「第1回ジョッキーベイビーズ」その2

2009年11月17日(火) 23:50 0

 先週に引き続き、ジョッキーベイビーズのことを書く。今回は当日の模様について、である。

 午前8時。東京競馬場に出場騎手8名と保護者たちが集合した。いよいよ本番の日を迎えて、否が応でも緊張が高まる。

 また当日も騎乗訓練から始まった。前日のリハーサルの様子を参考に、一部の馬はJRA職員の手によってすでに汗ばむくらいの調教を施されている。あくまで推測の域を出ないが、あまり一方的なレース展開にならぬよう配慮されたのかも知れない。

 「動き過ぎる馬」を少し疲れさせる、という目的があったのではあるまいか。

当日朝の練習風景 当日朝の練習風景

 一人ずつインタビューして回った。

 北海道の2人以外の6人に順に話を聞いた。本番前なのでどの子も口数が少なかったが、3.木幡巧也君は「頑張ればイケると思う。馬は昨日の練習の時よりずっと動くようになった。ライバルは木村君。父(木幡初広騎手)からは、最初から気合を入れて馬を追え」と言われた」とコメント。

 4.湯浅玲雄君は「緊張しています。昨日乗った時よりいい感じ。北海道の木村君とは気が合いそう」と微笑んだ。5.奥村亜希さんは「最初から鞭を入れて追いたい。自信はあります。日本一になりたい」と結んだ。6.奥村恵里さんはお祖父さんがかつて着ていたというデザインの勝負服に身を包み「練習の感触は上々。優勝狙い頑張ります。気になるのは木村君と木幡君」と言った。

 7.徳永亮輔君は「予選を見た限りでは北海道のポニーは自分たちの乗っているポニーとスピードが違うと思いました。技術では木幡君が上手いと感じました。緊張していますが勝ちたいです」と闘志を内に秘め言葉を選びながら物静かに語った。8.湯田朱里さんは「抽選でポッター(ポニー)に当たったらいいねと話していたらその通りになって嬉しい。みんな上手ですね。いつも通りに練習だと思ってゴールインしたい」とコメントした。

取材 取材

 午前9時前、乗馬センターに岡部幸雄さんが現れた。10月に浦河へ来ていただいた際には「当日ぼくは日本にいないので残念」と語っておられたのだが、アメリカ行きの予定が変更になったのだという。8人が一列に並び、岡部さんから「みんながんばって」と激励を受け、一人ずつ握手してもらった。

 岡部さんは「木村君、やっぱり上手いね。一か月前に浦河で見た時よりさらに上達している気がする」と絶賛であった。「彼の最も良いところはメンタリティだと思う。前向きの明るい性格で、ああいう部分は騎手向きだよ」と評していた。

 また「ジョッキーベイビーズが、日本中の子供たちにとっての大きな夢の舞台になるように育ってほしいと思う。成功を祈っていますよ」と期待を寄せていた。

岡部幸雄氏来訪 

 マスコミの取材も前日よりずっと多く、8人の騎手たちはそれぞれテレビカメラに追い回されている。

 午前10時半。今度は、誘導馬に乗るほしのあきさんがやってきた。

 ど派手な衣装に身を包み、さっそく乗馬練習を始めると、みんなの視線がそっちに移動してしまった。タレントの存在感を見せつけられる思いであった。

土川理事長 ほしのあき

 11時。JRA土川健之理事長も乗馬センターに姿を見せた。いよいよレースも近い。8人の騎手たちは最後の練習に余念がない。

 そして11時30分。第4レースがスタートした。場内から歓声が聞こえる。レースが無事に終了し、出走各馬が地下馬道に引き上げてくるのをやり過ごし、私は撮影場所に向かった。

 11時40分。ほしのあきさんを先頭に8騎が入場している。ほしのさんは盛んに手を振り、スタンドに愛想を振りまいている。やがて残り200mの地点で8騎はスタート位置の400m地点まで戻り、いよいよファンファーレが鳴ったのである。

 レース結果はすでに周知の通り。

 スタートはややバラバラになったものの、全馬何とか完走し、無事にゴールインした。ただ、ゴール後、馬止め要員が不用意な近づき方をしたため何人か落馬したのが悔やまれる。12時10分には第5レースの出走各馬が本馬場入場の予定になっており、それまでに表彰式を終えなければならず、余裕がなかったのは理解できるが、この辺は来年に向けての課題だろう。

 表彰式もウイナーズサークルにて本格的なものであった。ファンファーレからレース、そして表彰式と、演出はほとんど「GI級」で、これは出場した8人にとってもひじょうに印象的だったに違いない。

表彰式 

表彰式 

表彰式 

 優勝した木村拓己君は「三浦皇成騎手が目標」という。木幡巧也君、徳永亮輔君も騎手志望である。負けた悔しさを表情に浮かべながらも徳永君は「今回、東京競馬場という大舞台で乗れて、ますます騎手になりたくなった」とレース後語っていた。

 本来ならば昼休みの時間帯で、スタンドの人影はまばらになるはずだが、このレースを見ようとかなり多くの観客が残って声援を送っていた。

 これでポニー競馬の面白さと迫力が多少なりとも理解されたのならば、まずは目的を果たしたことになるだろう。ぜひ来年も実施して欲しい企画である。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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