セレクションセール

2010年07月22日(木) 10:00 0

 日高で開催される1歳&当歳市場の第一弾「セレクションセール」が7月20日、21日の両日にわたり新ひだか町静内の北海道市場にて行われた。

 20日の「1歳市場」は盛況で、現下の情勢を考えれば上出来と言える結果だったものの、翌日(21日)の当歳市場は一気に半分以下まで売り上げが下降してしまい、トータルでは前年とほぼ変わらない数字に終わった。1歳と当歳とではかなり対照的な結果であった。

 以下、二日間の市場ごとに振り返ってみたい。

【1歳市場】

 市場の前日19日(月)に比較展示が行われ、多くの購買者がつめかけた1歳市場は、20日の本番も好天に恵まれ、せり開始から活発な取引が展開した。

 上場頭数は名簿上で254頭。ただし欠場が9頭いたために最終的には245頭(牡170頭、牝75頭)が上場された。

 頭数が多く、しかもリザーブ形式を採用しており、長時間に及ぶことが予想されたことから、せり開始は午前10時。今回は「後半の方により高額(で取引されるであろうと予測される)馬が集中しているので鑑定人はよりテンポアップして上場馬を捌くはず。今日中に帰る購買者が多いので進行を早めなければ売りそびれてしまう」とも言われていた。

 確かに販売者はせりのどのあたりで上場順が回ってくるかが重大な関心事だ。せり開始直後はまだ模様眺めの気分が支配的だし、終盤はやや息切れする。中間の盛り上がった場面に上場されるのが理想的なのだ。

 とはいえ、今回はほぼ終日、大きな波のない安定したせりが続いた印象である。終了は午後6時を少し回ったあたりで、午後8時近くまでかかった昨年と比較するとずいぶん早めに切り上げられた。

 最高価格馬は84番「ホクトペンダント21」(父フジキセキ、牡鹿毛)の2700万円(税抜き)。生産は(有)酒井牧場(浦河)で落札は(有)ローズヒル(日高町)。兄姉にビーナスライン、チョウカイファイトなどのいる名血である。

(写真・最高価格馬)

 二番目は99番「ミスカースティーの21」(父アグネスタキオン、牡栗毛)の2500万円(税抜き)。(有)日の出牧場(浦河)で落札は加藤守氏(愛知県)。兄はマルカフェニックス(阪神C)、祖母スピットカールは米国G1勝ち馬とこちらも良血馬。

(写真・第二位価格馬)

 牝馬の最高価格馬はせり終盤になってから誕生した。237番「スイートクラフティの2009」(父シンボリクリスエス、牝鹿毛)の1950万円(税抜き)。シンボリ牧場生産、落札は(有)社台コーポレーション(安平町)。伯父にシンボリインディがおり、母も現役時代5勝をマークしている活躍馬である。

(写真・牝馬最高価格馬)

 3000万円を超える高額馬は生まれなかったものの、全体的に堅調な取引が続き、1000万円以上の落札馬も67頭に上った。

 トータルでは141頭が落札され、15億3216万円(前年比2億3110万円増)を売り上げた。売却率は57.55%(前年比2.78%増)。平均価格も前年より100万円上がり1171万9000円。

 照りつける太陽の下、気温もぐんぐん上昇し、水分補給の欠かせない一日であった。

【当歳市場】
 この地方独特の海霧がかかり、前日よりかなり涼しい。午前9時より比較展示。しかし明らかに前日よりも人が少ない。半分以下どころか、3分の1程度まで激減している印象だ。

(写真・当歳比較展示)

 この日の上場頭数は8頭が欠場して102頭。前年より60頭も減っている。購買者のニーズが1歳市場にシフトしている世情を反映してか、せり会場もまた閑散としていた。

(写真・閑散とした場内風景)

 午前11時よりせり開始。だが、売れない。301番より始まったせりは、ようやく318番まで進んで初めての落札馬が出た。

 何頭売れるのだろうかという声とともに、買う方も売る方も本気モードで臨む人は少ないはずだという辛らつな意見もずいぶん耳にした。

 平均してお台付け価格は高めに設定されており、生産者は強気の姿勢である。無理にここで値引き販売する必要はなく、むしろ「ウチにはこういう馬がいますので来年宜しく」とでもいうような「顔見世興行」的な意味合いが強かったかも知れない。

 結果的には23頭の落札にとどまり、売り上げも2億1640万5千円(税込み)と前年より半減した。平均価格は1003万2750円で前年より191万7271円の減。

 最高価格馬は395番「サンターナズソング2010」(父ゼンノロブロイ、牡鹿毛)の2200万円(税抜き)。新冠・村上雅規氏生産。落札はグローブエクワインマネージメント(有)。母サンターナズソングは父サクラバクシンオーでアネモネS勝ち馬。

(写真・当歳最高価格馬)

 上場頭数が少なかったことと、落札も23頭しかいなかったことにより、せりは異常な速度で進行した。

 午後1時過ぎには102頭すべての上場が終了し、何ともあっけない幕切れとなった。

 おそらく今後、来年へ向けて内部(日高軽種馬農協)でせり日程の再検討が行われることになるだろう。あまりにも1歳市場と当歳市場の落差が甚だしく、2日間のトータルで売り上げが微増に終わったのは、1歳の“貯金”を当歳で食いつぶしてしまったためである。

 「いっそのこと1歳市場を二日間にして当歳は秋にでもやった方が良いのでは」との声もある。

 この結果を見る限り、日高の当歳市場開催は相当に難しい時代になってきたと言えるだろう。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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