ベルモントS展望

2010年06月01日(火) 23:50

 今週土曜日(6月5日)、アメリカ・ニューヨーク州のベルモントパーク競馬場で、北米3歳3冠の最終関門となる第142回ベルモントS(G1、ダート12F)が行なわれる。現地・月曜日の時点で出走を表明しているのは、12頭だ。

 出走メンバーに、ケンタッキーダービー馬スーパーセイヴァー(牡3、父マライアズモン)もプリークネス優勝馬ルッキンアットラッキー(牡3、父スマートストライク)も居ないのは残念だが、近年はむしろ、3冠の緒戦と2戦目を連戦した馬は、それこそトリプルクラウンでもかからない限り、3戦目は使わないのが傾向だ。ルッキンアットラッキーは8月1日にモンマスパークで行なわれるG1ハスケルインヴィテーショナルを、スーパーセイヴァーもハスケルか7月31日にサラトガで行なわれるG2ジムダンディーSを次の目標に、しばらくは軽めの調整をほどこされると伝えられている。

 それでは、ベルモントSはこれまでの3冠路線とは縁の薄いものなのかと言えば、むしろ逆だ。過去10年のベルモントSにおける連対馬20頭のうち、ケンタッキーダービーもプリークネスSも使っていなかったという馬は、牝馬のラグストゥリッチーズを含めても3頭のみ。

 連対馬たちの前走を見ると、ケンタッキーダービー17着という惨敗から巻き返した00年の勝ち馬コメンダブルを筆頭に、プリークネス8着だったメダグリアドロー(02年2着)、ダービー9着だったテンモーストウォンテッド(03年2着)、ダービー8着だったバードストーン(04年1着)、同じくダービー8着だったアンドロメダズヒーロー(05年2着)、そして昨年のベルモントSが、前走ダービー6着のサマーバードとダービー11着のダンカークによる決着と、前走大敗から一変して激走した馬たちが、かなりいるのである。つまりは、前走の成績は度外視して考えないと、このレースの的中はおぼつかないのである。

 前走がダービーという馬で、成績最上位なのが、ガルフストリームのG1フロリダダービーを制した後に臨んだケンタッキーダービーが2着だったアイスボックス(牡3、父プルピット)だ。フロリダダービーでは速い馬場を、ケンタッキーダービーでは道悪を克服しており、安定感のある本命候補と言えよう。後ろから行く馬だけに、おそらくはファーストデュードが作るであろうペースがどの程度のものになるかが鍵となるはずだ。

 ダービー大敗からの巻き返しが多いという過去の傾向に当てはまるのは、ダービー8着のステイトリーヴィクター(牡3.父ゴーストザッパー)なのだが、ここまで挙げた2勝は芝とオールウェザーで、ダートは4戦して未勝利、そのうち3戦は着外という「ダート下手」では、強調しづらい。

 前走がプリークネスSという馬は、逃げてルッキンアットラッキーの2着となったファーストデュード(牡3、父スティーヴンゴットイーヴン)唯1頭だ。前々走のG1ブルーグラスSも3着と、先行して粘り込むレース振りは堅実だ。前走G3ローンスターダービーを、早めに動く競馬で制したゲイムオンデューティー(セン3、父オウサムアゲイン)あたりの出方が気になるものの、単騎で行ける公算が強いだけに、展開的な魅力があるのはファーストデュードだろう。

 別路線組では、5月8日にベルモントパークで行なわれたG2ドゥワイヤーSの1・2着馬、フライダウンとドロッセルメイヤーの評価が高い。ドゥワイヤーSと言えば昨年までは、ベルモントSの1か月後に組まれ、「断念ベルモントS」でもあったし、この後のジムダンディーSからトラヴァーズSに続く路線のステッピングストーンとしても存在していたレースだった。そして、ベルモントSの4週間前にベルモントパークで行なわれる前哨戦は、カジノドライヴが制したことでも知られるG2ピーターパンSだったのだが、今年はそのピーターパンSが消滅。その位置にドゥワイヤーSが引っ越してきたのである。

 そのドゥワイヤーを、6馬身差で快勝したのがフライダウン(牡3、マインシャフト)だ。デビュー2戦目のメイドン、アロウワンスと連勝した後、重賞初挑戦となったG2ルアジアナダービーは9着と大敗してダービー参戦を断念。矛先をベルモントSに絞り、プレップとして使ったのがドゥワイヤーだった。直線で後続を引き離した競馬っぷりは実に鮮やかで、管理調教師がニューヨークッ子のニック・ジートであることも鑑みると、当日はかなりの人気を集めそうである。

 ドゥワイヤー2着のドロッセルメイヤー(牡3、父ディストーテッドヒューモア)は、母がG1サンタアニタオークスやG1ラスヴァージネスSを制したゴールデンバレーという良血で、キーンランドセンプテンバーで60万ドルしたという期待馬だ。前々走のG2ルイジアナダービーではフライダウンに先着(3着)しており、大一番で良血開花を期待するファンも少なくない。

 混戦模様のベルモントS。レースの模様は、6月6日(日曜日)に、英国ダービーとともに、JRA各競馬場やウィンズ、グリーンチャンネルの競馬中継などで放映されるので、ぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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