ランフォーローゼスも本番まであと4週間

2010年04月06日(火) 23:59

 ランフォーローゼスも本番まであと4週間となった先週末(4月3日)、現時点で戦線の「2トップ」となっている2頭が、それぞれの本拠地で前哨戦に登場。結果は、明暗が分かれることになった。

 ニューヨーク州のアケダクトで行なわれたG1ウッドメモリアルS(ダート9f)で、単勝1.5倍の支持を受けたのが、トッド・プレッチャー厩舎のエスケンデレヤ(父ジャイアンツコーズウェイ)だ。

 昨年9月、サラトガの芝のメイドンでデビューし2着に敗れた後、ベルモントパークの芝の特別ピルグリムSに参戦。悪天候で芝コースが使用不能になり、ダート変更になったこのレースを、7.1/4馬身差で制して初勝利を挙げた。続いて強気にBCジュヴェナイルに駒を進めたものの、ここは9着に大敗。ただし力不足だったわけではなく、舞台となったサンタアニタのオールウェザーが合わなかったことが、後になって判ることになる。

 3歳初戦となったガルフストリームのアロウワンス(ダート8f)で2勝目を挙げた後、同じガルフストリームで2月20日に行なわれたG2ファウンテンオブユースSに臨み、前走G3ホーリーブルS・2着という実績があったジャクソンベンド(父ヒアノーエヴィル)に8.1/2馬身という圧倒的な差をつけて重賞初制覇。勝ち時計も1分48秒87という優秀なもので、106という高いベイヤー指数を獲得するとともに、ダービーを狙う有力馬の座に浮上した。

 ウッドメモリアルでの相手は、前走アケダクトのG3ゴーサムSを制して重賞初制覇を果たしていたオウサムアクト(父オウサムアゲイン)、フォンテンオヴユースで2着に退けたジャクソンベンドらだったが、オッズが示すようにエスケンデレヤから見れば明らかな格下。結果も、再び2着となったジャクソンベンドに9.3/4馬身の差をつけるという圧勝で、自身2つめの重賞を手中にした。

 いずれも2着馬に大きな差をつける圧勝で、東海岸の主要プレップを連勝したエスケンデレヤ。エクリプス賞受賞4度という大御所ながら、ケンタッキーダービーには縁のないトッド・プレッチャーが、遂に薔薇の肩掛けを手にするか?!。レース翌日、エスケンデレヤはフロリダ州パームメドウズに戻り、本拠地で2週間ほど調整された後、4月20日前後に決戦の地チャーチルダウンズに乗り込む予定になっている。

 一方、同じ4月3日にカリフォルニア州のサンタアニタで行なわれたG1サンタアニタダービー(オールウェザー9f)で、単勝1.8倍の1番人気に推されたのが、ボブ・バファート厩舎のルッキンアットラッキー(父スマートストライク)である。

 2歳時の戦績6戦5勝。5勝のうち4つが重賞で、うち3つはG1。唯一の敗戦が、大外枠に泣き、追い込み切れずに頭差の2着に泣いたG1BCジュヴェナイルという同馬。この実績で、管理するのがダービー3勝のボブ・バファートなら、ランフォーローゼスで圧倒的支持を集めて不思議ではなかったのだが、実際はそうでもなかった。ご承知のように、カリフォルニアの主要競馬場はどこもメイントラックがオールウェザーで、本拠地から出たことのなかったルッキンアットラッキーは、2歳シーズンが終わった段階で「ダート未体験」だったのである。

 ダートを走ったことのない馬を、ダービーで本命視するわけにはいかないというのがファンの本音だったのだが、そのあたりは百も承知のバファート。ルッキンアットラッキーの3歳初戦に選んだのが、3月13日にアーカンソー州のオークローンパークで行なわれたダート8.5fのG2レベルSで、ここでルッキンアットラッキーは、ウェイン・ルーカス厩舎の期待馬ダブリン(父アフリートアレックス)、西海岸のナンバー2的存在でやはりダート初体験だったノーブルズプロミス(父クヴェー)ら、それなりに骨っぽい馬たちを相手に快勝。ダートもこなせることを証明するとともに、アウェイでの戦いにも対応出来ることを示し、ダービー戦線の大黒柱と目される存在となった。

 そのルッキンアットラッキーの、ダービー前の最後の試走となった、G1サンタアニタダービー。再び地元に戻り、コースは走りなれたオールウェザーで、ここは無事に通過と誰もが思ったのだが?!。

 なんと結果は、今季に入ってカリフォルニアでG2サンヴィセンテSとG2サンフェリペSを連勝し、2番人気に推されていたシドニーズキャンディ(父キャンディライド)に、6馬身も遅れをとる3着に敗れたのである。

 ただし、ルッキンアットラッキーには、勝負どころの3コーナー過ぎで、大きな不利があった。好位に付けていたルッキンアットラッキーが、内埒沿いに進出を開始したところ、外にいたフーズアップの幅寄せに合い、弾かれるように大きく後退したのである。

 立て直して追い込んだものの、スローペースに落とし込んで逃げたシドニーズキャンディは遥か先。ルッキンアットラッキーは3着まで盛り返すのが精一杯だった。

 アクシデントは審議の対象となり、着順に変更なしとの裁定が下ったのだが、これに収まらなかったのがルッキンアットラッキーのギャレット・ゴメス騎手だった。引き上げた後の騎手ルームで、押圧してきたフーズアップのエスピノーザ騎手に詰め寄り、居合わせた騎手の談によれば、押し問答と「とても活字には出来ない」汚い言葉の応酬の後、ゴメスのパンチが少なくとも一発はエスピノーザを痛打したという。翌日、両騎手のヒヤリングが行なわれ、ゴメスには750ドルの罰金が課せられた一方、エスピノーザにも3日間の騎乗停止処分が下された。

 幸いだったのは、アクシデントに見舞われたルッキンアットラッキーに、ケガがなかったこと。この後は1週間ほど本拠地で調整を積まれたのち、4月12日前後にチャーチルダウンズに入る予定とのことだ。

 現状ではおそらく、ケンタッキーダービーの本命はエスケンデレヤになるのであろう。だがエスケンデレヤの独走を、「ダービー・ボブ」の異名をとるバファートが手をこまねいて見過ごすとも思えず、2トップの序列はいまだ横並びというのが、筆者の見方である。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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