2010年09月22日(水) 00:00 0
9月17日(金)、高橋はるみ・北海道知事は、道議会代表質問で小野寺秀議員(自民党・道民会議)の道営競馬事業に関する知事のスタンスを質した質問に答え「胆振、日高などの馬産地の活性化に不可欠。牧場地帯は観光資源としても価値がある。
今定例議会の期間中をめどに馬産地振興の観点から最終的な判断を示したい」と語った。
高橋知事は、2001年度に年間28億円に達していた単年度赤字を2009年度には3億円まで圧縮し「収支均衡を見通せる段階まで到達した」ことを前向きに受け止め「将来にわたって安定的に継続していくことが重要だ」とも答弁した。
それを受けて、地元各紙は一斉に「道営競馬、存続」と一面で大きく報じ、来年度以降も競馬事業が継続される方向がほぼ決まった。10月8日の会期末までに正式表明される見通しだという。
累積赤字が242億円に達する道営競馬は、先に北海道が2008年度からの三か年で収支均衡を目標にした改革ビジョンを策定し、「2010年度までに赤字体質から脱却できない場合は廃止もやむなし」との姿勢を内外に向けて明言してきた。
本年度は現在のところ、年度当初に立てた売り上げ目標にはやや足りない(8.8%)ものの、11月18日までの開催期間中に売り上げ増を見込める重賞競走が多く組まれていることなどから、さらなる単年度収支の改善に取り組み、黒字化を目指す。
さて、連休明けの9月21日(火)。
この日は「第9回ノースクイーンカップ」(重賞)が行われた。3歳以上牝馬オープンによる別定戦。
出走は大井と笠松から4頭の遠征馬を加えて全13頭。すっかり秋らしくなった門別は、暑くもなく寒くもない爽やかな気候だ。
人気の中心は、道営デビューの後、南関東(大井)に転厩し、今回凱旋出走となるショウリダバンザイ。 それに地元のアンペアが続く。
午後8時30分。最終11レースがこの「ノースクイーンカップ」。距離1800m。
ゲートが開くと、まずアースファイヤーとアンペアが飛び出し、レースを引っ張る。エイダイセルリアとマチカネオイカゼがそれに続いてショウリダバンザイは5番手。
好位につけたショウリダバンザイが4コーナーを回ると内埒沿いを進み、外から伸びてきたライネスゴルトの追撃を4分の3馬身抑えてゴールイン。浦和の桜花賞を制した実力を門別でも見せつけた。
ショウリダバンザイは父プリサイスエンド、母オレンジスペシャル(その父ジェイドロバリー)という血統の牝3歳馬。大井・高岩孝敏厩舎所属。服部茂騎手騎乗。馬主は元道営競馬調教師の林正夫氏。生産は浦河・山口義彦牧場。
ショウリダバンザイは、改めて戦跡を振り返ると、まさしく典型的な道営出身の出世馬であることが分かる。昨年5月20日に門別でデビューし認定競走を勝った後、4戦2勝の成績で10月22日の「エーデルワイス賞」に出走。3番人気に支持されたものの、この時には6着に敗れている。
しかし、その後、水沢の「南部駒賞」(11月15日、4着)を経て年明けより南関東にて出走し始めてから一変。1月21日「桃花賞」(大井、オープン特別)と3月24日「桜花賞」(浦和)を連勝し、トップクラスの仲間入りを果たした。
必ずしも道営では2歳チャンピオンにはならずとも、こうして転厩後に大化けする馬もいる。道営デビューの2歳馬がいかにレベルの高いレースを行っているかを改めて印象づけた形だ。
なお、この日の門別は入場者664人。売り上げは1億5854万円。
11レース組めたことと出走頭数が117頭確保できたこと、重賞レースが行われたことなどによりある程度の数字を残せた。
しかし、前週の3日間は、9レースが2日、10レースが1日で、出走頭数も75頭、91頭、95頭とやや少なく、売り上げも1億から1億2千万円台。さまざまな事情はあろうが、多頭数で白熱したレースをフルに組んでこそ、競馬は盛り上がるし馬券もそれなりに売れる。
道営開催は残り2か月を切り、これから日増しに気温も低下して行く季節。寒さを吹き飛ばすような白熱したレースが展開されることを望みたい。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。