犬と馬

2010年01月30日(土) 00:00

 先週、オーストラリアの競馬を観戦してきました。今回訪れたのは、西海岸パース郊外のピンジャラ(Pinjarra)という町にあるトロット(繋駕競走)の競馬場と、同じ町にある平地競走の競馬場です。

 16日のウイニング競馬終了後に日本を発ち、22日に戻ってきたのですが、現地に着いた早々、いきなり20年ぶりという猛暑に見舞われました。パースの最高気温は43度近くまで上昇! なんだかオーストラリアにいるというより、ドバイに来ちゃったんじゃないかと思うほどでした。

 そんな猛暑でも昼間から競馬をやってるんです。現地の方に聞いたところでは、メルボルン周辺の競馬場では、気温が40度を超えると即、開催中止になるそうですが、時折そういう猛暑に見舞われる西オーストラリアでは、厩舎に馬の体を冷やす(冷たい霧を噴射する)装置を設けるなどの対策を講じているので、猛暑による開催の中止はほとんどない、とのことでした。

 でも、馬はいいとして、外で競馬を観戦している人間にとっては、耐え難い暑さですよ。ピンジャラのトロットの競馬場では、馬券の窓口や飲み物の売店などがある建物の屋根に水を流して冷やしていましたが、まぁハッキリ言って「焼け屋根に水」。私は、冷えたビールでノドを冷やして何とか持ち堪えることができました。

 さて、ピンジャラでの競馬観戦の帰り、パースに泊まってカジノに立ち寄ったのですが、そこに「TRACKSIDE」なるゲームがありました。これ、一言で言えば、「バーチャル版・競馬&ドッグレースゲーム」。コンピューターグラフィックスによる競馬、繋駕、ドッグレースが、約5分おきに発走、それぞれのレースで単勝、複勝、馬(犬)複、3連単が発売されています。

 レースはすべて12頭立て。オッズは1番の馬(犬)=1番人気が単勝4倍、複勝1.6倍、2番の馬(犬)=2番人気が単勝5倍、複勝1.8倍、12番の馬(犬)が単勝22倍、複勝6.6倍というふうに、どのレースも同じ倍率。馬(犬)複の倍率は、最低(1番と2番が1、2着になったとき)が9倍で最高(11番と12番が1、2着になったとき)が248倍、3連単では、最低(1着1番、2着2番、3着3番)が106.5倍、最高(1着12番、2着11番、3着10番)が10116倍に設定されています。

 なにしろコンピューターグラフィックスが相手ですから、出目を考える以外にレースを予想する手だてはありません。なので、好きな番号で賭けるか、「GOOD-LUCK馬券」の「すべてお任せ」のようにコンピューターに買い目を選んでもらうわけです。競馬やドッグレースの形で行われる「宝くじ」のようなものですね。

 各レースでどの馬券がいくら売れているかにかかわらず、倍率が固定されているなんて、よく考えてみるとかなりうさんくさいゲームです。だって、こういうゲームは、賭けの「胴元」が取りあえず損をしないようになっているんですから。いったいこのコンピューターはどのようにプログラミングされているんでしょう? そんな疑問は感じながらも、取りあえず賭けてみました。まず様子見で買ってみたのが、コンピューターに買い目を選んでもらう「ミステリーベット」での単複同額買い。1点50セント(約43円)で10レース連続、計10ドルを買ったんです。

 そうしたら出てきた馬(犬)券が、なんと1番の馬(犬)の単複。そう、1番人気、最低倍率の馬だったんです。単勝4倍、複勝1.6倍ということは、1レース当たって2.8ドルの払い戻し。したがって、10レース中4レースで1番が勝ってくれないと儲かりません。案の定、私が買った10レースの中で、1番の馬(犬)は1勝3着1回で、3.4ドルしか戻ってきませんでした。なんともつまらない賭けになっちゃいました。

 「それなら」と次に買ったのは3連単。これも「ミステリーベット」で1点50セントの3頭ボックスを連続5レース分、計15ドル買ってみました。すると、3番、7番、11番の組み合わせが出てきたんです。これは、1つでも当たれば大儲け、もし11番が頭に来れば、おそらく1000倍以上にはなるはず、というもの。間違えて当たっちゃわないかな、と思いながら、コンピューターグラフィックスの画面を見つめ続けました。

 で、結果は? もうみなさんもご察知のとおり、3番も7番も11番もサッパリでした。こんな「宝くじ」がそんなに簡単に当たるわけないですよ。まぁ「ダメもと」で少額を賭けただけですから、真剣に予想して勝負した馬券がハズレたときほどはガックリ来ませんでしたが…。

 この「TRACKSIDE」というゲーム、メルボルンのカジノにもありましたから、オーストラリアのカジノではあちこちでやっているんでしょうね。これをやるかやらないかは、競馬ファンでも意見が分かれそうです。でも、日本ではゼッタイあり得ないギャンブルゲームなので、もしオーストラリアのカジノに行く機会があったら、挑戦してみてはいかがでしょう。ただし、ハズレても熱くならないくらいの、ほどほどの金額でお楽しみください。

 ところで私、日本に帰ってきてからも、たびたび「オッズパークロト」を買っているんですが、一度だけばんえいで最初の3レース的中というのがあっただけで、あとは全然当たらないんですよ。これも、そう簡単に当たるとは思っていないんですが、一方で、ひょっとしたら当たっちゃうかも、という期待も抱いているんですけどね…。あぁ、当たった人がウラヤマシイ!

 でも、ここまで書いておいて、もし本当に当たっちゃったら、「当たった」って書かなきゃいけませんか? 「そんな心配、するだけムダ。どうせ当たらないから」ですって? それもそうですね。では、今回はこのへんで。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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