サマーセール来週に迫る

2010年08月18日(水) 00:00 0

 国内最大規模を誇るサラブレッド市場「サマーセール」がいよいよ来週に迫ってきた。

 今年は8月23日(月)より27日(金)までの5日間の日程で、新ひだか町静内にある北海道市場を会場に計1301頭(名簿上の記載頭数)が上場を予定している。1日平均ざっと260頭に上る。

(写真・昨年のサマーセール風景)

(写真・昨年のサマーセール風景)

(写真・昨年のサマーセール風景)

(写真・昨年のサマーセール風景)

 昨年の同セールは、1077頭が上場され、396頭が落札。売り上げ総額は17億2998万円を記録したが、落札馬の平均価格は436万8636円とここ数年下落し続けており、5年前の2005年(546万2208円)比較すると約110万円もの落ち込みとなっている。

「売れたが安かった」という生産者の声が多く聞かれた昨年のサマーセールだが、さて今年はどんな結果になるものか。

 上場馬の種牡馬別データが週刊「競馬ブック」(8月14、15日号)にまとめられている。それによれば、今年初産駒がわが国で1歳を迎えたJBBA日本軽種馬協会所有・繋養のケイムホームが49頭(牡24頭、牝25頭)とダントツの多頭数で、以下、頭数の多い順に、マイネルラヴ38頭、オンファイアとリンカーンが27頭、グラスワンダー26頭、ファスリエフとマヤノトップガンが25頭、サウスヴィグラスとデュランダルが24頭、アドマイヤジャパン、ジャングルポケット、スウェプトオーヴァーボードが23頭、メイショウボーラー22頭、サムライハート、ファンタスティックライト、フォーティーナイナーズサンが21頭、プリサイスエンド20頭と続く。

 こうして見ると、何と言ってもケイムホームの49頭は抜けた数字である。ケイムホームはアメリカで12戦9勝の成績を挙げ、GI・3勝をマークした名馬で、産駒にはすでに持ち込みとしてケイアイライジンなどの活躍馬もいる。

 本邦初供用の2008年にはかなり人気を集め、2009年に誕生した産駒は、JBBA発行の「2009年生産全国馬名簿」によれば計123頭に及ぶ。とはいうものの、そのうちの約4割もの産駒がここにまとめて上場されるのは、いささか驚きである。

 昨今、とりわけ日高の中小生産牧場では、一部の良血馬を除くと庭先取引が極端に少なくなってきているとも言われる。数少ない庭先取引は、ほとんどリーディングサイアーランキング上位馬の産駒に集中しており、ケイムホームのような「これからの種牡馬」の産駒はその分だけ不利を蒙ることになるのだろう。

 とはいえ、ケイムホーム自身は2歳デビュー後3連勝しGI制覇した馬である。父に続くような産駒の出てくることを期待したいところだ。
 
 ところで、1301頭に及ぶ上場予定馬の掲載された分厚い名簿を繰って行くと、とりわけ日高の中小牧場が苦戦している現状が垣間見える。

 販売申し込み者(ほとんどが当該馬の生産者であり所有者)別索引と前記の「全国馬名簿」とを比較しながら見てみると、中には生産馬の全てをこのサマーセールに上場させる予定の牧場が珍しくない。

 また5頭中4頭、あるいは6頭中5頭の上場だったり、極端な例では、10頭いる生産馬のうちの大半を上場させる牧場さえある。

 それだけ「売れていない」ということなのだろう。先月のセレクトセールとセレクションセールで、牧場の“エース級”を高額で売却できた牧場はその分だけ余裕があるものの、あくまでそれは例外である。今回、“主力選手”全てをゾロゾロと引き連れて市場に臨む生産牧場はかなりいる。サマーセールで何頭売れるか、いくらの値がつくかに牧場の浮沈がかかっているところも少なくないはずだ。

 5日間とも展示開始は午前8時半、せり開始は午後1時の予定である。

 平均的な水準の生産馬がこの市場には多く上場される。日高を中心とした生産地の景気を占う意味においても、このサマーセールの動向がひじょうに気になるところだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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