ダービー馬と2着馬の関係性から競馬の祭典を紐解く

2010年05月22日(土) 00:00

 今週はオークス、次週はダービー。いよいよ、競馬の頂点を極めるレースが開催されます。両レースともに、メンバーは豪華絢爛。見応えのある熱戦を期待しましょう。

 オークスの予想は、いつものように「矢野吉彦の競馬日記」(http://www.cma-co.jp/yanoblog/index.html)でご披露していますが、当コラムではひと足早く、次週のダービーを予想するにあたっての準備をしておくことにしましょう。もちろん基本はデータ作戦。1990年から2009年までの20年間のダービー馬と2着馬の関係に焦点を当ててみました。

 この間に皐月賞+ダービーの2冠を制したのは、トウカイテイオー(91年)、ミホノブルボン(92年)、ナリタブライアン(94年)、サニーブライアン(97年)、ネオユニヴァース(03年)、ディープインパクト(05年)、メイショウサムソン(06年)の7頭です。つまり、皐月賞馬のダービーでの勝率は.350。これはかなりの高率といっていいでしょう。

 でも、私が注目したのはこの率ではありません。これら2冠馬が誕生したときのダービー2着馬7頭です。その前走成績を見ると、青葉賞1着が4頭、京都新聞杯(※99年までは京都4歳特別として施行)1着が2頭、NHK杯(旧ダービートライアル)8着が1頭という内訳になっていたんです。

 このうち、NHK杯8着だったのはミホノブルボンの2着に来たライスシャワー。同馬は、438kgの馬体重(前走スプリングSからマイナス12kg)で臨んだ皐月賞で8着に敗れ、そこから4kg絞ったNHK杯を走り、さらにダービーでもマイナス4kgの430kgまで絞り込んで2着に健闘しました。これはハッキリ言って例外中の例外。この馬を除くと、2冠馬誕生の時に2着に来たのは、すべて皐月賞不出走馬でした。

 皐月賞+ダービーの2冠馬は、3歳春の時点では飛び抜けて強い馬のはずです。皐月賞で対戦した相手との勝負付けはいったん済んだことになり、ダービーではその他の路線で力を付けてきた馬が健闘する、ということかもしれません。

 したがって、今回のダービーでヴィクトワールピサを頭に馬券を買おうと思っているのなら、2着の相手には皐月賞に出ていなかった馬を選んだほうがいい、という話になります。

 一方、皐月賞で負けた馬がダービーで雪辱を果たしたのは、アイネスフウジン(90年、皐月賞2着)、ウイニングチケット(93年、同4着)、タヤスツヨシ(95年、同2着)、スペシャルウィーク(98年、同3着)、アドマイヤベガ(99年、同6着)、ジャングルポケット(01年、同3着)、ロジユニヴァース(09年、同14着)の7頭。ですから、皐月賞敗退馬がダービーを制する確率も、この20年で言えば.350となるんですが、皐月賞で負けた馬はたくさんいるわけで、この率はあまり意味がありません。

 そこで再び、ダービーがそうなったときの2着馬に注目します。するとその中で、皐月賞馬はタヤスツヨシの2着に来たジェニュイン1頭しかいませんでした。ほかはすべて、ダービーを勝った馬と同じく、皐月賞では負けていた馬だったんです。このケースの2着馬で皐月賞不出走組は皆無でした。

 こういう結果になるのは、皐月賞出走馬のレベルが高いところで接近していて、別路線組との差がかなりあったから、でしょう。これを今年に当てはめるなら、ヒルノダムールやエイシンフラッシュ、アリゼオあたりを頭に馬券を買う場合は、2着の相手にはそれらの馬と同様に皐月賞で負けた馬を選び出し、ヴィクトワールピサや皐月賞不出走馬は押さえに回すべき、となります(ということは大波乱?!でも、今年はそういう雰囲気ではないような気がしますね)。

 残るのは、前走が皐月賞以外のレースだった馬がダービーを制するというパターン。ここ20年では、フサイチコンコルド(96年)、アグネスフライト(2000年)、タニノギムレット(02年)、キングカメハメハ(04年)、ウオッカ(07年)、ディープスカイ(08年)の6頭が、皐月賞以外のレースを使った後、ダービー馬となっています。こちらの勝率は.300ですが、00年以降、そういうケースが多くなっているのが一目瞭然です。

 ただし、20年間で見ると、皐月賞+ダービーの2冠制覇と皐月賞敗退馬のダービー制覇が7回ずつで、別路線組のダービー制覇が6回ですから、3つのケースは拮抗しています。

 さて、別路線組がダービーを制したときの2着馬で、皐月賞馬は1頭(2000年エアシャカール)だけ。皐月賞14着→京都新聞杯1着(04年のハーツクライ)とか、皐月賞7着→NHKマイルC11着(07年のアサクサキングス)なんていう馬がいたかと思えば、青葉賞1着馬(02年のシンボリクリスエス)やプリンシパルS1着馬(96年のダンスインザダーク)がいたりして、そのパターンはバラバラ。どちらかというと、皐月賞上位馬より大敗馬、あるいは別路線組のほうが多くなっています。

 前走が皐月賞以外のレースだった馬がダービーを制するようなときは、皐月賞の結果がアテにならない、と考えていいようです。今回で言えば、ペルーサやダノンシャンティを頭にするときは、皐月賞で“掲示板”に載らなかった馬や、5月の前哨戦(青葉賞、プリンシパルS、京都新聞杯)を制した馬を相手にしたほうがいい、と思われます。ヴィクトワールピサはこの場合も押さえまで、でしょう。

 以上、3つのケースをおさらいしておきましょう。今回のダービーで、その1=皐月賞馬のヴィクトワールピサを頭にするなら、2着には皐月賞不出走馬を選ぶ。その2=皐月賞で負けた馬を頭にするなら、2着には同じく皐月賞で負けた馬を中心にピックアップする。その3=皐月賞以外のレースから来た馬を頭にするなら、2着には同じ別路線組か皐月賞で大敗した馬を狙う。どうです?なんとなく見えてきたと思いませんか?

 とはいいながら、私が期待しているのは、ヴィクトワールピサ、ペルーサ、ダノンシャンティ、ヒルノダムール、ルーラーシップあたりが横一線でたたき合うレース。なにしろどの馬が勝っても当然と言えるような、粒ぞろいのメンバー構成ですからね。いやぁ、楽しみだなぁ!まずは今週のオークスを当てて、ダービーに向けて弾みをつけたいものです。では、また来週!

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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