点からの分析がなされてもいい。さらに言えば、市場取引馬全ての「その後の競走成績」を追跡調査すると、より生産者にとっても購買者にとっても資するところ大であろう。(もっとも「安くて走る日高の馬」というアピールができるかどうかは分からないが)
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。