千葉から北海道へ〜2歳TS

2010年05月19日(水) 00:00

 宮崎で発生した口蹄疫は拡大の一途をたどり、今のところ収束する気配がまったくない。その影響を受けて、5月10日に開催予定だった「九州トレーニングセール」(JRA宮崎育成牧場)は、6月1日に開催される「九州1歳市場」(JBBA九州種馬場=鹿児島)にて同時に行われることになったとのこと。

 口蹄疫は偶蹄類(牛や豚)には感染するものの、人や馬には感染しないとされているが、こういうところに早くも影響が及んでいる。

 そういうわけで、今年の2歳トレーニングセールは、当初九州から始まり、千葉、そして北海道へと列島を縦断する形で北上する日程になっていたが、九州が延期となったために、17日の「千葉サラブレッドセール」から幕を開けることになった。

 すでに各報道にある通り、千葉では53頭が上場され36頭が落札。売り上げ総額は5億2668万円(税込み)と、前年(2億2764万円)から一気に約2.5倍もの売り上げ増となり、過去最高を記録した。

 このセールを支えたのは、言うまでもなく社台ファームからの良血馬が数多く上場されたことによる。

 “社台ブランド”は、当歳や1歳市場だけではなく、2歳市場においても絶大な人気で、この日、社台ファームからは26頭が上場され、何と25頭が落札された。社台ファーム分だけで売り上げは約4億2000万円に及ぶ。さながら、セレクトセールと見まがうような結果だ。

 その分、社台以外からの上場馬は、27頭中11頭しか売れず、売却率も40%程度にとどまった。ただし、最高価格馬は41番「フォレストゾーン2008」(父アグネスタキオン、牝、販売申込者・カタオカステーブル)の4515万円(税込み)。

 この馬は公開調教で出色のタイムをマーク(2F23秒7、1F10秒5)し、購買者の注目を集めたようで、活発な競り合いの末、ビッグレッドファームが落札したという。

 この馬がいなかったとしたら、社台以外の上場馬は、ほとんど壊滅状態になっていただろう。完全試合に終わるところに一矢報いたような印象がある。とはいえ、結果はかなり一方的なワンサイドゲーム。ある程度予想できたこととはいえ、正直なところ、ここまでの大差がつくとは思わなかった。

 落札価格が税込み1000万円以上の取引馬は全部で22頭。そのうち、社台ファームからの上場馬は実に20頭を占める。圧倒的である。

 週が変わり、25日(火)には、いよいよトレーニングセールが北海道に上陸してくる。札幌競馬場を会場に「北海道トレーニングセール」(HBA日高軽種馬農協主催)が行われる予定だ。

 今年は昨年と比較すると上場予定頭数がかなり増えており、関係者の期待も大きいのだが、千葉の結果を見る限りでは、日高産馬にはやや厳しいものになりそうな雰囲気だ。

(写真・昨年の北海道トレーニングセール) 

 おそらく、千葉とは客層も、それぞれの予算もかなり異なるはずで、史上最高の売り上げを記録した今回の千葉の数字は参考にはなるまい。

 結局のところ、やはりこれも競走成績に大きく左右されるということだろう。“社台ブランド”は、今年春のGI戦線においても他の追随を許さない良績を残している。

 今週末はオークスだが、今の時点で出走の予定されている19頭(1頭は抽選待ち)のうち、10頭が社台グループの生産馬だ。加えて、それぞれの父馬欄を見ると、大半の種牡馬が社台スタリオンの繋養馬である。オークスのみならず、毎週のようにこれが繰り返されると、誰にも社台の優位性が刷り込まれる。

 来週は札幌競馬場にて終日トレーニングセールを見るつもりでいる。
次回はその模様をお伝えしよう。

【追記】
 6月1日開催予定の九州トレーニングセールと1歳市場は口蹄疫の影響より19日に中止と正式決定しました。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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