ばんえい競馬大特集 part2

2010年08月28日(土) 00:00

 先週のばんえい競馬大特集パート1、お役に立ちましたでしょうか?フツウの競馬とはひと味もふた味も違うばんえい競馬の予想テクニックを、なるべくわかりやすくご説明したつもりなのですが・・・。

 もちろん、こうやって予想すれば必ず当たる、という必勝法をご説明したわけではありません。フツウの競馬だって、そういうものはなかなか見つけられないでしょう?ばんえい競馬も一緒ですよ。その世界に入り込んでいくと、奥の深さを痛感させられることが多々あります。馬券的中への道は、なかなか険しいんです。

 さて今回のパート2では、フツウの競馬とはちょっと違う、ばんえい競馬ならではのおもしろい部分をいくつかご紹介させていただきます。レースを予想するときのヒントになるかもしれませんよ。

 ばんえい競馬の場合、第1障害の位置取りが悪くても、第2障害でハナに立てるような馬は逃げ・先行タイプと言えます。他の馬が第1障害から第2障害までの間に何度も止まって息を入れている(これを『刻む』と言います)うちに、あまり刻まずにポジションを上げ、第2障害手前ではいつの間にか先頭に、という馬がいるんです。こういう馬は、最初から最後まで同じようなペースで歩くタイプが多く、末脚の切れ味は今ひとつ。なので、とにかく第2障害を早めにクリアして粘り込みを図るしかありません。でも、他の馬がオーバーペースになって障害で苦戦したり、追い込みの届きづらい乾いた馬場になったりすると、このタイプが善戦します。

 重量が軽いとスピードが要求されるために実力を発揮できず、重量が重くなってようやく本来の力を出せる馬、というのもいます。いわゆる高重量戦に強い馬、平場のレースより特別・重賞(重量が重くなります)が得意な馬です。

 これとやや似ているのが、障害で苦戦していても、何かの拍子でうまく障害をクリアしたら、鋭い追い込みを見せる馬。例えば、ここ数戦はスピード馬場の速い流れについていくのが精一杯で障害をうまく越えられなかった馬が、馬場が乾いてペースが遅くなった(=各馬が細かく刻んでレースを進めた)ために道中で息を入れられ、それで障害もうまくクリアできて自慢の末脚を爆発させた、なんていうことが起きるんです。こういう馬はたいがい穴を出しますから、つねにチェックしておきましょう。

 反対に、いつも逃げてゴール前で失速していた馬が、他の馬が障害でもたついたために残ってしまうケースもあります。フツウの競馬の人気薄の逃げ馬とはちょっと違うんですが、先週のコラムにも書いたとおり、帯広のコースは逃げ・先行タイプに有利ですから、前残りできそうな馬のマークも必要です。

 セパレートコースで走るばんえい競馬では、どの枠に入ったかも重要な要素。デビュー間もない2歳馬のレースでは、ラチのすぐ横から厩務員さんが送る声援やかけ声をまともに受ける1枠に入ると、それが気になってレースに集中できない馬がいます。また、すぐ隣に牝馬がいると、それを気にしてうまく走れなくなったり、逆にその牝馬にくっついて行って、最近にはないようなスムーズな障害越えを見せて好走したりする牡馬がいます。人間にもそういうヤツがいる、ですって?まさにそのとおりです。

 当然ながら、フツウの競馬と同じように、叩き合いになったらしぶといのに、一頭になったらフワフワしてしまう馬もいます。ばんえい競馬では、有力馬の隣の穴馬を買う、というのを戦術にしているファンがいるほどです。

 騎手の乗り替わりは、フツウの競馬以上に気にしたほうがいいでしょうね。よく“馬七人三”(馬の力7に対して騎手の力3で実力を評価する)なんて言いますね。ばんえい競馬の場合は、“馬六人四”くらいに考えたほうがいいようです。道中の刻み方、障害越えのテクニック、追い比べになったときの手綱のさばき方などなど、リーディング上位の騎手はやはり優れたものを持っています。近走は不振でも、うまい騎手に乗り替わった途端に好走する馬がいますから、要注意です。NARのホームページや競馬新聞の出馬表には、当該騎手成績も載っていますので、ぜひ参考にしてください。

 まだまだ書きたいことは山ほどあります。フツウの競馬を語り出したら、何冊もの本を書けてしまうのと一緒。ばんえい競馬にも、入門書、解説書があったっていいくらいです(出版して採算が取れるかどうかはわかりませんが)。今後も折を見てばんえい競馬のネタは書かせていただくつもりですが、取りあえず今回の大特集はこのくらいにしておきます。あとはみなさんでその世界の魅力を見つけ出してください。では、また来週!

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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