第42回ばんえい記念

2010年03月31日(水) 12:00

 ばんえい競馬最大の祭典である「ばんえい記念」が去る3月28日(日)、帯広競馬場にて行われた。

 今年で数えて42回目。他の開催日には来られなくても、この日だけは帯広に足を運ぶファンも多い。

 前日夕刻から帯広は降雪に見舞われたが、ばんえい記念当日は朝から晴れ、終日好天に恵まれた。ただし、気温は例年より低めで、太陽が出ているにもかかわらず、最高気温はかろうじて+になった程度。そのために、来場者はほとんどの人が防寒着に身を包み、レースの合間にはスタンド内部で過ごす姿が目立った。

 開門は午前9時40分。午前中の早い段階で競馬場入場門の東側駐車場は満杯となり、白樺通りを挟んだ向かいの空き地に設けられた駐車場へ誘導される車が増えてきた。

 この日は全12競走が組まれたが、全てが「協賛レース」となっており、サッポロビール、北海道新聞社や地元の十勝毎日新聞社、日通旅行社、オッズパークなどの民間会社と関係団体の名前が連なる。

 メーンの「第42回ばんえい記念」は1着賞金500万円。4歳以上オープンによる混合戦で、10頭により行われる。本賞金の他、生産者賞も交付されることになっており、1着30万円、2着20万円、3着10万円という配分である。

 この日は午前中からある種のお祭りムードが漂っていた。前日と比較すると、明らかに遠くからやってきたと思しき来場者の姿が目立った。エキサイトゾーンには、カメラ片手に声援を送るファンが大勢いて、こういう風景を見る限り、ばんえい競馬が根強い人気に支えられているように見える。

帯広競馬場群集 

 第6レース終了後、パドック横で「ばんえい記念、馬券検討トークショー」が行われた。いつもならば須田鷹雄氏の姿が見えるのだが、今回はドバイ遠征のため不在。須田氏に代わって、浅野靖典氏と古林英一氏、そしておなじみの矢野、小枝両アナウンサーの4人によってレース展望を行った。

トークショー 

 第7レース終了後には、恒例の「ばんえい記念騎乗騎手」の紹介とインタビューが、スタンド正面にて行われた。矢野吉彦アナウンサーが1人ずつ紹介しながらインタビューして行く形式で、10人がそれぞれ抱負を語った。

出走騎手紹介 

 華やいだ雰囲気に一役買ったのが、レース毎にパドックにプラカードを持って現れる「ラウンドガール」たち。地元で選ばれた「十勝青空レディ」がこの役目を務めた。

ラウンドガール 

 また、メーンのばんえい記念には、正装した女性が誘導馬に跨って登場し、観客の注目を集めた。

誘導馬 

 陸上自衛隊第5音楽隊による生演奏で、ばんえい記念出走各馬がパドックから出走地点へと向かう。西に傾いた太陽が雲間に沈んだ午後5時15分。いよいよ生演奏によるファンファーレが鳴り響き、ゲートが開いた。

 レースは真っ先に第二障害を上り切った6番ニシキダイジンが、続く5番カネサブラックや10番ナリタボブサップと熾烈な争いを演じてゴールイン。6番人気だったことから単勝は3550円の高配当となった。

 騎乗した藤野俊一騎手はこのレース通算5勝目、同馬を管理する金田勇調教師は初勝利である。

ばんえい記念レース風景 

ニシキダイジン関係者 

口取り 

 この日の帯広は、入場人員が3532人。売上げ1億5187万3900円と、目標額はクリアした。しかし、翌29日(月)で2009年度の開催を終えた時点でのトータルでは、150日で107億3613万7400円(1日平均7157万円)。入場人員も20万176人(1日平均1334人)といずれも前年より約7%の減少となった。

 2010年度は4月24日より開幕するが、折から帯広市は、この春に市長選を控えており、すでに砂川敏文現市長は勇退を表明している。

 帯広市単独でのばんえい競馬存続の立役者であった砂川市長の後を誰が継承するのか、そして、市にとってばんえい競馬とはどのような存在なのかが問われる一年になりそうだ。

 ばんえい競馬を運営するオッズパークばんえいマネジメントの新名貴之社長は「帯広市が明確にばんえい存続の態度を表明してくれることを期待している。厩舎関係者の不安感を取り除き、未来に希望が持てるような見通しが欲しい」と語る。

 ばんえい競馬を支えるのはまず地元の方々であり、帯広市なのである。

「私たちは民間会社ですから、いつまでも赤字を垂れ流すわけには行かないのです」という新名氏の言葉は重い。ともあれ、帯広市単独開催となってからこれで丸2年が経過したが、2010年度はいよいよ待ったなしの正念場となることだけは間違いあるまい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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