2010年03月13日(土) 23:50
今回は、前回に引き続き「ドバイ・スーパーサーズデー観戦記」。結局、あの日のアル・マクトゥームチャレンジ ラウンド3が、ウオッカの最後のレースになっちゃいましたね。負け方があまりにもよくなかったので、前回のコラムには「ちょっとガッカリ」と書きましたが、「ことによると何かあったのでは」という心配もしていたんです。引退のニュースを聞いたときは「あぁ、やっぱり」と思いました。でも、本当によく走ってくれた馬です。フツウなら日本で引退式なんでしょうが、直接アイルランドに渡って繁殖生活に入るというのも、“希代の名牝”らしい斬新な進路。しかも、最初の“お相手”がシーザスターズなんて。ありきたりのセリフですが、どんな仔が産まれるか楽しみにしましょう。
さて、今回の「スーパーサーズデー観戦記」は、当コラム連載開始以来初の写真付きです。当日、第1レースの発走時刻は午後6時55分でしたので、夕方5時半過ぎに、近くのドバイモールからタクシーで競馬場に向かいました。ドバイモールは、今年1月にオープンした世界一高いビル、バージュ・ハリファに隣接して作られた巨大ショッピングモール。ちなみに、バージュ・ハリファの展望台は、エレベーターのトラブルのため開業後間もなく閉鎖され、再オープンも未定となっています。
競馬場の周囲には、何もありません。
競馬場へのアクセス道路や立体駐車場は未完成。そこらじゅうが工事中です。メイダンシティの完成予想図(※注1)には、競馬場を取り巻くクリーク(運河)、花壇や噴水で彩られたペデストリアンデッキなどの様子が描かれていますが、それらが完成するのはかなり先の話。さらに、競馬場周辺の大規模開発プロジェクトが完了して、馬の顔の形をくりぬいたビルのあるゴドルフィンパークス(※注2)や高層ビルが林立するホライズンズ(※注3)などが完成するのはいったいいつになるのか、というより、本当に完成させられるのか、見当も付かない状態です。
とはいえ、取りあえず競馬場のスタンドとコースだけは、レースを開催できる態勢を整えて出来上がりました。
私が入場したのは、1人75AED(ディルハム。1AED=約25円。スーパーサーズデー以外の通常開催日は50AED。ドバイワールドCデーは800〜1200AED!)のプレミアムシーティングエリア。ワインやビールなどアルコール類の売店もある外国人向けの特観席で(アラブの人たちは宗教上の理由でアルコールを口にしません)、チケットはオンラインで購入、追加料金を払って日本に送ってもらい受け取りました(当日、競馬場正門前のチケットブースで受け取ることもできます)。ゴールから約100〜200mほど手前、右手下にパレードリング(=パドック)、正面に巨大ターフビジョンが見えて、ちょっと低い位置ですが、競馬を観戦するにはそこそこいい席です。
競馬場の内馬場も、周辺同様まだ造成中。去年まで使っていたナドアルシバ競馬場の内馬場にはゴルフコースがあり、コースの周辺は椰子の木で彩られていて、スタンドからは箱庭を見るようような眺めが楽しめたのですが、メイダンはまだまだ殺風景な感じでした。
その代わり、観客の目を楽しませてくれるのが、前回もご紹介したターフビジョンの映像です。レース中は実写とCGで各馬の位置取りや200mごとのラップタイムを表示。
レース後は、実写のリプレイに加え、CGで勝ち馬のコース取りの跡や騎手目線の再現映像などが映し出されます。
これぞまさに世界最先端。今回の競馬観戦で一番印象に残ったのはこの映像サービスと言ってもいいくらいです。
プレミアムシートの座席の裏に色の変わるライトが仕込まれているのもユニーク。
階下のフロアにはフードコートもありました。でも私は、競馬場に行く前にドバイモールのレストランでしっかり食事を済ませていたので、今回は眺めただけ。だからというわけではありませんが、このフードコートにはモニターテレビが一台もなく、外も見えないので、ここで食事をするのはハッキリ言ってつまらないと思います。
まぁとにかく、スタンドは立派。
オープンしたばかりなので、当然ながら場内はどこもピッカピカに輝いています。
宗教上の理由で馬券を発売していないので、ハズレ馬券やマークカードはもちろん、読み捨てられた競馬新聞が散らばっていない(予想紙は一切なし。レーシングプログラムがあるだけ)のも、場内がきれいに見える理由のひとつでしょう。
まだまだ“間に合わせ”でオープンさせちゃった感じの競馬場ですが、民族衣装を身につけた競馬場の関係者が私に話しかけてきて、「来年はもっとよくなる」と自信満々に語っていました。彼らはあくまで強気のようです。
ひとまず、今回の「スーパーサーズデー観戦記」というか「メイダン競馬場探訪記」は、ここまでとさせていただきます。順調に工事が進めば、毎年バージョンアップされていくはずのメイダン競馬場。その変わりゆく姿を、また見に行きたいものです。
おしまいにお知らせ。東京・銀座のキャノンギャラリーで、写真展「ばんえい競馬『光と砂』」が開催されています(17日まで。※注4)。能楽写真家の太田宏昭さんが、ばんえい競馬に魅せられて3年にわたって帯広競馬場で撮影してきた写真の中から、選りすぐりの秀作を展示。私も拝見させていただきましたが、ばんえい競馬のファンならどれも我が家に飾っておきたくなる、すばらしい作品ばかりです。このあと、4月1日〜13日は札幌、5月13〜19日は大阪・梅田の同ギャラリーでも開催されます。みなさん、ぜひご覧ください。
では、また来週!
※注1【メイダンシティの完成予想図】 http://www.meydan.ae/racecourse/gallery.asp
※注2【ゴドルフィンパークス】 http://www.meydan.ae/godolphin-parks/
※注3【ホライズンズ】 http://www.meydan.ae/horizons/
※注4【キャノンギャラリー】 http://cweb.canon.jp/gallery/index.html
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。