2010年06月16日(水) 00:00
BTC育成調教技術者養成研修の第28期生が入所して、ちょうど2か月が経過した。
15日(火)。その後、どこまで研修が進んでいるかを取材させていただくために、研修所を訪れた。
午前8時半。この日は週に2日組まれている「馬房掃除」の日ということで、研修生たちはみな熱心に糞尿に汚れた寝藁と“格闘”している。
普段は「ボロ拾い」のみで済ませ、馬房全体の寝藁を整えるのは火曜日と金曜日の午前中に行われる。
見ていると、作業に従事する姿がそれなりに「見られる」ようになってきた。研修に供される乗用馬は現在44頭。厩舎は3棟あり、21人全員で作業を行うのである。
午前9時半。馬房掃除が終了し、束の間の休憩時間を挟んだ後、いよいよ騎乗訓練の開始時間となった。
午前10時。普段は午前中に2鞍乗るそうだが、この日は1鞍のみ。
まず、サンシャインパドックに放牧している馬たちを厩舎に連れてくるところから始まる。それぞれを馬房に収容したところで、馬装である。
もちろん、この程度の基本的な作業は自力でできるようになっている。
あいにくこの日は、朝から霧雨がずっと降り続いていた。しかし、この程度ならば外での騎乗になる。
6月に入り、研修所内にある800mダートコースにて一列縦隊から併走へとメニューが進化してきているらしく、2つのグループに分かれた10騎ずつの集団の横を、同じく騎乗した2名の教官が伴走しながら、大声で指示を送る。
最初の1周目は常歩でウォーミングアップだが、2周目、3周目と周回を重ねるごとに、速歩からキャンターへステップアップし、ハロン25秒程度まで速度を上げて行くのだ。
みんな真剣そのものの表情で、騎乗訓練に集中している。コースを周回する間、教官は声を出し続け、一人ずつに対して厳しく指導をする。
この日はたまたま1鞍だけであったが、週に4日はこれが2鞍になる。
こうしてひたすら騎乗訓練に明け暮れるわけだ。
教官の1人は今年の研修生について次のように語っている。
「これまで若い子ばかりでしたが、昨年から20代後半の研修生を受け入れるようになり、それが今年は一気に3人に増えました。その他にも20代半ば近くになっている研修生も何人かいて、平均年齢は従来から見ると確かに高いんです。しかし、社会人としての経験を積んでいる彼らは、その分だけモチベーションが高く、ひじょうに真面目に訓練に取り組んでおります。これは全体を考えると、むしろとても良いことだと考えています。限られた1年間でどこまで技術を習得できるか。彼らはとても貪欲ですね」
この研修所内のコースから出て、道路を横断すると、すぐ隣にはBTCのさまざまなコースがある。自動車教習に例えると、28期生はまだ教習所内のコースを周回する基礎段階だが、もう少しで「路上教習」へと進んで行く時期が近づきつつある。
「競馬人気がこのところ芳しくないとはいえ、ここの研修生には毎年かなり多くの求人が寄せられます。
就職率は100%ですし、本当はもっと多くの研修生を受け入れたいところなのですが、何せ、訓練馬も施設も現状の21人が精一杯のところでして、何とも厳しいですね」とは教官の弁である。
8月には民間育成牧場へ10日間の実習もあるらしい。まだどこかで28期生の「その後」を取材してみようと思う。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。