データ予想かサイン予想か?

2010年05月08日(土) 12:00

 先週の天皇賞、またまた“都市名サイン馬”が来ちゃいましたね。2着のマイネルキッツ(津市=三重)ですよ。「ツ、なんて、そんなのいっぱいいるだろう」って?いやいや、前にも書いたように、小さい「ッ」ではダメ。ところが、大きい「ツ」が付く馬は、フェブラリーSから皐月賞までは1頭も出てこなかったんです。今年のGIに初めて出走した「ツ」の付く馬が2着に来たわけです(もう1頭のベルウッドローツェはサッパリでしたが)。

 今週のNHKマイルCには、ダノンシャンティ(シャンティ=フランス・パリ郊外の競馬場で有名な町)とサンライズプリンス(伊豆市=静岡)、ニシノメイゲツ(またも津市)、それにモンテフジサン(富士市=静岡)が出てきました。キンシャサノキセキ、ヴィクトワールピサと1戦おきに“外国都市名サイン馬”が優勝。“国内都市名サイン馬”はオウケンサクラ、ヒルノダムール、マイネルキッツと3戦続けて2着どまり。となると、今回はダノンシャンティが1着、サンライズプリンス、ニシノメイゲツ、モンテフジサンのどれかが2着で決まりでしょうか?

 ちなみに、サインのネタ元・Y氏は「“サイン馬”の同枠馬も要注意」と言っているんですが、そこまでは手を広げられませんよね。Y氏には、トシギャングスター(都市)はどうなのか、聞いてみたいところでもあります。

 それはさておき、私がマジメに(?)考えたNHKマイルCの予想は、いつものように「矢野吉彦の競馬日記」でご披露しています。その中に「過去10年のデータをもとにふるいにかけたら」と書いたように、私のGI予想は最近10年間の傾向をかなり参考にしています。

 教科書は、『週刊競馬ブック』の「データカプセル」というコーナー。これに、自分で探し当てた傾向を付け加え、「こういうパターンの馬は来るかもしれない」、「こんなパターンの馬は来た例がない」ということを考えていきます。

 今回のNHKマイルCで言うと、「4着以下に負けたことが5回以上ある馬」、「GI以外のレースで6着以下が2度以上あった馬」や「前走が皐月賞、桜花賞、ニュージーランドT、毎日杯、スプリングS以外のレースで負けていて、重賞経験のない馬」、「前2走がともに5着以下だった馬」などは、来た例が(ほとんど)ありません。

 また、「毎日杯出走組は、そこから直行した馬しか来たことがない」、「皐月賞からの直行組は、その前のレースと皐月賞までの間隔が3週以上あった馬しか来ていない」、「桜花賞2ケタ着順から巻き返した馬(ピンクカメオだけ)は、東京での勝ちクラがあった」というところまで考えると、かなり絞れてくるんです。

 「競馬日記」の予想には、サンライズプリンス、ダノンシャンティのほか、残るのはエイシンアポロン、ガルボ、コスモセンサー、ダイワバーバリアン、レトと書きましたが、ガルボとコスモセンサーは、GI以外のレースで2度以上、6着以下に負けているので、消しちゃってもいいくらい。そうなると、“5頭の勝負”ってことになるんですけど…。

 データには、それなりの理由があります。負け数や大敗したレースの数が多い馬は、実力、勝負根性などの点で見劣るでしょう。GIともなれば、そこに向かうまでのステップには“王道”、“セオリー”のようなものがあるはずで、そこから外れているようでは苦戦は必至です。

 もちろん、例外の馬が来てしまうこともよくあります。07年3着のムラマサノヨートーは、GI以外のレースで5回も6着以下に負けていました。ただし、そのうちの4回はダート戦。ここを度外視すれば、“消せない馬”になったんですね(後付けの理屈かもしれませんが)。

 06年の2着馬ファイングレインもそう。GI・JpnI以外のレースで2度、6着以下に負けていた馬です。こちらは、それを補えるだけの“買い材料”が見当たりません。ということは、このデータに関しては、例外馬の来る可能性が若干ある、と考えるべきでしょう。そこで今回は、シンザン記念を勝ったガルボとアーリントンCを制したコスモセンサーを例外として残したわけです。

 ネッ、こう見えても、いろいろ考えてるでしょう?でも、データというのは、もっと数多くの積み重ねがあって、ようやく頼りにできるものだと思います。わずか過去10年の傾向だけで、「このパターンは来る」または「来ない」を決めつけるのは難しいですよ。

 例えば野球の「カモと苦手」。去年、A投手とB選手の対戦成績が8打数3安打なら、打率3割7分5厘で「相性がいい」となりますが、8打数2安打だったら2割5分で、「相性は今イチ」と言われてしまいます。たったヒット1本の差なんですけどね。

 つまりこれは、サンプル数が少なすぎるので、相性がいいのか、たまたまなのか、本当のところはわからない、という一例です。競馬のデータ作戦がそう簡単に当たらないのも、サンプル数が少ないからでしょう。また、レースの開催時期や条件などの変更がしょっちゅうあって、傾向を見極めにくい場合もしばしば。だからといって、“データ予想”より“サイン予想”のほうが当たっちゃう、というのもどうかと思いますが、とにかく「データ信ずべし、信ずべからず」です。

 まぁ、今週のNHKマイルCはいいとして、来週のヴィクトリアマイルはどうしましょう?今年で5回目の新しいGIなので、“データ作戦”は難しそう。このままだと、“都市名サイン”を頼りにウェディングフジコ(富士市=静岡)を買っちゃうことになりはしないか、と思って…。

 なにはともあれ、春のGIシーズンがいよいよ佳境を迎えようとしています。馬券の当たりハズレは別として(?)、晴れやかな舞台で繰り広げられる熱戦を大いに楽しみましょう。では、また来週。

地方、ばんえい、さらには海外にも精通する矢野吉彦のJRA・GI予想は「矢野吉彦の競馬日記」へ

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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