とかちむらオープン効果

2010年09月18日(土) 00:00

 今回も、先週に続いて地方競馬開催成績の話。16日に公開された8月のデータに興味深いものがありましたのでご紹介します。

 それは、ばんえい帯広競馬の成績です。1日平均の入場人員が2548人に達し、前年同月比60.9ポイントもの大幅プラスを記録しました。今年4〜7月期に比べても1000人以上のプラス。一気に客足が伸びたわけです。8月の帯広競馬場は大盛況でした。

 最大の要因は、8月6日、競馬場敷地内に複合商業施設“とかちむら”がオープンしたこと。その公式サイトによれば「開店一か月を過ぎ、4万人超え!のお客様がお買い物やご飲食を楽しんでいただいています。とくに土・日・月のばんえい競馬開催日には多くのお客様で賑わっています」とのこと。競馬場を複合娯楽施設にして、多くの方にご来場いただける場所にしようという、新生ばんえい競馬発足当初からの“夢”は、どうやら現実のものになったようです。

 ところが、これで馬券の売上も大幅アップ、と思ったら、そうはいきませんでした。8月の来場者1人あたり、いくら馬券を買ってくれたかを表す場内購買単価は7100円で、こちらは前年同月比33.1ポイントもの激減。今年4〜7月期は1万2400円でしたから、それに比べると5000円以上も下がってしまいました。

 大ざっぱな計算をしてみましょう。今年4〜7月期の1日平均入場人員は1426人。これは4か月間の平均値ですから、常連客の数と考えていいと思います。その方々によって支えられていた4〜7月期の1日平均場内売得額は約1773万1100円でした。

 一方、8月1か月間の1日平均場内売得額は約1820万2700円。4〜7月期に比べると約47万円のプラスでした。1日平均入場人員は4〜7月期より1122人も増えているにもかかわらず、この数字。これが、常連客以外の“とかちむらオープン効果”で入場された方々にお買い上げいただいた馬券の売上分だとすれば、その購買単価は約420円。ちょっとオマケして見積もっても500円ぐらいだった、ってことになってしまいます。

 さぁ、これをどう見るか。私は、“とかちむらオープン効果”で入場された方々のほとんどが、「ばんえい競馬を見るのは初めて」という“ビギナー”だったと思いたいですね。だとすれば、1人平均500円というのは上々。それだけでも「取りあえず馬券を買ってみよう」と思っていただけたわけですから。

 そういう方々に、これから先、もっと馬券を買っていただければ、それに越したことはありません。でも、「帯広にばんえいの競馬場があるっていうのは、いいことだね」と思っていただくだけでも大きな意味があるんじゃないですか? 地方競馬の存続には、関係者の奮闘努力はもちろんのこと、地元市民のみなさんの支持が必要不可欠です。“とかちむらオープン効果”があったことは確か。あとはこれをどう活かすかが問われています。

地方競馬全国協会公式サイト・開催成績のページ
http://www.keiba.go.jp/nar/holding-result.html

とかちむら公式サイト
http://www.tokachimura.jp/

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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