サマーセール終了

2010年09月01日(水) 00:00 0

 8月23日(月)より27日(金)まで、新ひだか町静内にある北海道市場を会場に開催された「サマーセール」(HBA日高軽種馬農協・主催)は、既報の通り、売却総額、売却率ともに昨年を上回る成績で終了した。

(写真・サマーセール会場風景)

 5日間を通じて上場されたのは前年比101頭増の1178頭(牡673頭、牝505頭)。うち落札は前年より83頭多い479頭(牡308頭、牝171頭)。売却率も3.89%上昇して40.66%を記録した。また、売り上げ総額は2億5158万円の増加で総計19億8156万円となった。

 ただし、このところ低落傾向が続いていた落札平均価格は413万6868円と前年よりも23万1768円の減少で、「売れてはいるものの価格が伸び悩む」傾向がさらに一段と顕著になった。

 5日間を通じての最高価格馬は757番「クリスティーナサンチェスの2009」(父キングカメハメハ、牡・芦毛)の2310万円(税込み)。

 新冠町の(有)秋田牧場生産で落札は東京の飯村孝男氏。

(写真・サマーセール最高価格馬)

 ちなみに落札された479頭中、税込み1000万円以上の落札馬は全部で24頭いるが、牝馬はわずか3頭のみ。上位100傑まで範囲を拡大しても、牡馬84頭に対して牝馬は16頭にとどまり、依然として牡馬優位の市場であることに変わりはない。

 5日間を通して、ほぼ平均した流れのせりが続いた。比較展示は午前8時半より、せり開始は午後1時だったが、セレクションセールの際のリザーブ方式から、いわゆる通常のお台付け方式に変わったことによって、進行はかなりテンポアップした。

 欠場馬が若干数いるとはいえ、1日あたり名簿上では260頭もの上場頭数である。進行に手間取っていたのではいたずらに時間ばかりが経過してしまう。見ていると、誰からも声のかからない「主取り馬」に関しては、所要時間が1分以内でどんどん捌かれていた。

 「続いて○○○番、○○○○の2009に移ります」というアナウンスの後に、血統や性別、毛色などが簡単に紹介されて、次の上場馬が入場してくる。

 ステージ中央に馬が到達したのを確認して、鑑定人がおもむろに「それでは・・・・」と場内に向かって「お台はありませんか?」と呼びかけるのである。

 この場合、お台付け価格はすぐに公表されず、まず場内からのコールや購買者からのサインを待つ。販売者の希望最低価格(すなわちお台付け価格)に到達していれば問題ないが、多くの場合には、売り手と買い手との間で大きな差があり、鑑定人は、しばしば傍らに控えた販売者に値下げの意思を確認する場面が見られた。

「複数のお声をいただいておりますが、もう少しお待ち下さい」と言いながら調整に努めていた鑑定人は、販売者が値下げスタートに応じればその金額から、どうしても当初届けてあるお台付け価格を割りたくないと意思表示すればお台から、それぞれせり開始となる。

 せいぜいわずか数十秒の間に「値下げすべきか否か」を即断しなければならない販売者(多くの場合は生産者)の苦悩は大きい。購買希望者が複数いて、仮にお台が300万円の場合に、彼らの提示している金額が最高でも150万円だった場合、それを受け入れることによってせりを開始した後にどんどん価格が上昇してお台付け価格まで上りつめれば御の字だが、必ずしもその保証はない。

 かといって、300万円の水準を維持したまませりが始まった時、果たしてそれ以上の価格をつけてくれる購買者が現れるかどうかもまた皆目わからないことだ。その判断をほんの短い間に迫られるのである。

 かくして、仮に値下げ希望を受け入れ150万円からスタートしても、多くの場合は、販売者が当初希望した300万円には到達せずに終わった。

 税込み210万円以下の落札馬は479頭中、ざっと数えて約130頭。これらの大半はこうして「大幅に値下げを断行した結果」この落札価格に終わった馬たちである。

 サマーセールにおける売却率4割超えは、実に20年ぶりの出来事らしい。確かに、市場にいるとこれまで耳にしたことのないような購買者名をずいぶん聞いた。それだけ、確実に「自ら市場に足を運んで落札する」人が増えているのだろうが、概して財布の紐は固く、一声での落札馬もまた多かった。

 とはいえ、従来ならば、せりが終わり、出口から主取り馬が退出してくると、様々な“エージェント”たちが群がってきて、その場で交渉し商談の成立する場面がずいぶん見られたものだ(「場内」取引よりも「場外」取引の方が盛んだと揶揄された時期が長かった)が、昨今はそういう馬たちも「再上場」されるようになった。

 市場取引の透明性と信頼性が増したと解釈すべきなのか、それとも主催者が独自に設けた「市場取引賞」の効果なのかはわからないのだが。

 今回、主取りとなった約700頭の多くは、来る10月中旬のオータムセールに再度上場されることになる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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