いよいよブリーダーズC

2009年11月03日(火) 00:59

 いよいよ今週の金曜日・土曜日に迫った、アメリカ競馬の祭典「ブリーダーズC」。最も大きな話題を集めているのがゼニヤッタ(牝5歳)で、彼女が無敗の連勝記録を伸ばせるかどうかに、全世界が注目していると言っても過言ではない今年のブリーダーズCだが、総体的な見どころで言えば、多頭数で臨む巨大勢力がどれだけ固め打ちをすることが出来るかにも、注目が集まっている。

 まず、関係者が大きな関心を寄せているのが、「ヨーロッパ勢が何勝するか」だ。

 もともと芝のレースでは優位な戦いとなることが多い欧州勢だが、芝適性が活きると言われているオールウェザーをメイントラックとするサンタアニタが舞台となった昨年、BCクラシックで衝撃の1・2フィニッシュを決めたのをはじめ、全14レース中5レースを制覇。再びサンタアニタでの開催となる今年は、昨年よりも更に強力なメンバーを送り込み、迎え撃つ北米勢を戦々恐々とさせている。

 初日から見ていくと、開幕戦となる「マラソン」で本命視されているのが、今年のセントレジャー優勝馬マスターリー(牡3歳)だ。続く「ジュヴェナイルフィリーズターフ」には、エイダン・オブライエンがG1モイグレアスタッドS・3着馬リリーラングトリー(牝2)を送り込む予定だ。連覇を狙うヴェンチュラをはじめ地元勢が強力な「フィリー&メアスプリント」、エントリーのない「ジュヴェナイルフィリーズ」はノーチャンスだが、「フィリー&メアターフ」には、ヘンリー・セシルがオークス2着馬ミッデイ(牝3)を送り込む。ターフとダブル登録のダーレミ(牝4)がこちらに廻れば、更に盤石だ。そして初日のメイン「レディースクラシック」には、昨年レイヴンズパスでクラシックを制して世間をあっと言わせたジョン・ゴスデンが、G1・2勝馬レインボウビュー(牝3)を送り込む予定だ。

 2日目初戦の「ジュヴェナイルターフ」にも、ゴスデン厩舎のG1ジャンルクラガルデル賞2着馬パウンスト(牡2)や、オブライエン厩舎のG2シャンパンS・2着馬ヴァイカウントネルソンがいるし、「ターフスプリント」と「スプリント」にダブル登録している、7月にニューマーケットで行われたG1ジュライCの勝ち馬フリ―ティングスピリット(牝4)は、どちらに出てもチャンスがありそう。「ダートマイル」は北米勢も強力だが、前走ダンドークのG3を制してオールウェザーへの適性も示したG1・4勝馬マスタークラフツマン(牡3)が、クラシックを回避してこちらに廻る予定で、これも脈あり。「ジュヴェナイル」には、G1ミドルパークS・2着馬ラジオヘッド(牡2)がエントリーし、「マイル」には連覇を目指すフランスの名牝ゴールディコーヴァ(牝4)が控えている。連覇を狙うコンデュイット(牡4)や、サンクルー大賞勝ち馬スパニッシュムーン(牡5)のいる「ターフ」は、確実に1勝を計算できるはず。そして「クラシック」には、マイルG1連勝中のリップヴァンウィンクル(牡3)と、G1英チャンピオンS勝ち馬トゥワイスオーヴァー(牡4)の、強力ダッグで挑む。

 欧州勢の目標は、前年の5勝を超えることか。

 固め打ちが期待されるもう1つの集団が、今季後半に入って絶好調モードに突入したゴドルフィンだ。プレ・エントリーの段階で、9レースに14頭を登録。このうち、前述した「マラソン」のマスターリー(牡3)は、おそらく当日1番人気が予想される。「フィリー&メアスプリント」にエントリーしている、G1・2勝馬セヴンスストリート(牝4)は、距離短縮を克服できれば面白い存在だし、同じレースには、前走G2ギャラントブルームS・2着のサラルイーズ(牝3)もいる。「レディースクラシック」も、ゼニヤッタがクラシックに廻れば、昨年のこのレース2着馬ココアビーチ(牝5)、前走のG1ベルデイムを含めてG1・4勝のミュージックノート(牝4)のゴドルフィン勢に、大きなチャンスがある。

 2日目になると、まず2歳戦の「ジュヴェナイルターフ」に、G1ジャンルクラガルデル賞3着馬バズワード(牡2)が、「ジュヴェナイル」に、G1グランクリテリウム2着馬ヴェイルオヴヨーク(牡2)がエントリー。「ダートマイル」には、復活した昨年の2歳チャンピオン・ミッドシップマン(牡3)と、前走G1フォアゴーSを制しているパイロ(牡4)の強力2騎がスタンバイし、「マイル」にも、2000ギニー2着馬デリゲイター(牡3)と、春のG1ドバイデューティーフリーと秋のG1ヴィトリオディカプア賞を制しているグラディアトーラス(牡4)の2頭を送り込む。前哨戦のG1アンシェントタイトルSを制して「スプリント」に挑むガイエゴー(牡4)も、有力馬の1頭。そして「クラシック」は、春のG2・UAEダービーと秋のG2スーパーダービーを制しているリーガルランソム(牡3)と、前走のG2ジェロームHを含めて目下3連勝中のジローラモ(牡3)の2頭出しで臨む予定だ。

 地元北米勢で大攻勢をかけるのが、東海岸のトップトレーナーのトッド・プレッチャーだ。こちらもプレ・エントリーの段階で、11レースに12頭を登録。まず、有力馬の1頭として「マラソン」に出るのが、オールウェザーのターフウェイパークで行われた12FのG3フォールチャンピオンシップを圧勝した、ナイトライト(牡5)だ。新馬、G1フリゼットSと連勝して「ジュヴェナイルフィリーズ」に挑むデヴィルメイケア(牝2)は、未経験のオールウェザーをこなせればチャンスありだし、G3ウィズアンティシペーションS、G3バーボンSと、芝の重賞を連勝して「ジュヴェナイルターフ」に駒を進めるインタラクティフ(牡2)も、おおいに脈あり。キーンランドのオールウェザーを舞台に行われたG1ブリーダーズフューチュリティで2着となって「ジュヴェナイル」に挑むエイケナイト(牡2)と、地元の前哨戦G2オークツリーマイルを制して「マイル」に挑むカウボーイカル(牡4)の2頭は、いずれも強敵が相手になるが、チャンスが無いわけではない馬たちだ。そして、「クラシック」に挑むのが、春にG1フロリダダービーを制している3歳の強豪クオリティロード(牡3)だ。ここも相手が強く、また、クオリティロード自身にオールウェザートラックの経験が無いのが気懸かりだが、逆にオールウェザーが合うようなら、大逆転があっておかしくない。

 ゴドルフィン所属馬を束ねるサイード・ビン・スルールとトッド・プレッチャーの、どちらの調教師がより多くの勝ち星を挙げるか、見ものとなりそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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