フィリー&メアターフの有力馬

2010年10月19日(火) 12:21

 先週からお届けしているブリーダーズC展望。今週は、レッドディザイア出走予定のフィリー&メアターフ(11月5日、チャーチルダウンズ)の有力馬を御紹介しよう。

 2倍を切るオッズを掲げているところも含めて、各社ブックメーカーが横並びで圧倒的1番人気に支持しているのが、このレース前年に続く連覇を目指すミッデイ(牝4、父オアシスドリーム)だ。4歳を迎えた今季、初戦のG2ミドルトンSこそサリスカの後塵を拝して2着に敗れたが、その後は、良馬場でも道悪でもゴール前では確実に伸び、他馬を力で封じるレースぶりでG1・3連勝。まちがいなく昨年よりもワンランク上の競馬をしており、連覇は有望だ。

 重箱の隅をつついて弱点を探せば、速い時計の決着に対する適応力が高くない点で、チャーチルダウンズだけにそういう可能性は低いが、パンパンの良馬場になってスピード比べになった際には、つけいる隙が生じそうだ。

 5〜6頭が団子状態の2番手クループから、わずかに抜け出して2番人気(オッズ6倍から11倍)の評価を受けているのがレッドディザイア(牝4、父マンハッタンカフェ)というのも、ミッデイにとって好ましからざるレース条件になった時、これに乗じる可能性が最も高いのがこの馬という見方に因るものと思う。

 前走のG1フラワーボウルは惜しい競馬(3着)だったが、渡米後のニューヨークが荒天続きで、馬場の悪化によってまともな追い切りが出来ず、かつ、当日の馬場も極悪で、それでいてあのメンバーを相手にあの競馬が出来れば上首尾である。

 3月のドバイ遠征時、現地初戦に比べて2戦目のパフォーマンスが極端に落ちたのが気懸かりだが、当日の馬場や展開がこの馬の切れ味を活かせるものになれば、大本命馬を脅かす存在となりうるはずである。

 これに続くのが、フランスから遠征を予定しているプルマニア(牝4、父アナバー)だ。3歳時はG1ヴェルメイユ賞2着、G1仏オークス3着などの実績を残しながら、重賞未勝利に終わった同馬。今年4月のG2コリーダ賞で重賞初制覇を果たすと、続くG1サンクルー大賞では牡馬を打ち破ってG1初制覇。秋初戦のG1ヴェルメイユ賞でも、ミッデイに最後まで食い下がる渋太さを見せた。前走の凱旋門賞では、終始馬群の外を回らされる展開で早々に力尽き、16着に大敗。シーズン末の疲労が心配されたが、名伯楽アンドレ・ファーブルが使ってくるからには、調子に問題は無いと見たい。

 強烈な末脚を炸裂させて10月9日にキーンランドで行なわれたG1ファーストレディーSを制し、G1・4連勝を飾ったプロヴァイゾー(牝5、父ダンシリ)は、フィリー&メアターフとマイルの両にらみの状態。前者にはミッデイ、後者にはゴールディコーヴァという難攻不落の大本命がいて、どちらに出ても楽な戦いにはならないが、少しでもチャンスの多い方へと、陣営は敵情視察に神経をとがらせている。北米移籍後は9F以下のレースに専念している同馬だが、フランス在籍時にはG1サンタラリ賞(2000m)3着、G1仏オークス(2100m)4着といった実績があり、馬場の軽いアメリカなら11Fをこなしてもおかしくはない。

 8月にアーリントンのG1ビヴァリーディーSを制したエクレアドルーン(牝4、父マルシャンドサブレ)も、フランスからアメリカへの移籍組だ。フランスでの実績はG3入着までだったが、ドイツ産馬らしい成長力とアメリカ競馬への高い適性を発揮し、G1ホースの座に上り詰めた。BCは2か月半ぶりの出走となるが、これは大ベテランのマッカナリー師が当初から予定していた路線で、仕上がりに問題はないはずだ。

 10月16日にキーンランドで行なわれた3歳牝馬限定のG1クイーンエリザベス2世チャレンジCを4.1/4馬身差で快勝し、戦線に急浮上してきたのがハーモニアス(牝3、父ダイナフォーマー)だ。オールウェザーのメイドンでデビューし5着に敗れたのち、芝に転向してG1アメリカンオークスまで3連勝。G1デルマーオークスでは僅かに追い込みが届かず2着に敗れたが、クイーンエリザベス2世CCでのレース振りは、3歳牝馬の芝路線では抜けた存在であることを示すものだった。相手は一気に強化するが、未知の魅力がある馬である。

 10月3日にハリウッドパークで行なわれたG1イエローリボンSを制したゴドルフィンのヒバーイェブ(牝3、父シングスピール)も、良馬場ならという条件付きながら、争覇圏に入って来る馬だ。

 ミッデイ中心は動かしがたいが、2番手争いとなると出走馬にノーチャンスの馬はいないというメンバー構成になりそうで、馬券的には難解な一戦となりそうである。

合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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