マイルCS参戦外国馬もハイレベル

2009年11月17日(火) 23:59

 先週のエリザベス女王杯に出走したシャラナヤに続いて、今週のマイルCSにはエヴァズリクエストとサプレザが出走する。3頭はいずれも欧州からやってきた牝馬であり、いずれも前走G1勝ちを果たし、勢いに乗って来日した馬たちだ。

 来週のジャパンC、再来週のJCダートにも、欧米から大物の来日が予定されており、今年のジャパン・オータム・インターナショナル・シリーズは、近年では最も多彩でレベルの高い顔ぶれによって展開されている。

 充実したボーナス制度が機能している点もあろうが、誘致に当たられているJRA海外駐在員の皆さんが日頃から積み重ねている努力に、大きな敬意を表したいと思う。

 ここ2〜3年、水準が非常に高いと言われているのがヨーロッパの牝馬で、今週のマイルCSに欧州か来日した2頭がいずれも牝馬というのも、決して偶然ではなかろう。ワールド・サラブレッド・ランキングの最新版でも、サセックスSでレイティング129を獲得したリップヴァンウィンクル(牡3)を抑えて、ジャックルマロワ賞で130を獲得したゴールディコーヴァ(牝4)が、マイル部門の首位に立っている。

 ゴールディコーヴァが獲得した130というのは、96年・97年にボスラシャムが131というレイティングを獲得して以来、牝馬としては12年振りの130超えという高い評価で、すなわち、極めて頂上が高い「欧州マイル山」で、稜線の高い部分を形成しているのがサプレザやエヴァズリクエストと言えよう。

 サプレザ(牝4)の初出走は3歳の7月29日。春のクラシックが終わってからという遅いデビューだったが、メゾンラフィットのニューカマー戦を8馬身差で快勝。続く一般戦で3着に敗れたにも関わらず、次走はサンクルーの準重賞にぶつけているから、陣営としてもその素質を買っていたことがうかがえる。これに応え、サプレザは準重賞のコロネーション賞を6馬身差で快勝し、頭角を現すことになった。

 準重賞1着、G3・2着の成績で迎えた今季3戦目、ドーヴィルのG1ロスチャイルド賞に出走し、超A級馬ゴールディコーヴァの4着に健闘。続くドーヴィルのG3クインシー賞で、「ちょっと先頭に立つのが速すぎた(コレ調教師・談)」という競馬で惜しい2着に敗れた後、凱旋門賞ウィークにロンシャンで行なわれる1600mのG2戦ダニエルウィルデンシュタイン賞や、1400mのG1戦ラフォレ賞に駒を進める選択肢もあったが、渋るよりは乾いた馬場を好むこと、直線コースが向いているとの理由から、10月3日にニューマーケットで行なわれた牝馬戦サンチャリオットSで、再びG1に挑むことになった。

 凱旋門賞ウィークの「裏開催」にあたるため、マスコミ的には注目が低くなりがちなサンチャリオットSだが、ここは牝馬のトップマイラーがシーズン最後の目標にする一戦である。ここでG1初制覇を果たしたサプレザ。1000ギニーやコロネーションSを制した3歳牝馬最強マイラーのガナーティを退けての優勝だけに、価値は高い。

 馬だけでなく、ここは、シャンティーに厩舎を構え、30〜40頭を管理している調教師ロドルフ・コレにとっても、G1初制覇となった。フランスのコレ調教師と聞いて、私たち日本のファンがまず思い起こすのは、87年のジャパンをルグロリューで制したロベール・コレ師だ。ルグルリュー以外にも、セントレジャー勝ち馬サンオブラブ、トップマイラーのウィッパーらを手掛けたロベール・コレ師の、御子息にあたるのがロドルフ・コレ師である。

 乾いた馬場を好むサブレサを日本に連れてくるにあたっては、おそらくは父ロベールの示唆なり助言なりがあったことは、容易に想像がつく。つまりは、日本攻略のノウハウを持った陣営が送り込む馬であることを、承知しておくべきであろう。

 もう1頭の外国馬エヴァズリクエスト(牝4)に関しては、ひょっとするとその名を耳にしたことがあるという日本のファンもおられるかもしれない。今年2月、ドバイのナドアルシバ競馬場で、日本から遠征したブラックエンブレムが出走した準重賞バランチーンに出走していた1頭なのである。2歳時に7戦、3歳時に8戦、そして4歳を迎えた今季はドバイでの2戦を含めて前走まで10戦を消化している、タフな牝馬である。

 しかも、ケンプトンのオールウェザーでも勝ち星を挙げているし、芝では固い時も柔らかい時でも好走実績があるという、実に多才な面も見せている競走馬である。

 前々走、トルコに遠征して、G2インタンブールトロフィーを制して自身3度目の重賞を制した後、前走はイタリアに遠征。牝馬限定の2000mのG1リディアテシオ賞を制して、待望のG1初制覇を成し遂げた。この時2着に退けたのは、今季の独オークス馬という強豪ナイトマジックだ。

 この他、昨年のG1オペラ賞の勝ち馬レディーマリアン、今年のロイヤルアルコットのG2リブルスデイルSの勝ち馬フライングクラウド、前走カラのG2ブランドフォードSを含めて3連勝中だったチャイニーズホワイトなど、今年のリディアテシオ賞は、シーズン末にイタリアで行なわれるG1という印象以上に好メンバーが顔を揃えた一戦だった。

 とにかくタフな馬で、輸送や環境の変化にまるで動じぬタイプだけに、こちらも侮るのは危険な1頭と言えよう。

 日本馬も強いが、ともに馬券に対象となっておかしくないのが、マイルCS出走の外国馬2頭と言えそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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