2010年01月26日(火) 00:00 0
1月27日(水)、新ひだか町静内の北海道市場にて、(株)ジェイエス主催による「2010冬季繁殖馬セール」が行われた。
前日の26日は、強い西風が吹き荒れ、各地で地吹雪による交通障害が多発したほどの悪天候だったが、この日は一転して穏やかな好天に恵まれた。市場開場は午前11時。せり開始は午後1時である。
繁殖シーズンを間近に控えた1月に繁殖馬セールを開催するようになってから今回で3年目となるが、北海道市場には多くの生産者がつめかけ、それぞれ目当ての馬を絞りながら積極的に市場に参加していた。
名簿掲載は71頭。当日欠場が6頭いたので上場頭数は65頭である。
前半に受胎馬を固め(1番~26番)、その次に不受胎馬(27番~34番)、そして後半に「未供用馬」が続く。これは、ERVなどの感染を予防する目的で、受胎馬と不受胎馬・未供用馬を接触させないために、こうした明確な区分がされているわけだ。
生産牧場の場合、今春分娩する予定の受胎馬が即戦力である。胎児の種牡馬が何であるかとともに、繁殖牝馬自体の競走成績や繁殖成績および年齢、血統などが厳しく吟味される。その結果、今回最も高額で取引されたのは14番「マンデームスメ」の2050万円(税抜き)であった。上場はホウセイ牧場。落札は(有)ビッグレッドファーム。
同馬は父サンデーサイレンス、母タイムスリップ(その父ブライアンズタイム)という血統背景を持つ芦毛11歳で、クロフネを受胎している。そして、本馬自身が北九州短距離Sをなど特別5勝、計6勝を挙げている
競走成績を残していることも加味されて、この日一番の活発な競り合いとなった。
最終的に65頭が上場され42頭が落札、売却率は64.62%と昨年の実績(44頭中24頭落札で54.5%)を上回ったものの、価格はやや低迷し、総売り上げは8970万1500円(税込み)に止まった。(昨年は1億1716万9500円)
マンデームスメこそ2050万円まで上昇したものの、それ以外に1000万円を超えた取引馬はおらず、全体的に価格は落ち着いていた。
むしろ36頭を数えた未供用馬の健闘が目立つ市場でもあった。不受胎馬を含め区分としては「空胎馬」にカウントされているが、不受胎馬が6頭中3頭の落札で、価格がいずれも30万円未満で推移していたのと比較すると、未供用馬は36頭中26頭が落札されており、中でも社台グループからの上場馬の人気が高かった。
流石に本馬自身も競走成績を残しているような馬こそ上場されなかったが、母系のブラックタイプがほとんど“真っ黒”な(太いゴシックが多いということである)上場馬には人気が集中した。
未供用馬で最も高額だったのは35番「ネイチャートレイル」の700万円(税抜き)。落札は同じく(有)ビッグレッドファーム。
この馬は、父フレンチデピュティ母ハッピートレイルズ(その父ポッセ)の6歳栗毛で、安平町ノーザンファームの上場馬。競走成績は中央入着の後北海道公営で2勝したに過ぎないが、兄姉にシンコウラブリイやタイキマーシャル、ハッピーパスなどが揃う名血である。
なお、昨年は落札馬の平均価格が488万円に達したが、今年はやはり改めて振り返ると、213万5750円と、いきなり半減以下まで落ち込んでいる。上場馬の質の問題もさることながら、これは生産者の財布の紐が確実に固くなっていることの表れであろうか。
最後にもうひとつ。15番「ハッピーバースディ」という繁殖牝馬が上場されたが、この馬の最終種付け日は何と2月25日となっていた。
つまり出産予定日は1月25日と設定される。市場開催日は27日である。見たところすぐには生まれそうにない雰囲気だったのでやや安心したが、いささか驚かされたのも事実だ。たぶん例年出産日が予定日よりも遅れる傾向にある馬なのだろうが、日付だけを見る限りではギョッとさせられる。この馬は残念ながら「主取り」であった。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。