ひだかTSリハーサル

2010年05月12日(水) 00:00

 昨年、「北海道トレーニングセール(HBA日高軽種馬農協主催=札幌)と「ひだかトレーニングセール」(ひだか東農協主催=浦河)は5月下旬に2日続けて開催されたが、今年は、前者が従来通り5月25日に予定しているのに対して、後者は6月8日に日程をずらしてきた。

 2週間のタイムラグがどのような効果をもたらすことになるのかは実際に市場を見なければ何とも分からないものの、少なくとも上場馬を管理する育成業者にとっては、昨年のような慌しい移動(札幌→浦河)からは解放されるだろうと思われる。

 すでに上場予定馬も出揃い、名簿が出来上がっている。「北海道トレーニングセール」は現時点で190頭、「ひだかトレーニングセール」は71頭が上場されることになっているが、おらくこれからまた頭数が減ることになろう。

 さて、5月11日。「ひだかトレーニングセール」のリハーサルがJRA日高育成牧場にて午前9時より行われた。全体を3グループに分かち、併走または単走で1600mダートコースの向こう正面からスタート。徐々に加速して行き、4コーナーを回ったあたりからトップギアに入り、最後の1ハロンの走破タイムを計時する。結果はその都度表示され、アナウンスされる。ただし、あらかじめ配布されている調教一覧表からかなり変更があり、分かりにくかった。

 ほとんどの馬が12秒〜11秒台で走り抜ける。それも、間違いなく11秒台の方が多い。しかし、そこからさらにタイムを詰めるのが至難の業で、さすがに10秒台はそうそう簡単に出せない。

(写真・併走のリハ風景) 

 結局、昨年に続いて、今年もまた山口ステーブル(浦河)の上場馬がリハーサル時計で“ワンツー”となった。3グループ目に登場した64番「マーチンミユキ08」(父マイネルラヴ、牡青鹿毛、新ひだか・酒井秀紀牧場生産)が単走で10秒4。

(写真・マーチンミユキ08) 

 続いて登場した65番「マルケイシーマ08」(父マヤノトップガン、牡黒鹿毛、新ひだか・前川隆則牧場生産)が同じく単走で10秒7である。 

(写真・マルケイシーマ08) 

 3番目は10秒8をマークした23番「ケイアイポリスの08」(父ヘクタープロテクター、新ひだか・飯岡牧場生産)育成者は山崎ステーブル。

(写真・ケイアイポリスの08) 

 さらに10秒9マークした47番「ハートフルメロディの08」(父スキャン)が続いた。

 ここまでが10秒台で、これ以降の11秒台にはかなり多くの馬がひしめいている。11秒0、11秒1と上位3頭とほぼ遜色ないタイムで走破する馬が目白押しで、見ていても目立った差は感じられない。

 正直なところ、今の時点でここまでタイムを詰める必要があるのかと思わぬでもないが、これまでのトレーニングセールにおける市場動向を見ると、やはりタイムの出ている馬ほど注目されやすい傾向があり、しばしば活発な競り合いの末に高値で落札されてきたのも事実だ。

 こうした、いわば購買者ニーズが厳然とある以上、「とても生ぬるい調教風景では注目されない」と育成者側は考える。「タイムを出したくなくとも出さざるを得ない」というのが実情なのである。

 さて、今年はこの中にどんな“原石”が埋まっているものか。先ごろ行われた天皇賞(春)を制したジャガーメイルは、2006年のHBAトレーニングセール出身馬という。また、ひだかトレーニングセールからもシンガポールで活躍中のエルドラド(牡6歳)が出ている。名簿上では、実際のところ「売れ残り馬」が少なくないと推定されるが、販売するためにはこのトレーニングセールが事実上最後のチャンスとなる。

 いかなる結果が出るものか注目したい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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