帯広競馬場複合化計画

2010年01月19日(火) 23:50 0

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 前年比で約10%の落ち込みが続く帯広ばんえい競馬だが、昨年秋より市主導による「帯広競馬場複合化計画」なるものが動き出し、事業規模2億5千万円の「とかちむら(仮称)」を、現在の競馬場入り口付近に建設する計画が進められている。

 このうち市からの補助金は2億円。

 事業主体は街制作室、象設計集団など4社で構成する特別目的会社(SPC)「とかちむら」(国分裕正社長)で、計画によれば、レストランや地場産品販売コーナーなど648平方メートルの施設を1億5650万円で建設することになっている。

 「とかちむら」では年間4億8360万円、55万人7900人の買い物客が訪れることを想定しているとされ、「集落のような開放的空間」「全面的にガラスを使用し気軽に立ち寄れる空間」などをコンセプトに掲げている、という。

 「帯広・十勝の魅力を発信する拠点づくり」「ばんえい競馬・ばんばの魅力を広める拠点づくり」を目指す、のだそうである。今年3月の市議会にて承認された後、4月に着手し7月供用開始という青写真である。

 ただし、ばんえい競馬を主催する帯広市と、競馬場の土地を所有する十勝農協連(管内24農協で構成)、競馬関係者などの間では、かなり意見が食い違っているとも伝えられる。

 市の一般会計から競馬の赤字補填はしないという条件でばんえい競馬は存続することになった。にもかかわらず、2億円もの補助金を競馬関連施設に投入するのはいかがなものかという反対意見も市議の間には根強いという。また、どうせ2億円もの巨費を複合化計画に費やすのであれば、直接、競馬事業に充当してくれた方がより効果的だとする競馬関係者も多いらしい。

 この事業は5か年計画とされるが、土地所有者である十勝農協連側は、「とかちむら」が施設建設に関連して最大2万5千平方メートルに及ぶ競馬場公園化をも将来計画に盛り込んでいることなどに警戒感を強めているとされており、「競馬場あっての複合施設。仮に競馬が廃止された場合には、この施設も存在理由を失う。その場合には当然更地にして変換してもらう」との姿勢を崩していない。

 地方財政厳しき折、わずか5年間だけの使用目的のために2億円もの補助金を拠出することの是非が問われることになるのは必至で、この問題は来る3月の定例市議会でも白熱した論戦が予想される。加えて、問題をよりいっそう複雑にしているのは、現帯広市長の砂川敏文氏の任期が終わり、4月に市長選が予定されていること。

 砂川市長は勇退をすでに表明しており、ばんえい競馬問題は、次期市長の手に委ねられることになる。新市長が、ばんえい競馬存続に大きな役割を果たした砂川現市長の意思を受け継ぐ人であることを願うしかないが、どのような候補者が名乗り出てくるものか、今の段階ではまだ何も分からない。

 ところでばんえい競馬と言えば、もうひとつ、年明け9日より「5重勝馬券」の発売が始まっている。

 まだネット販売のみで、1日当りの発売金額も200万円~300万円にとどまっており、「キャリーオーバーで最大2億円の配当」まで膨らむ可能性があるものの、現時点ではそれに遠く及ばない。とてもまだ「売り上げに貢献する」レベルとは言い難く、今後の発売状況を見守るしかないのだが、果たしてこの新種馬券にどの程度の期待をかけて良いものか。

 8~12レースまでの5レースの優勝馬を予想するのは相当至難の業だが、実際にはコンピュータがランダムに買い目を決定してくれる。

 しかし、想定していたよりもずっと高い確率で的中馬券が出ており、キャリーオーバーを何度も繰り返してどんどん金額が膨らんで行く展開にはまだなっていない。この馬券の最大の魅力は、的中が出なければ出ないほど、キャリーオーバーによって配当金が膨大なものになる点である。10頭立てのレースが5つで確率10万分の1になる。2億円の配当が実現するまでキャリーオーバーを続けるのはおそらく無理だろうが、せめて1000万円程度は欲しいところだ。ともあれまだ始まったばかり。今後の展開に注目したいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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