2010年03月31日(水) 00:00
世の中のすべてのものは、常に変化し、一時もとどまることはない。明日に何が起こるか分からないし、厳密に言ったら、この次の瞬間だってどうなるのか、確たる保証は何もない。これが世の中というもの。だから、一度一度の出会いを大切にと、教えられてきた。
茶道の世界に「一期一会」という言葉があるが、一生涯で一度かぎりの集まりと分かっていたら、自ずと心構えはできてくる。そうは思わないから、この言葉を大切にと教えてくれているのだ。
世の中には、「まさか」ということが起こり、それによる動揺が起こる。覚悟ができていればいいが、多くは突然やってくる。いつも同じようにと期待しても、そうはいかないこともある。勘違いしているのではなく、本当にそう信じているから、そのときの落胆は大きい。いくら「一期一会」を大切にと分かっていても、これはどう仕様もない。ただただ残念と思うしかなく、気を取り直すのに時間がかかるのだ。
こういう経験は、手近なところでは、目の前の競馬でよく起こる。競馬の記憶を手繰っていくと、ひとつやふたつ、こういうシーンを思い出すものだ。むしろ、これが競馬と言ってもいいだろう。万事、描いたとおりにはいかない。ひとつの王道を突き進んでいくには、幸運なくしては有り得ないのだ。多くがそうではなく、期待が大きければ大きいほど、「まさか」の繰り返し。何度も気を取り直しては、再チャレンジできるのは少ない。
こうした戦いを続ける中、人の思い、と言うより人の願いが、どんなにもてあそばれていることか。大きな目標を立てれば立てるほど、その道のりは険しい。「まさか」を乗り越えた強さが優るのか、たったひとつの王道を突っ走ってきた主役が、その瞬間、大歓声の中心にいるのか。その場面も「一期一会」と思えば、心して立ち会うべきなのだろう。今年も、そうした春がやってくる。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。