大本命馬回避で風雲急

2010年04月27日(火) 00:59

 いよいよ今週土曜日に迫ったG1ケンタッキーダービー(ダート10F、チャーチルダウンズ)だが、ここへきて風雲急を告げることになった。本命視されていたエスケンデレヤ(牡3、ジャイアンツコーズウェイ)に故障が発生し、回避することになったのである。

 24日(土曜日)に予定されていた最終追い切りを行なわなかった時点で「何かあったのではないか?!」との噂は駆け廻っていたのだが、翌25日(日曜日)に管理調教師トッド・プレッチャーが会見を開き、出走を断念することを明らかにした。プレッチャー師によると、エスケンデレヤの左前脚の球節から膝にかけてわずかな腫れがあり、軽度ながらハ行も見られるという。原因がどこにあるかは、獣医師による更なる診断を仰がねばならないが、リスクをおかすには危険過ぎるとして、治療に専念することになったものだ。

 2歳最終戦のBCジュヴェナイルでは大敗を喫したものの、今年に入ってからは3戦負け知らずで来ていたエスケンデレヤ。ことにここ2戦は、2月20日のG2フォンテンオヴユースS(ダート9F、ガルフストリームパーク)が8.1/2馬身差、4月3日のG1ウッドメモリアルS(ダート9F、アケダクト)が9.3/4馬身差と、2着以下に圧倒的な差をつけて重賞を連勝。ケンタッキーダービーでは被った1番人気になることが予想されていただけに、ファンの間には衝撃が走っている。思い起こせば1年前も、重賞連勝中で1番人気が予想されていたアイウォントリヴェンジが、故障発生で出走を取り消しており、ケンタッキーダービーは2年続けて直前で本命馬を失うことになった。

 エスケンデレヤの回避で、代わって本命の座に就きそうなのが、昨年の2歳チャンピオン・ルッキンアットラッキー(牡3、父スマートストライク)だ。今季初戦となった3月13日のG2レベルS(ダート8.5F、オークローンパーク)を快勝。6戦5勝、2着1回という圧倒的な成績で2歳王者に選出されながら、西海岸所属でオールウェザートラックしか経験がなかったため、ダービー戦線の主役としては全幅の信頼を置かれていなかった同馬だが、初めてのダートを克服したこの時点で、前売り1番人気の座に浮上した。

 ところが、直前プレップとなった4月3日のG1サンタアニタダービー(オールウェザー9F、サンタアニタ)で、ルッキンアットラッキーは3着に敗退。勝負どころの3コーナー過ぎで進路が狭まる不利があったものの、勝ち馬シドニーズキャンディ(牡3、父キャンディライド)に6馬身もの遅れをとる完敗で、この段階では再びダービー本命の座から滑り落ちたのである。

 関係者の間には、サンタアニタダービーを快勝して重賞3連勝を飾ったシドニーズキャンディを、ダービーの最有力候補に挙げる声もある。だが、一度ダートを経験しているルッキンアットラッキーと違って、シドニーズキャンディのここまでの6戦は全てオールウェザーだ。結局のところ、26日(月曜日)に無事最終追い切りを消化したルッキンアットラッキーが、オッズ4倍前後で1番人気になるというのが、大方の見るところである。

 3番手以下は、更に大混戦だ。チャーチルダウンズのオッズメーカーは、初ダートとなった3月6日のG3ゴーサムSを快勝した英国調教馬オウサムアクト(牡3、父オウサムアゲイン)を3番手評価としているが、デイリーレイシングフォームにおける同馬は9番人気と、伏兵の1頭に過ぎない評価だ。

 先週後半からチャーチルダウンズ一帯は雨が続いており、道悪巧者が浮上する可能性もある。

 近年にない乱戦となりそうなケンタッキーダービーの行方に注目したい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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