2010年10月13日(水) 00:00 0
去る10月1日発行の業界紙「馬事通信」(道新スポーツ馬事通信部)は1面トップで「中央・地方競馬に画期的相互場外時代到来」と大見出しをつけ、2年後の2012年実施へ向けて、中央競馬会と地方競馬の各主催者が相互馬券発売に関して大筋で合意に達していることを大々的に報じた。
同紙によれば「中央は電話投票とインターネットを利用した投票システムで地方競馬の馬券を販売」し「地方側は競馬場と場外発売所で中央競馬全日の馬券を発売する」ことが実現しそうだという。
そもそも同じ競馬でありながら、日本では中央と地方という二本立ての主催者に分かれ、長い間、それぞれ独自の開催を続けてきた。しかし、馬券売り上げの低迷は1997年以降中央競馬にも波及し、一向に下げ止まる気配がなく、年々深刻の度合いを深めている。
にもかかわらず、1995年を境に人馬の交流こそかなり進んだものの、馬券発売に関しては、不思議なほど共通化が進んでいなかった。一般人の視点から競馬を見ると、なぜ中央も地方も区別なく馬券が買えないのかが謎だったのではあるまいか。
競輪や競艇、オートレースなどの他種競技はむろん中央、地方などというような区別もなければ主催者間の垣根もないために、全国規模での場外発売を展開している。競馬だけが一部を除き、依然としてそれぞれの垣根を取り払えないまま今日に至っていた。
それがついに、過去の様々ないきさつや面子を捨てて、発売体制の再構築へと動き出したわけである。
地方競馬全国協会に問い合わせたところ、次のようなコメントを得た。
「実は私たちもまだこの件に関しては、それほど確かな情報を持っているわけではありません。しかし、この発売体制共有化というか、相互場外化に向けては、売り上げ回復のための有効な方策として、協議が着々と進んでいることだけは間違いありません」(広報情報部長・留守悟氏)
留守氏によれば「かれこれ10年間くらいはこの相互発売に関してはJRA側と協議を重ねてきた」らしいが、その背景には、前述した通りいよいよ待ったなしの水準まで下がった馬券売り上げの減少が最大の要因としてある。
ようやく中央地方ともに重い腰を上げざるを得なくなった状況だが、しかし、いきなり最初から「中央が電話投票とPATによる発売体制をすべて地方競馬にも開放する」わけではなさそうで、留守氏によれば「当面は土日の中央開催日に限り、地方の馬券も併売するという限定的な体制からスタートではないか」とのこと。
理想的には、電話投票やPATに関しては平日の(中央非開催日の)地方発売こそ効果絶大だと思うが、将来的にはそれを目指すとしても現段階ではまだハードルが高い、のだそうである。
一方の地方競馬は、現在展開している競馬場と場外発売施設を中央発売に開放する。「お互いに、メリットのある形でなければなりません。どちらかが得をしてどちらかが損をするような協力体制では画期的とは言い難く、ともにウインウインの関係にならなければ」とは前記、留守氏の弁だが、さてどのような具体案が発表されるものか。
ともかくギリギリの瀬戸際まで追い込まれている地方競馬主催者は数多くあり、有効な売り上げ回復策を独自には打ち出せていないのが実情だ。ここで限定的ではあっても中央競馬の電話投票とPATによる発売網が参入するのは心強い。
同時に中央競馬にとっても減少し続ける売り上げを少しでも回復させられるならば、双方にとって大きなメリットがある。
公式発表(来週あたりに予定されているとも聞く)を待ちたいと思う。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。