2010年02月27日(土) 00:12
世界最新のメイダン競馬場に舞台を移して行われる今年のドバイワールドC。その開催まで、あと約1か月となりました。今度の木曜日(3月4日)には、前哨戦を集中的に実施する「スーパーサーズデー」が開催されます。メインのアルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3出走に向けて、ウオッカとレッドディザイアは順調に調整されているようです。ぜひいい成績を挙げて、本番を目指してほしいですね。
さて、メイダン競馬場では、1月28日のオープンから2月25日までの間に、あわせて7回の競馬開催がありました。新しく導入されたオールウェザー(タペタ)トラックのレースでは、ここまでどんな馬が好成績を残しているんでしょうか。27日のウイニング競馬(BSジャパンの放送枠)で、そのことについてお話ししましたが、せっかくですから予習として調べた結果をここでご紹介しましょう。
次の表1は、今年これまで、メイダンのオールウェザートラックで行われたレースの距離別勝ち時計と、昨年のスーパーサーズデー(09S.T)とドバイワールドCデー(09DWCデー)に行われたレース(ナドアルシバ競馬場ダートコース)の距離別勝ち時計を一覧にしたもの。表2は、今年ここまでの勝ち時計上位2頭の主な実績(各馬のオールウェザー実績は、好タイムで勝ったレースに出走する前までの成績。左から出走回数、1着、2着、3着の回数)をまとめたものです。
※表1
※表2
まずは表1をご覧ください。これを見ればおわかりのとおり、2月11日以降は、2月5日までに比べて約2秒ほど勝ち時計が速くなっています。また、2月11日以降の勝ち時計は、去年のスーパーサーズデーのレースでマークされたものとほぼ同じ水準になっています。
先週の週刊競馬ブック(秋山響さんの『海外競馬PLUS』)に、タペタトラックを開発したマイケル・ディッキンソン氏の話が載っていましたが、それによると、タペタトラックは「時計の出やすい馬場にも出にくい馬場にも、要望に沿うかたちで自由自在に調節できる」とのこと。表1のタイムを見る限り、2月5日と11日の間に、去年、ナドアルシバ競馬場のダートコースで出されたタイムを基準に、何らかの馬場調整が行われたと思われます。
ここから推測すると、馬場状態が今のままなら、出走馬のレベルが上がるスーパーサーズデーやドバイワールドCデーには、去年並みかそれ以上の速いタイムがマークされそうです。
次に表2。では、どういう馬が好タイムで勝っているんでしょうか。一目瞭然なのが、どこかでオールウェザートラックのレースを経験している馬、ということ。前走、メイダン競馬場で初めてオールウェザーを経験した馬も含めて、これには例外がありません。メイダンでの初戦を勝ったか負けたかは関係なし。むしろ、Leahurstが勝った1月28日のレースに出ていた馬が、その後に好タイムをマークしているのがわかります(Sirocco BreezeとLucky Find)。また、芝未経験あるいは未勝利の馬よりも、芝で実績のある馬のほうが過半数を占めています。
ということは、Midshipmanのような、オールウェザーのGI戦を制したほどの馬だったら、好走できること間違いなし。そこまでの実績がなくても、芝で優秀な成績を収めていれば好結果を残せるはず、と考えていいでしょう。
ところで、これで、メイダンのオールウェザーコースにダートの強豪が出てきても、芝向きの馬にかなわない、ということになったら、芝とオールウェザーを併設した意味がなくなりはしないんでしょうか。エスポワールシチーが遠征回避を決めた理由に、「メイダンのオールウェザーコースは芝馬向きだから」というのがあったでしょう? 同じようなことを、ダートの本場・アメリカの関係者が考えたっておかしくないわけです。
それはそれとして、4日に行われるアルマクトゥームチャレンジ・ラウンド3で、ウオッカとレッドディザイアはどんな成績をあげるでしょうか。両馬ともに芝での実績は十分なだけに、走破タイムも含め、そのパフォーマンスには世界が注目していると言っても過言ではありません。それによって、メイダン競馬場のドバイワールドCを狙える馬のイメージが出来上がってくると思われるからです。
その意味からも、ウオッカとレッドディザイアには、今の両馬にとってのベストなパフォーマンスを披露してもらいたいと思います。実は私、それを見に行く予定です。来週は、スーパーサーズデー観戦記を書かせていただくつもりですので、どうぞお楽しみに。
さて、今週はここでもう1つお知らせを。クラブ法人の「シルクホースクラブ」が、ばんえい競馬の一口ファンドを始めることになったそうです。
新年度(4月以降)にデビューする予定の2歳馬の中から1、2頭をクラブが買い付け、中央・地方競馬で行っている競走馬ファンド販売と同じ方法で会員募集するというもの。ばんえい競馬では、これまで共同馬主制度を利用してグループ所有された馬はいましたが、クラブ法人が競走馬所有に乗り出すのは初めてのことです。
簡単に言うと、シルクの会員になれば、ばんえい競馬の一口馬主になれる、ってこと。この動きがもっと広がっていけば、馬主の“ばんえい離れ”に歯止めがかかるかもしれません。これは期待したいですね。興味のある方は、シルクホースクラブにお問い合わせください。
では、また来週!
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。