“ついに”フリオーソが頂点に

2010年07月03日(土) 00:59

 先週行われた帝王賞、“ついに”フリオーソが頂点に立ちました。06年の全日本2歳優駿、07年のジャパンダートダービー、08年の帝王賞を勝っている馬ですから、“ついに”というのはおかしいかもしれません。

 なぜ“ついに”かと言えば、ヴァーミリアン、サクセスブロッケン、カネヒキリ、スマートファルコンといった、これまで何度もその後塵を拝してきたJRAの強豪たちを、まとめて負かして優勝したからです。

 ヴァーミリアンとは、07年のJBCクラシック(大井)、JCダート、東京大賞典、08年のJBCクラシック(園田)、東京大賞典、09年の帝王賞、東京大賞典と、7回対戦して1度も先着したことがありませんでした。

 また、カネヒキリとの対戦でも、08年のJCダート、東京大賞典、09年の川崎記念、かしわ記念でいずれも先着を許していました。とにかく、今回出てきたJRAの有力馬たちには、なかなか勝てなかったんです。

 8歳馬でもありますし、「もうフリオーソとは勝負付けが済んだ」と多くの人が思ったはず。単勝5番人気というのが、その何よりの証でした。

 そういう評価を覆した今回の優勝。ヴァーミリアンが休み明けだったとか、サクセスブロッケンが最内枠を引いていたとか、いろいろな勝負のアヤがあったとはいえ、何より勝ったことが素晴らしいですよ。

 「戸崎君にも、今日勝てなければもう勝てないと伝えましたし…」という川島正行調教師のレース後のコメントには、本音が現れていると思います。そこを勝ち切ったわけですから、フリオーソとその陣営に対しては大きな拍手を贈りたいですね。

 私が好きなのはこういう勝負です。AとBが10回戦ったら9回はAが勝つ。そのくらいの差がある者同士でも、Bが何とかしてAを負かそうとする。そして、Bがなんでもないときに勝つのではなく、ここ一番というときに勝つ。というのがおもしろいじゃないですか(フリオーソと今回出てきたJRA勢との間に、それほどの差はないでしょうが)。

 もちろん、Bがそういうチャンスを逃してしまうことも多々あります。それは実力差でもあり、運のなさでもあるでしょう。でも、今回、フリオーソが勝てたということは、まだまだこの馬にも力はあるし、運もあるということを表していると思います。

 同じような相手と、何度も何度も対戦を繰り返してきたからこそ生まれた今回のドラマ。地方のダートグレード競走ならではの名勝負でしょう。これで秋のJBCが楽しみになりました。なにしろフリオーソは地元での大舞台を迎えるわけですから。

 さて、当コラムは今回から少しコンパクトな分量でまとめさせていただくことになりました。それだけ中身の詰まった内容にできるよう頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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