育成調教技術者養成研修生、ただいま募集中

2010年09月29日(水) 00:00 0

 BTC育成技術者養成研修は現在28期生が研修中だが、来春入講予定の第29期生の募集もすでに始まっている。募集期間は去る8月2日より、来る10月15日までである。

 今年は8月中に「体験入学」が3回実施された。来春入講を目指す若者を対象にした、いわば「オープンキャンパス」のようなもので、それぞれ8月5日、19日、26日のいずれも木曜日に行われた。

 昨年は2回の実施だったという。しかし、7月下旬の「ボクジョブ」(東京競馬場での牧場就職フェア)にて多くの来場者がBTCのブースを訪問し、この研修制度に関心を示したことから、急遽「追加」することになったらしい。

 その三回行われた体験入学を間近で見てきた。酷暑に見舞われた今年の夏は、ここ日高も例外ではなく、例年よりもかなり高い気温だったが、いずれの日も好天に恵まれ、予定通りのメニューを消化できたようだ。

 体験入学は原則として1日で終了するが、前後に宿泊が挟まるので2泊3日の日程になってしまう。本州からの参加者が多く、年齢や性別もさまざまだ。中学生から20代後半まで合計約40人が、実際に研修所を訪れて施設や訓練風景を見学した。

 朝の説明会から始まった体験入学は、その後、現在在籍している28期生たちの訓練風景を見学したり、BTC施設全体を見て回ったりと、かなりタイトである。たまたま偶然、ここで初めて顔を合わせた者同士でしかないために、三回とも最初はみんなの表情が硬く言葉も少なめ。説明役の教官の言葉にも、今ひとつ反応が鈍いのであった。

(写真・施設を案内される風景)

 ただ、少しずつ表情が柔らかくなってきたのは、午後になり、乗馬シミュレーター体験や、引き馬による乗馬体験になってからだ。

 40人の中には一部乗馬経験者もいるものの、大半は未経験者。手綱の持ち方や姿勢などのレクチャーを受けて、一人ずつシミュレーターに跨る。「おおっ」という声が出てきてそれまでの無表情から一変し「すげぇ…」などというような言葉が徐々に発せられるようになった。

(写真・乗馬シミュレーター体験風景)

(写真・乗馬シミュレーター体験風景)

 夕方からは現28期生や教官などを囲んでのバーベキュータイム。ここで実際に訓練を受けている“先輩”から、詳細に話を聞く。「毎日がとても充実している」「ここに入所して本当に良かった」「皆さんもぜひ来年ここで騎乗技術を磨いて下さい」などという生の声に接し、決意を固めた体験入学者が多いようであった。

 馬業界に進みたいと考えている中学生。競馬好きの高校生。進路を決めかねている大学生。一度就職したものの、やはり馬への思いを断ちがたく体験入学に参加した社会人。それぞれ事情は異なるものの、まずここで1年間の訓練を経て業界へ就職したいという若者が集まったのである。

 ここ数年の傾向として、一度他の業界に就職しながら、転職を考えている20代が決して少なくないことが挙げられる。従来25歳という年齢上限を設定していたが、本人の意思が固く適性が高ければ必ずしもそれに拘るべきではないとの観点から、現在も20代後半の訓練生が数人在籍する。体験入学者の中にもそんな「社会人」が何人も参加していた。

 9月24日現在、BTCに入講受験のための資料請求をしてきたのは約180名いるという。もちろん全員が受験するわけではないものの、前年同期の資料請求件数と比較するとおおよそ1.5倍に達するとのこと。

 最終的にどれくらいの倍率になるものか、実際に締め切って見なければ分からないが、おそらく昨年よりは志願者が多くなるであろうと考えられる。

 必ずしも競馬人気が高いわけではない今の時代であるにもかかわらず、依然としてこの業界に魅力を感じている若者がまだまだ大勢いることを実感させられるが、さて、肝心の競馬自体は、何とも厳しい。秋のGI戦線が始まろうとしているさなか、横山典弘騎手の落馬による長期休養が明らかとなったばかり。社会情勢を考えたらそうそう簡単に競馬人気がV字回復するとも思えず、しばらくは苦戦しそうな気配だ。

 しかし、一方で、未来の生産界のためにも人材育成は急務であり、とりわけトレセン入厩までの重要な時期を担う育成牧場の騎乗技術者養成は大きな根幹である。

 また機会を作ってBTC育成調教技術者養成研修について触れるつもりでいる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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