2010年08月12日(木) 00:00 0
台風4号の影響で、11日(水)は朝から断続的に雨が降っていた。
気象衛星の画像を見ていると、津軽海峡方面から胆振日高にかけて次々に濃い雨雲が侵入してきており、一向に止む気配がない。とりわけ日高地方は西部ほど雨が強くなりそうな予報であった。
何とも恨めしい天候になったが、予定通り「第2回ジョッキーベイビーズ北海道地区予選決勝」が門別競馬場にて行われた。
出走予定は午後7時10分。第8競走「北海道日高乳業ヨーグルッペ特別」(ダート1200m)が発走し、レース終了後に出走各馬が引き上げ、優勝馬がウィナーズサークルでの表彰式を終えた直後に、8頭のポニーが馬場入りすることになっていた。
しかし、あいにくの空模様に加え、この日は、その第8競走でアクシデントがあり、ポニーレースの発走が大幅に遅れてしまったのだった。
競馬に事故はつきものとはいえ、この第8競走のアクシデントはかなりのものであった。2コーナーポケットから発走する1200m戦。向こう正面を進んだ一団が3コーナーにさしかかった時、タカノダンサー(馬渕繁騎手)が鼻出血により競走を中止し落馬。そのあおりを受けて後続のドレッシー(坂下秀騎手)も落馬した。
レースはそのまま続けられ成立したが、3コーナー付近に横たわるタカノダンサー(予後不良との情報もある)と、あおりを受けて落馬した坂下秀騎手の搬出に手間取り、いつまで経っても馬運車が出て行かない。
また救護室に運ばれた坂下秀騎手を迎えに来た救急車も、後部扉を開いたままで、しばらくの間停車している。赤色灯を回転させながら救急車が坂下騎手を乗せて出発したのは7時20分を回った頃のこと。
物々しい雰囲気であった。ポニーが馬場入りする予定時刻になったものの、場内にはアナウンスもないまま時間だけがいたずらに経過して行った。雨は依然として降り続いており、時計の針がどんどん進む。
結局、予定より約15分遅れの7時25分過ぎにファンファーレが鳴り響き、4コーナー付近に集合した8騎が横一線に並んで、カウントダウン方式のスタートを切った。距離は300m。
出走馬は次の通り。
1番、ハク(根本ひなた、小6)
2番、サンジ(福久紗蘭、小5)
3番、チャオ(谷口遼斗、小5)
4番、サクラ(山田蓮、小6)
5番、メルモチャン(大池悠梨香、小6)
6番、フランキー(木村和士、小5)
7番、クリボン(大池駿和、小2)
8番、トットコハムタロウ(木村拓己、中1)
4番サクラに騎乗の山田蓮君以外の7名が浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の所属である。
レースは最内を進んだハクとサンジがリードし、他の各馬がそれを追う展開。真正面からファインダー越しに見ていると、横一線のスタートで近づいてくるために、大型ビジョンで確認しなければどの馬が前に来ているのかがよくわからない。
水分を含んで重くなった馬場のせいか、8頭の中では比較的大柄なハク(根本ひなた騎手)とサンジ(福久紗蘭騎手)が終始ぴったりと並びながらゴールを目指す。そこに力量のあるメルモチャン(大池悠梨香騎手)と騎乗技術に勝る木村拓己騎手騎乗のトットコハムタロウ、兄に劣らぬ手綱さばきの木村和士騎手騎乗のフランキーが必死に追いながら続く。
最後はそのまま先行した2頭で決まり、後半よく追い込んだ大池悠梨香騎手のメルモチャンが3着。以下、木村兄弟のトットコハムタロウ、フランキーという着順であった。
タイムは23秒6。ただし電光掲示板に着差までは出なかったので、録画した画像で確認するしかないのだが、1着と2着はクビ差、2着と3着は約3馬身差程度だったと思われる。
雨がひどく、表彰式はスタンド内で行われた。1着の福久紗蘭(さらん)さんと2着の根本ひなたさんには、それぞれ東京競馬場行きの切符がJRA日高育成牧場・朝井洋場長より手渡された。
優勝した福久紗蘭さんは浦河町在住の小学校5年生。2年生より乗馬を始め、今回初めて草競馬に出場し、見事にデビュー戦を飾った。
「ハクと並んだままの苦しいレースでした。まさかこの舞台で勝てるとは思っていなかった」と本人も驚きの大金星。2着の根本ひなたさんは、ハッピーネモファームを営む根本明彦さんの三女で、乗馬歴6年。
父の明彦さんともども嬉しい東京行きとなった。
それにしても、子供たちにとってはせっかくの大舞台でありながら、何とも恨めしい悪天候であった。余談ながら今日12日はブリーダーズゴールドカップが行われる予定で、かのカネヒキリも出走することになっている。にもかかわらず、今日いっぱいは大雨の予報で、興行的にもこれはちょっと痛い。今年は春以来、ここという肝心の日に限って雨に見舞われる、と関係者の1人が空を見上げながらぼやいていたが、確かにそういう不運が今年の門別にはつきまとっている。
最後に8着に敗退した山田蓮君について。本人はかなり悔しい結果になったと思うが、父の秀人さんはわりとサバサバしながら「十分楽しませてもらいました。これでどれくらいの力量が必要なのかもだいたいわかりましたし来年は雪辱します。またもっといいポニーを仕上げて連れて来ますよ」と笑顔で語っていた。
やはりこういう人々が増えてこそ、ポニー競馬もまた盛り上がって行くのだ。なお本番は来る11月7日(日)東京競馬場の昼休みに芝直線400mで行われる予定である。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。